小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

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48 お土産選び

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「あ、そうそう。噂で聞いたんだけど、明日のお昼はお好み焼きらしいよ」
「本当!?」
「お、食いついた」

 広島といえば、広島風お好み焼きだ。心菜はウキウキとした心地で、明日のお昼へと思いを馳せるが、すぐに現実に引き戻される。

「………………今日のお夕飯と明日の朝食も、こんな感じなのかな………」
「はははっ、沈み込むのが早いよ。あ、そうだ。宮島では鹿が見れるらしいよ。せんべいでも持っていったら?」
「中学生に自由時間なんてないよー。それに、私、十中八九迷う」

 心菜は真顔で自信満々に『ででん!!』と宣言する。自分でいていて悲しいが、そのくらいの危害じゃないと、
周りに迷惑をかけてしまうからだ。ある意味で、この考え方は心菜流の迷子防止なのかもしれない。

「あ、そうだった」
「そうそう、だから、今日はずーっとみんなにくっついてる。そうしたら、たぶん、迷わないでしょう?」
「そうだね」
「そうそう」

 心菜はそう言うと、隣に立っている優奈に視線を合わせるように立ち上がった。

「じゃあ、お土産屋さんに行きますか」
「ん、賛成」

 自由時間にお土産を買っていいことに心菜と優奈は、先にお土産を買いに行った男子グループに合流すべく、お土産コーナーへと足を踏み入れんと歩き始めた。

「ここな、逆」
「うぐっ、」

 やっぱり心菜の方向感覚におけるセンスは、どこに行っても、どんな時間であろうとも、壊滅的なままのようだ。心菜はとほほと意気消沈しながらも、素敵なお土産を買うべく、優奈に手を引かれてお土産コーナーへと足を踏み入れた。

「はわわあああぁぁぁ!!」
「お、テンション爆上がりだねー」

 心菜はててっとお土産コーナーを見て周り、どんどん欲しいものを手に握っていく。

「これも、あれも、それも、………あぁ!!これも素敵!!」

 もちろん、手に握っているのは、ほとんど全てがチョコレート絡みのものだ。チョコレートのもみじ饅頭が数種類に、他にもラスクやクッキー、いつのまにかケーキらしきものまで握られている。

「いや、ケーキは持って帰れないから。というか、おやつはこの店で買うのならどれか1個にしなさい。持って帰れなくなるよ?」
「うぅー、そな殺生な………」
「文句言わない。ほら、どれが1番欲しいの?」
「うぅー、こ、これ?」

 心菜はその後、渋々選んだ1つ以外のおやつを棚に戻し、結局、おやつ1つに宮島限定のクリスタルの置き物1つを購入することとなった。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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