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翌日俺は一人、朝から荷物をまとめていた。
自分で思っていたよりずっと俺の持ち物は少なくて、まるでこうなることが分かっていたみたいだと俺は苦い笑みを浮かべた。
キッチン用品は色々買い揃えたが、全て置いていくことにした。
きっと真昼ちゃんが上手く使ってくれるはずだ。
俺は最後の段ボールに荷物を詰めると、あの日買った指輪を一番上にのせた。
自分の薬指にはまったままだった指輪をじっと見つめると、怜雄がそれをくれた時のように、冷えたリングにそっと口づけを落とした。そして躊躇わずに指から抜き去った、
怜雄に渡すつもりだった指輪の箱のリボンに、自分の指輪も括り付ける。
永遠にペアになることのない俺のリング。
俺は思いを断ち切るようにガムテープできつく、段ボールの封をした。
実家に戻ると親や姉が予想以上に喜んでくれた。
「やっぱりあんたいないとなんか家の中暗くてさあ。」
姉の言葉に母が笑いながら突っ込む。
「暗いってどういう意味よ。でも怜雄君は良かったの?」
「うん。実は怜雄、彼女できて同棲するかもしれないみたいなんだ。そうすると俺が居ると邪魔だろ?」
俺は半分真実、半分嘘の内容を告げた。
「そうなの。若いっていいわね。優も負けないように頑張りなさい。」
母が俺の湯飲みにお茶を注ぎながら言う。
「そうよ。あんたずっと彼女いなかったでしょ。できたら教えてよね。私がチェックしてあげるから。」
姉の言葉に母が言った。
「結衣に会せたらどんないい子だって逃げちゃうわよ。優、ここには連れてこないほうがいいわ。」
「ちょっと母さん。それどういう意味?」
母と姉がやかましく言いあうのを見て、俺はくすくす笑った。
これを見ると実家に戻って来た実感がわく。
正直今一人でいると、怜雄のことを考えてしまいそうだったから、この漫才みたいな言い合いにかなり助けられた。
「優。お帰り。色々他人と暮らして疲れることもあったろ。久しぶりの実家でゆっくりするといい。」
穏やかに笑って父さんが言った。
「ありがとう。父さん。」
俺はうっすら微笑むと、目の前の大きな煎餅に手を伸ばしぼりんと齧った。
でもね、父さん。俺、怜雄のこと他人だって思ったこと一度もなかった。
こんなこともう誰にも言えないけど、家族よりもずっと怜雄に愛情を感じていたんだ。
俺は涙を堪えるように、煎餅を齧り続けた。
夜になり、久しぶりに自分の部屋のベットに寝転がる。
見慣れた天井のはずなのにどこかよそよそしさを感じた。
神戸の問題で別れた時には、怒りや哀しみで眠気が全く訪れなかったが、実家に戻った安心感からか、俺は大きなあくびを一つすると深い眠りがやって来そうな気配があった。
ああ、気持ちいいな。このまま眠ってずっと目覚めたくない…。
そう思った俺の意識もいつの間にか真っ黒に塗りつぶされた。
自分で思っていたよりずっと俺の持ち物は少なくて、まるでこうなることが分かっていたみたいだと俺は苦い笑みを浮かべた。
キッチン用品は色々買い揃えたが、全て置いていくことにした。
きっと真昼ちゃんが上手く使ってくれるはずだ。
俺は最後の段ボールに荷物を詰めると、あの日買った指輪を一番上にのせた。
自分の薬指にはまったままだった指輪をじっと見つめると、怜雄がそれをくれた時のように、冷えたリングにそっと口づけを落とした。そして躊躇わずに指から抜き去った、
怜雄に渡すつもりだった指輪の箱のリボンに、自分の指輪も括り付ける。
永遠にペアになることのない俺のリング。
俺は思いを断ち切るようにガムテープできつく、段ボールの封をした。
実家に戻ると親や姉が予想以上に喜んでくれた。
「やっぱりあんたいないとなんか家の中暗くてさあ。」
姉の言葉に母が笑いながら突っ込む。
「暗いってどういう意味よ。でも怜雄君は良かったの?」
「うん。実は怜雄、彼女できて同棲するかもしれないみたいなんだ。そうすると俺が居ると邪魔だろ?」
俺は半分真実、半分嘘の内容を告げた。
「そうなの。若いっていいわね。優も負けないように頑張りなさい。」
母が俺の湯飲みにお茶を注ぎながら言う。
「そうよ。あんたずっと彼女いなかったでしょ。できたら教えてよね。私がチェックしてあげるから。」
姉の言葉に母が言った。
「結衣に会せたらどんないい子だって逃げちゃうわよ。優、ここには連れてこないほうがいいわ。」
「ちょっと母さん。それどういう意味?」
母と姉がやかましく言いあうのを見て、俺はくすくす笑った。
これを見ると実家に戻って来た実感がわく。
正直今一人でいると、怜雄のことを考えてしまいそうだったから、この漫才みたいな言い合いにかなり助けられた。
「優。お帰り。色々他人と暮らして疲れることもあったろ。久しぶりの実家でゆっくりするといい。」
穏やかに笑って父さんが言った。
「ありがとう。父さん。」
俺はうっすら微笑むと、目の前の大きな煎餅に手を伸ばしぼりんと齧った。
でもね、父さん。俺、怜雄のこと他人だって思ったこと一度もなかった。
こんなこともう誰にも言えないけど、家族よりもずっと怜雄に愛情を感じていたんだ。
俺は涙を堪えるように、煎餅を齧り続けた。
夜になり、久しぶりに自分の部屋のベットに寝転がる。
見慣れた天井のはずなのにどこかよそよそしさを感じた。
神戸の問題で別れた時には、怒りや哀しみで眠気が全く訪れなかったが、実家に戻った安心感からか、俺は大きなあくびを一つすると深い眠りがやって来そうな気配があった。
ああ、気持ちいいな。このまま眠ってずっと目覚めたくない…。
そう思った俺の意識もいつの間にか真っ黒に塗りつぶされた。
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