銃器が弱すぎる世界に転生したけど銃知識と現代戦術知識で成り上がる

佐々牙嵯峨兎

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2章 邪月の都ルナ

62.弱き狼の救い

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 とある場所でアマンは結晶を持って話し合っている。その結晶は魔術回路で作られた魔法具通話結晶コールクリスタルで、どこかに離れても情報交換をする事ができる魔法具だ。
 アマンと話している声は若干高く、アマンの後ろにいるのは異形の怪物が立っていた。
 その姿は高身長で黒い鎧を着ているが、手や顔は骨がむき出しになっており、額には銀色に鈍く光る銃弾が埋め込まれていた。
 アマンと話している謎の人物は異形の怪物に聞く。

『君の後ろにいる怪物は何だ? まさか使い物にならなくなったか?』
「ハイ。あなた様が召喚してくれた転生者が殺されたので、何かできるかと思い腐敗騎士デッドナイトにしました」

 アマンは淡々と腐敗騎士デッドナイトについて説明する。腐敗騎士デッドナイトとは中級闇魔法死肉使役デッドコントロールを使って腐敗騎士デッドナイトを作り上げた。
 死肉を使うためもちろん死体を使う必要がある。その死体を集めるために殺人が起きるようになり、その魔法は禁術として扱われるようになった。
 謎の人物は少し笑い声上げてアマンの考えを褒める。

『アハハ! 君の言う通り、使えないゴミを再利用するのはとてもいい事だね。ッと君は幹部たちと共に他国を荒し、邪魔する者たちの排除を命ずる』

 謎の人物は先ほどの軽い声とは別腹に、ドスが掛かった重く低い声に変って命令する。アマンは祖声に身を引かずに受け入れる。

「承知いたしました、他国の崩壊、邪魔する者たちの排除を受け取ります。あとは謎の筒を使って戦う連中についてどういたしますか?」

 謎の人物は先ほど聞いた事を思い出しながら命令する。

『もし神が持ってきた転生者だったら即座に潰したいところが、異世界の知識やチート能力を持っているなら基本的に無視だ。だけどもしそっちから攻撃をしたら絶対に潰しておくように』
「ハッ、承知しました」

 アマンはそう言って通信を切る。そしてあの青年……アレスについて考える。
 最初はただの魔力の無い人間だと思っていた、だがそれをカバーするように謎の筒を使って戦うなんて予想外だ。
 一応銃について知っているが、彼らが持つものは見た事が無くて他の悪魔達も遠距離から放つ筒スナイパーライフルの事を「禁術と同格だ」と怯えていた。

(仮にあいつ等に戦うとしたらかなり厄介だ。もしものために保険を使うか……)

 アマンはもしもの事に備えようとこの場を去り、他国にいる転生者達に忠告を行おうと向かう。




▲▽▲▽▲▽




 俺は医務室でウォーロックさんを見ていると、当の本人が起き上がる。

「う、ウゥ……ココは医務室か?」

 ウォーロックさんは頭をさすりながら周りを見渡す。そして俺を見ると顔がいぶかしげになって聞く。

「どうして俺を助けた? 旦那様達やお嬢様を裏切った男に許すなんてな」

 確かに周りからすれば裏切り者を生かすなんておかしい事だ。だけど俺は真意に答えを言う。

「それは奥様の願いだからですよ」
「奥様の願い……だと?」

 ウォーロックさんは俺が言っている事に分からずに首を傾げる。するとそこに奥様達が医務室に入って来る。
 俺は奥様にお辞儀する。

「奥様、やれることはしました。あとは奥様達に託します」
「イエ、そんなに固くしなくても大丈夫よ」

 奥様はそう言ってウォーロックさんに近づき、俺は医務室の祖手で待機する。
 俺はウォーロックさんに背負い投げを決め、気絶している時に懐から出した緊急薬を使って回復させた。
 周りは俺の行動に驚いたが「奥様の願いでございます」と言うと納得した。
 奥様はどうして裏切ったのか? そのことが気になって俺にウォーロックさんを生かすように命令した。
 屋敷も取り戻し、まだ好き勝手していた連中をお縄にかけた。だがアマンとアイヴァンの遺体が無く、隅から隅まで探しても見つからずに一時的に保留する事になった。
 アマンと言う奴はいずれ危険だ。もし俺と敵対するなら絶対に倒したほうが良いだろう。
 そう思いながら不謹慎かもしれないが、俺は医務室の扉の隙間で状況を確認する。

「ウォーロック、あなたは裏切ったことについてどう思うの?」

 奥様はウォーロックさんに質問するが、当の本人は自身の未来をあざ笑うように言う。

「ふん、その事か。どうせ俺は死ぬ、一族に見せしめとして処刑だろう。だったら覚悟は決まっている、さっさと俺を殺す事だな」
「確かにアンタのやったことは許されない。だけど現当主の妻である母さんはあんたの事を許すぞ?」
「ナッ――!?」

 ウォーロックさんはその言葉を聞いて言葉を失い、奥様の方を見る。
 奥様はウォーロックさんの疑問を申し訳なさそうに答える。

「エエ、昔夫はあなたの家族を殺した上に奴隷にさせた事を赦せず、毎晩『もしもウォーロックが裏切るなら我が輩の自業自得だ』と己を憎むように言いました。だけどあなたが幸せに生き、いずれこの事を放そうと考えた時に彼らがそれを狙った事でしょう」

 奥様はそう言うとウォーロックさんはそのことを信じられずに叫ぶ。

「ふざけるな! 俺は裏切り者であの時の盗賊の息子、そんな奴を家族諸共殺さなかったのに――」

 ウォーロックさんは叫び声を言い終える前に、カイン様がウォーロックさんの頬に力強く殴る。
 ウォーロックさんは呻き声も上げずに食らい、カイン様が叫び声を上げる。

「お前はまだわかってないのか! もうそんなのは背負わなくてもいい、もうそんなに悩み迷わなくてもいい、もう苦しまなくていい事に気付いてないのか!」

 カイン様は荒げた子を上げながら周りを指さす。
 ウォーロックさんはハッと正気に戻る。そこにはフォルトさん達に奥様やカイン様、そしてお嬢様がいる。
 お嬢様は涙を流しながらウォーロックさんに抱き着いて呟く。

「もうやめて……もう私が知る人たちが苦しまないで……」

 お嬢様はそう呟くとウォーロックさんは顔に手を当てて嘆く。

「ハハ……俺はバカだ。どうして大切なものがあるのに自ら捨てたんだ……」

 ウォーロックさんは手の隙間から一筋の涙を流して静かに泣く。奥様やカイン様達も安心して胸を撫で下ろす。
 俺は扉をそっと閉じ、アリス達にこの事を話すととても喜んだのは言うまでもなかった。
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