76 / 160
続編
8 脳筋令嬢のお出まし
しおりを挟む
「うぎゃにゃっ!」
令嬢らしからぬ図太い悲鳴を上げたティアラローズさまに、にっこりと『怖い』と言われる笑みを浮かべて見せると、途端に彼女は顔を真っ青にしてぷるぷると震え始めた。王侯貴族たるもの、常に表情と感情を制御しろというのは、幼少の頃から親に叩き込まれることだと思うのですが、ティアラローズさまはそれがきっちりと備わっていないようだ。わたくし、ちゃーんとお世話と同時に教育をしなくてはならないようね。
「あらあら、ティアラローズさま、いかがなさったの?」
「い、いえ、な、何も?」
「そう?顔色が真っ青よ。でも、先生がもうすぐで来てしまうから、保健室には行けないわね。ほらほら、席につきましょう」
「は、はぃ………」
ふらふらとした足取りのティアラローズさまは、王太子殿下に支えられて席についた。自由席だということだが、ティアラローズさまと王太子殿下は基本同じ行動をとるようにするようだ。ティアラローズさまのお守り係たるわたくしも、王太子殿下が一時でも面倒をみてくださるのなら助かるから文句は言わないが、なんというか、王太子殿下の不服具合には物申したい。
どんっ、
背中に強う衝撃が走ってわたくしは一瞬よろけてしまう。不機嫌な思いで後ろを睨みつけると、そこにはわたくしの天敵たる公爵家のご令嬢、脳筋令嬢、レジーナ・リリーバードがいた。
「あらまあ、ご機嫌よう。レジーナさま。相も変わらず不機嫌な青いお目々がお可愛らしいことで」
「まあ、ありがとう存じますわ、クラウディアさま。あなたも、今日も王族にお尻を振っている女狐なようで何よりですわ。あたくし、そんなに王族の方に媚びを売るなんて上手なこと、できませんもの。尊敬に値いたしますわ」
「あら、お上手ですわね。いつもは猪突猛進な猪のように直線的ですのに」
「なんですってー!!もうこうなったら決闘よ!!さっさと武器を構えなさい!!」
きいぃー!!と癇癪を起こしたレジーナさまは、わたくしの顔面に手袋を投げつけてきた。まあ、わたくしのお顔に当たる前に魔法で燃やして差し上げたけど。
「なっ、あたくしの手袋になんてことをっ!!クリスティーナちゃん547号っ、あぁ、可哀想に。こんな無惨な灰になってしまうなんてっ!!」
燃えた手袋の前に膝をついて手袋の灰を見つめたレジーナさまは、きっ!とわたくしを睨みつけてきた。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
令嬢らしからぬ図太い悲鳴を上げたティアラローズさまに、にっこりと『怖い』と言われる笑みを浮かべて見せると、途端に彼女は顔を真っ青にしてぷるぷると震え始めた。王侯貴族たるもの、常に表情と感情を制御しろというのは、幼少の頃から親に叩き込まれることだと思うのですが、ティアラローズさまはそれがきっちりと備わっていないようだ。わたくし、ちゃーんとお世話と同時に教育をしなくてはならないようね。
「あらあら、ティアラローズさま、いかがなさったの?」
「い、いえ、な、何も?」
「そう?顔色が真っ青よ。でも、先生がもうすぐで来てしまうから、保健室には行けないわね。ほらほら、席につきましょう」
「は、はぃ………」
ふらふらとした足取りのティアラローズさまは、王太子殿下に支えられて席についた。自由席だということだが、ティアラローズさまと王太子殿下は基本同じ行動をとるようにするようだ。ティアラローズさまのお守り係たるわたくしも、王太子殿下が一時でも面倒をみてくださるのなら助かるから文句は言わないが、なんというか、王太子殿下の不服具合には物申したい。
どんっ、
背中に強う衝撃が走ってわたくしは一瞬よろけてしまう。不機嫌な思いで後ろを睨みつけると、そこにはわたくしの天敵たる公爵家のご令嬢、脳筋令嬢、レジーナ・リリーバードがいた。
「あらまあ、ご機嫌よう。レジーナさま。相も変わらず不機嫌な青いお目々がお可愛らしいことで」
「まあ、ありがとう存じますわ、クラウディアさま。あなたも、今日も王族にお尻を振っている女狐なようで何よりですわ。あたくし、そんなに王族の方に媚びを売るなんて上手なこと、できませんもの。尊敬に値いたしますわ」
「あら、お上手ですわね。いつもは猪突猛進な猪のように直線的ですのに」
「なんですってー!!もうこうなったら決闘よ!!さっさと武器を構えなさい!!」
きいぃー!!と癇癪を起こしたレジーナさまは、わたくしの顔面に手袋を投げつけてきた。まあ、わたくしのお顔に当たる前に魔法で燃やして差し上げたけど。
「なっ、あたくしの手袋になんてことをっ!!クリスティーナちゃん547号っ、あぁ、可哀想に。こんな無惨な灰になってしまうなんてっ!!」
燃えた手袋の前に膝をついて手袋の灰を見つめたレジーナさまは、きっ!とわたくしを睨みつけてきた。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
36
あなたにおすすめの小説
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる