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「……はぁー、お代は取らぬ。ただ、その力はできれば悪用するな、以上だ。」

 揺尾は面倒くさそうに言った。どちらかというと気怠気という言葉の方が似合うかもしれない姿勢だ。

「商人というのはお金を取れる時に取れる分だけ絞り取る生き物ではないの?」

「……そなたの商人像はどうなっているのだ?あと、ここは店であって店ではない。」

 揺尾の言葉に雅楽は小首を傾げて顎に人差し指を当てた。

「……つまり、店ではあるけれど商品は無償提供するから店ではなく施設だ、ということかしら?」

「あぁ、そういうことだ。それに、そなたからしたら願いが叶ったのかどうかまだわからぬのだぞ?」

 揺尾は呆れていた。

「それでも、お代は払うのが礼儀ではなくて?」

「要らぬ。」

「そう。」

 雅楽は絶対に譲らぬといった雰囲気の揺尾と張り合うのをやめ、あっさりと引き下がった。

「! そなたがあっさり引き下がるとは意外だな。」

「そうかしら?
 ………そうね、でも、ただにしてくれたあなたに免じてここはそういうことにして置いてあげるわ。」

「そなたは存外守銭奴なのか?」

 揺尾はニヤリと笑って聞いた。嫌な笑みだ。

「……単に今手持ちが端金はしたがねしか持っていなかったから、一括で払えるか分からなかったからよ。」

 雅楽は不機嫌そうに鼻を鳴らしながら言った。

「ちなみに手持ちはいくらだ?」

「十万。」

「は?」

 揺尾は目と口をあんぐりと開けて間抜けな顔を作った。

「なに?」

「いや、そもそも何故十万なんて大金持ち歩いているのだ?」

「大金というほどでもないと思うけれど?」

「………。」

 揺尾は雅楽の非常識さに絶句してしまった。
 十万を端金と称したのもそうだが、その認識を当然とし、周りの人間?もそういう認識でいると一切を疑っていないからだ。

「そなたとは住む世界が違うようだ。」

「当然じゃない。それじゃあ、これにて私は失礼するわ。どうもありがとう。」

 そして、雅楽はガラス戸を引いて優雅に去って行った。

ーー……ごめんなさい、黒星……。もう、にはあなたと面と向かって対等に話す資格がないの……。わたくしはもう、〇〇〇〇、ではないから……。ーー

 こう、意味深な言葉を口の中で呟いて……。

*******************

最後まで読んでいただきありがとうございました(*´꒳`*)

これ以降はのお話は気が向いたら、今後もしかしたら筆を取るかも知れません。
完結までお付き合いいただき本当にありがとうございました(๑>◡<๑)

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