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75 運動会という行事

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 運動会、それは熱血な運動好きの生徒のみが至福を満たすことのできる地獄の行事。暑くて苦しくて、面倒くさい行事&やってみたら楽しかった行事ナンバー1に入る、本当に面倒くさい行事だ。
 心菜は当然、運動会が面倒くさい派のグループに属している。何が楽しくて、炎天下の中で走って飛んで踊ってをしなくてはならないのだろうか。しかも、運動会練習期間中は必ず授業がほとんど全て消えてしまう。よって、クーラーの下で涼んだり、大好きな本を読み漁れないのだ。
 心菜は図書館で大量の本を手にしてどれを借りようか吟味しながら、ぱぱっと新書を2冊、ライトノベルを2冊選択した。

(うん、やっぱりこの時期に借りるべきは冷静になれる推理ものやお勉強になる新書に限るよね。ゆーなちゃんは全部漫画を借りてるけど………)

 隣で歴史漫画を4冊選択した優奈に溜め息をついた心菜は、カウンターに行って本を借りさせてもらう。優奈も横で借りると、2人で教室へと戻った。すると、黒板に運動会の競技が書き込まれていた。今年は受験生と忙しいために、ロングホームルームで競技出場者の決定ができないと聞いていたが、もしかしなくとも休み時間に決めてしまうことにしたらしい。しかも、誰にも予告せずに、だ。
 心菜は突拍子もないことをしでかしている運動スポーツ委員に頭を抱えながら、机から焦茶色の丸めの縁をしたメガネを取り出してかけ、黒板の文字を読む。

▫︎グループ対抗リレー(女子)

 久遠 心菜・小笠原 果音

 そして、最初の時点でとんでもないものを見つけて、心菜は声にならない悲鳴をあげる。

「あ、久遠さんお帰り~。今年は逃さないからね?」
「うげにゃっ、」

 去年こっそりと裏から手を回し、ごほん、お友達に頼み込んでリレー選手から外してもらったことを根に持っている佐藤 華さとう はなが、今度は自分が手を回して心菜のことをリレー選手に決定してしまったようだ。心菜は膝から力が抜けていくのを感じながら、ぐっとくちびるを噛み締めてきっと優奈を睨みつける。

「え、えへへ?だって、ここな、足速いじゃん」

 どうやら、心菜のリレー選手入りは複数人の共同犯だったようだ。

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