銃器が弱すぎる世界に転生したけど銃知識と現代戦術知識で成り上がる

佐々牙嵯峨兎

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2章 邪月の都ルナ

63.幼い純吸血鬼の告白

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 俺は祝勝会の料理を運んだりしている。ウォーロックさんは自分のやったことを反省し、この事件を償おうと旦那様を捜索するために旅を出た。
 俺達が祝勝会を準備している時に出たらしく、自分を見送らなくて大丈夫ってことだろう。
 祝勝会で奥様はお嬢様を次期当主にすることを宣言し、ルナにいる貴族たちは快く受け取るが中には批判するような声が出た。一応水晶で手打ちの様子を録画しておいて、その映像を見せたら批判した人たちは渋々受け入れた。
 これでお嬢様が次期党首に批判する人がいなくなり、しばらくの間に戦争が起きる事はないだろう。
 祝勝会も徐々に落ち着いて少し休憩する。にしてもこれほど客人が多いなんて純吸血鬼レヴナントの実力もあるが、旦那様と奥様の人徳だな。
 そう思っているとフォルトさんがやって来る。

「ウォーロックは本来処刑を受けなければいけません。だが奥様がそれを赦し、償おうとした事には当然ですからね」

 フォルトさんは少し辛辣に言っているが、心の奥底で安心している事を知って少しだけ頬をゆるむ。
 それから多少お説教したらしい、この人の説教は一時間くらいだからなー。
 心の中でウォーロックさんを慰めていると、フォルトさんから「奥様が呼んでいるため向かった方が良いですよ」と言われてすぐに奥様の所に向かう。
 少し走って向かうが、屋敷の中ってやっぱり広いんだな。戦争が起きる前は忙しくて周りを見ていないからな。
 そう思いながらも奥様の所に着き、扉を軽く叩く。

「入って良いわ」

 俺は扉を開けてお辞儀をする。

「奥様、祝勝会のスピーチお疲れ様でした」
「フフ、それほどでもないわ。さてあなたの報酬について言うわ」

 俺の報酬? 確か奥様を救出した事とお嬢様に力を着けさせたことだけどどんな報酬だろうか?
 そう思うと奥様は驚きの事を言う。

「アレス、あなたを今日から奴隷から解放させます」
「ナッ――!」

 突然の解放宣言に声を失ってしまうが、ハッと我にかえって答えを聞く。

「お、奥様それは嬉しい限りですがどうしてこのような事を?」
「フフ、実はアリスさんから聞いたの『どうかアレスを自由の身にして欲しい』ってね。あとヴィンセント君も頼んでいたわ」

 俺はその言葉を聞いて心が温かくなる。アリスとヴィンセントがそんなことをしてくれたなんて……ちょっと恥ずかしいな。

「とにかく、あなたは今日から自由の身となり、自分のギルドを設立して人助けをするのよ」
「ハイ!」

 俺は快く答える。にしてもギルド設立の夢を聞かれたなんて少し恥ずかしいな。
 そう思いつつ部屋を出る。
 この後の予定は明日早く神龍帝国シンに向かう、そのためこの屋敷いるみんなとはお別れだ。
 後はフォルトさん達と別れの言葉を言い、残りはお嬢様だけだ。
 俺はお嬢様の部屋に向かう。その時に少しだけ周りを見渡して思う。
 もし俺が旦那様に買われて無かったら死んでいただろう。もちろん男娼に売り飛ばされる、または労働奴隷としてこき使われてしまうのもあるのだろう。
 もう一度アリスやヴィンセントに合えることを含めて旦那様達に感謝だ。
 そう思っているともうお嬢様の部屋に着いた。俺は軽く扉を叩いて開ける。
 部屋の中は初めて見た風景とは変わっておらず、少し懐かしさと寂しさを感じつつお嬢様の隣に座る。
 お嬢様は少し気まずそうだが話しかける。

「あ、アレスさんは明日早くルナから出るんですよね?」
「ハイ、お嬢様と話すのはこれで最後かもしれませんね」

 俺は少し苦笑しながら答える。俺だって本当はココにいたい、お嬢様と仲良くなりたい。だけど旦那様の捜索や本家の後始末などやる事はいっぱいだ。
 だから俺はお嬢様と話し合った。幼いころの話やまだ冒険者だった頃の新体験を話す。
 お嬢様は目を輝かせながら聞いた。少しでも寂しさを間際らすためにも話した。
 そして三十分くらい話して、そろそろ自室に戻ろうとした時にお嬢様が呼び止める。
 どうしたんだろうか? そう思いながらお嬢様に近づくと俺は押し倒されてキスされた。
 甘いキスではない、互いの歯がぶつかり合う幼いキスだ。俺はこの状況を理解できずに固まっているとお嬢様はキスを止めて言う。

「好きです……」
「……へ?」

 俺はその言葉に理解できずにこんがらがってしまう。だがお嬢様は小さい身体を振るえ、目尻に涙を流しながら言う。

「好きです……私にとってアレスさんは私の大切な人です。どこだってついて行きます、銃の腕を上げます。……だから別れないで……」
「ッ――!?」

 俺はその言葉を聞いて心臓の鼓動が早くなるのを感じる。彼女はまだ幼いのに俺の事を好きなり、離れたくとわがままを言う。
 それだけで胸が熱くなってゆく。
 もし彼女が再び日の光も入らない部屋にこもるなら胸が苦しくなる。もし別の男がお嬢様の肢体を這うなら心臓がズタボロになる。
 俺はお嬢様が……レノン・ヴァレンタの事が好きなんだ。
 だけど、だけど、だけど、だけど、だけど! 俺は……アリスの気持ちを裏切りたくもない!
 もし出会う順序が逆だったらお嬢様の事が最初に好きになるだろう。

「その言葉はとてもうれしいです。でも……俺はアリスの気持ちを裏切りたくはないんです」

 俺はそう言うとお嬢様は涙を拭きとって安心するように言う。

「……やっぱりアリスさんにはかないませんね」
「もし順序が逆だったらお嬢様が最初に好きになると思います」
「そうですね」

 お嬢様は俺の答えに少し安心している。
 本当はとても心苦しいがこの世界の法律はあまり知らない。そのため重婚がアウトだったら笑い事じゃない。

「でしたら第二夫妻として頑張ります!」
「そうですね、第二夫妻なら――ファ!?」

 俺はお嬢様の言葉を聞いて思わず吹き出してしまう。第二夫妻って確か重婚じゃなかったけ? ていうかそれ大丈夫なのか!?
 元居た世界は不倫とか浮気はだめだったけど、もしこの世界にもあったら笑い事じゃすまされない!
 どうにかしようと考える時に後ろから誰かが抱き着いてきた。

「アレスがそう言うのを信じていたよ」
「その声はアリス!?」

 信じていたってまさかこのこと知っているのか!? そう驚いているとヴィンセントとカイン様は入って来る。

「アレス、お前かなりカッコ良かったぜ!」
「妹を幸せにしてくれよ? 義弟アレス?」

 ヴィンセントが茶化し、カイン様が祝福する。ってちょっと待てー!
 少し制止をかけて言う。

「待ってください! お嬢様は次期当主なのにいきなり結婚なんて奥様が黙っておりませんし、この世界の法律が重婚禁止だったら笑い事じゃすまされないんですよ!」
「お母さまに事前に話したら許可が下りました」
「それに少し調べたら本妻が認めたら罪に問われないぞ?」

 アア、もう手は回しているのね……。
 いろいろな意味で頭が痛く闇ってきたが何故だろう。なんというかこういうのも悪くないな。
 そう思いながら苦笑いで頷いた。
 こうして第二夫妻兼凄腕スナイパーを仲間にしたのだった。
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