《完》わたしの刺繍が必要?無能は要らないって追い出したのは貴方達でしょう?

桐生桜月姫

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番外編

夫人は出発する

▫︎◇▫︎

 2日後、カリーナはまさかの名門公爵家からの呼び出しという、信じられなくてとんでもないことを命じられてしまった。フェアリーン王国筆頭公爵家であり、親友の実家、イスペリト公爵家からの使者。なんということだろうか。
 カリーナはあまりの頭痛に額を押さえた。

「お気持ちは分かります、ですがご一緒に来ていただけませんか?」
「言われるまでもなく行くわ。でも、心配性な旦那様にお知らせしておきたいの。構わないかしら?」
「どうぞ」

 使者はのんびりと答えた。
 カリーナはくすっと笑って、アイーシャが余計なことを話してしまっているものだと思った。

「イーリス、旦那様に伝えておいてくれる?」
「《分かったわ。一緒に行こうと思ってたのに残念》」
「ごめんなさいね」
「《いいわ、クッキー10枚で手を打ってあげる》」

 カリーナはにこっと笑ってドレスの裾を翻した。ふわりと、百合の蕾のような真っ白なドレスの裾が舞った。可愛いドレスを撫でると、カリーナは使者に連れられて公爵邸への馬車に乗り込んだ。

(どうやら私は、アイーシャのことをこってりしっかり叱らなくてはならないようね)

 マナーを無視した可愛い友人の娘との再会を心待ちにしているカリーナは、アイーシャから貰ったブローチをするりと雪のように白い指先で撫でながら微笑んだ。

「あぁ、とっても楽しみだわ」

 誰にも聞かれたかったはずの言葉なのに、カリーナの周囲には優しくて淡い光がたくさん現れていた。

*******************

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