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57 ジェットコースター

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 その後、無事に平日の遊園地のジェットコースターへと1番のりで到着した心菜たちは、特に待つこともなく、すぐにジェットコースターへと乗ることができた。

「ラッキーだぜ」
「………新谷がそういうこというと言うと、違和感しかないね」
「ひどっ、久遠までそんなこと言うの!?」
「ふふふっ、」

 いつもは比較的口調が丁寧な新谷をちょっとだけ揶揄った心菜は、立花と隣あって先頭に乗り込んで安全バーを下げる。

「ふふふっ、楽しみ!!」
「ありゃりゃ、ここな完全にやばいスイッチ入っちゃったねー」

 小学校の修学旅行のジェットコースター被害者たる優奈は、苦笑しながらこれからくるであろう地獄のジェットコースター巡りに遠い目をした。
 普段おとなしい心菜の可愛い我儘だと思えば、耐えられなくもないが、良い加減酔っても酔ってもジェットコースターに乗せられ続けるという事態にはならないということを願うばかりだ。

(ここのってそこそこ速いんだよね?どのくらいかなー)

 そうこう考えていると、ジェットコースターがゆっくりと進み始めた。ガタガタと揺れる揺れが、これから心菜を楽しい世界に連れて行ってくれるんだと思うと、胸が躍って仕方がない。心菜は安全バーを握りしめて、にこっと笑った。

「ふーにゃあああぁぁぁぁ!!」
「うわああああぁぁぁぁ!!」
「びゃあああぁぁぁぁ!!」
「うええぇぇぇぇい!!」
「ぐげええええぇぇぇぇ!!」
「ーーーー………………」

 身体が浮く浮遊感に、それぞれが悲鳴をあげるが、その悲鳴さえもが面白くて仕方がない。心菜はジェットコースターが乗り降り口に戻って来たときには、口元を右手で覆って爆笑していた。

「あぁー!楽しい!!」

 心菜はきらっきらに目を輝かせて、ジェットコースターから降りた。

「………久遠、もしかしなくとも、もう1回乗るとか言わないよな?」

 怖々とした有栖川に、心菜はなんの躊躇いもなくこくんと頷く。幸いにも、並んでいるお客さまも生徒もいない。皆、他のアトラクションを各々で楽しんでいるようだ。だが、それが地獄の始まりだ。

「ん?さすが有栖川。私の提案がわかるなんてすごいわね。でも、私からすると、その能力をお勉強にも活かして欲しかったわね」
「うぐっ、………久遠が単純だから分かりやすいだけだ」
「まあ、そうね」

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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