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47 地獄の昼食

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 可愛らしい仕草をしている心菜を見つめ、優奈は困ったものを見る目をする。相変わらず、心菜は自分の分かりやすさに気がついていないらしい。愛らしい幼馴染を眺めて、優奈はそっと心菜の手を引いた。

「ほら、行くよ、ここな。あんまり遅れたら、立花が紐つけるぞって言ってたから大変なことになるよ」
「………気持ち悪くて動きたくないけど、絶対にそれはイヤ」
「そっか、じゃあ、行こうね」

 優奈に手を引かれた心菜は、大人しく優奈の後に続いてバスの外に出た。長時間座っていたことによって凝り固まった身体をぐうっと伸ばし、ほうっと溜め息を吐く。海の香りのする風がとても心地いい。心菜は下ろしていた髪をハーフアップにまとめ上げて、みんなが向かっている食堂の方へと向かう。道の駅で昼食というふうにしおりに書いてあったから、おそらくここで昼食を取るのだろう。好き嫌いに多く少食な心菜は、どうか食べられるものでありますようにと願いながら、昼食をもらう列に並ぶのだった。

▫︎◇▫︎

「おそよう、久遠。それ、食えんのか?」
「………………」

 心菜は半分絶望していた。

(お、多すぎる………)

 何故なら、そう、昼食の量があまりにも多かったからだ。班が同じ立花、有栖川、新谷、門川が心配そうにこちらを見つめてくる。心菜は半泣きになりながら、苦手なものしか入っていないサラダを前の方に押し出した。

「………サラダとカレー半分もらってくれる人ー………………」
「はあー、いいよ。カレー半分もらってあげる」
「ゆーなちゃん………!!」
「じゃあ、俺はサラダもらうわ」
「立花………!!」

 心菜はどうにかこうにか必死になって普段の食事よりも多いカレー半分を胃の中に突っ込み、ぐったりとした。

(き、気持ち悪い………)

 これなら食券をもらって好きなものを注文したかったと思いながら、心菜は行儀が悪いと思っていながらも、先程まで食事をしていた机に思いっきり突っ伏した。

 ーーーゴンっ、

 勢い余って頭を思いっきりぶつけたが、今は頭よりもお腹と喉が痛い。ついでに言うと、舌もピリピリする。

「お疲れ、ここな」
「うぅー、からかった………」
「はははっ、はい、お水」
「うぅー、ありがとう」

 ごくごくとお水を大量に飲み込んで、甘党の心菜は涙目で辛すぎたカレーの味を口から逃した。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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