vamps

8

　シュリの誕生日会には行かない方がいいのかもしれない。
　リュックの中に入った招待状がやけに重たく感じた。

　帰宅すると、リビングでティアが号泣していた。
　ティアの目の前には険しい表情の両親が座っている。

「一体どうしたの？　」
　俺は今日の授業が一限だけだから、早めに帰宅したが、まだティアは授業を受けている時間帯のはずだし、父は勤務中のはずだ。

「ジャックが、タイを解消したいって」
　泣きじゃくりながらティアが答える。
「えっ、嘘だろ」
　今朝、肩を寄せ合いながら歩く2人を思いだし俺は驚愕した。
　ティアが首を振る。

「ほっ、本当。他に好きな子ができたから、別れてくれって」
　俺はとりあえずティアの隣に座り、その手を握った。
　生意気な妹だが、それでも可愛いたった一人の妹だ。
　目を真っ赤にして泣きはらすティアを見ると、胸が痛み、同時にジャックへの怒りがわいた。

「そんなの勝手じゃないか。タイの解消は簡単にできることじゃない。ティアの場合は手術だって無理だ」
　ティアの薔薇のマークは喉に浮かびあがっていて、手術で除去するのは不可能だった。
　残るタイの解消方法としては薬を飲むことだが、そんなすぐに用意できる金額の薬ではない。
　タイの契約をしているティアにとって、パウチや他の人間の血は吐き気を催すほどまずく感じるだろうし、この先ジャックがティアに血を飲ませることを拒んだら、ティアは相当苦しむだろう。

「まさかジャックの奴、お前に別れろと命令したのか？　」
　本能からタイの相手に命令されたことをヴァンプは拒めない。
　ティアが大きくかぶりを振った。
「ジャックは優しいもの。そんな命令しないよ。付き合っている時も、無茶な命令は1つもしなかった。だから今回もすごく遠回しに別れたいって言われて」