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第117話 役者が続々
しおりを挟む戦場を前にし、勇者たちはエリクサーを取り出した。
「ハイエリクサーを使え!」
「ハァァァァ!来たぜ!力が溢れてくる!」
エリクサーを飲み干す勇者たち、勇者たちの身体から魔力の光が溢れ出す。
「神兵達とともに攻めたてよ!」
上級女神が号令をかけた。
勇者たちが魔神軍に突撃していく。
「勇者たちの様子が変だぞ!」
「衝撃に備えよ!」
魔神軍たちは盾を構える。
「ウオオオオ!」
先頭を走り、剣を振るった。
大地を引き裂くほどの衝撃が発生し、魔神軍の兵達を大きく吹き飛ばした。
「一太刀でなんという破壊力!」
「この鎧が無ければ死んでいたッ!」
流石の魔神軍の兵士たちも勇者の変貌ぶりに驚く。
「魔力核が暴走している、体内に抑え込めない魔力が漏れ出している。ほっといても死ぬなあいつら」
「あんな薬で力を手に入れた気分になりやがって」
バアル・ゼブルとクレイピオスが勇者たちをみてそう言った。
「クレイピオス!先程伝えた位置に軍を配備させるんだ、これを忘れずにな。アスタムもそろそろ到着した頃だろ2人でやってくれ」
「畏まりました!アスタムー聞こえるか!」
クレイピオスが魔法で呼びかけると彼女の目の前にアスタムが現れる。
「聞こえてるよ姉さん」
「お!流石わたしの弟、それじゃあ行くよ!」
二人はバアルからの任務を遂行する為に動き始めた。
「フォルサイト!マリス!ここからは自由行動だ」
「待ってましたー!」
「ようやくだ」
フォルサイトとマリスも別々に行動。
マリスは女神軍の頭上に転移魔法を使い移動した。
「あの子どもみたいなの!あれはバアル・ゼブルとこの!」
「誰が子どもだてめぇ!」
マリスはキレながら、杖の先端に魔力を集めていく。
「魔法を撃ってくるぞ!反射魔法を!」
相手は魔法を反射するための防壁を展開する。
「へぇーそいつらそんな器用な事ができるのか。偉いじゃん、まあ私は泳ぎを覚えたときにはそんなの出来てたがな!」
マリスは相手が防壁を展開しきるまで待って、魔法を放った。
「反射出来るもんならやってみな」
彼女が放った水の弾が防壁に命中、防壁はこの魔法を反射するはずだった。
しかし防壁はみるみるうちに薄くなっていき、防壁の内側から大量の水で形成されたサメが出現。水のサメは防壁の内側にいた勇者達を貪るように喰い荒らしていく。
「な、なんで……術は完璧だったのに」
「てめぇらの魔法に干渉して書き換えたんだよ。見りゃあ分かるだろ」
鼻で笑うマリス。
「ユイ!こい!」
マリスはユイに魔法で呼びかけた。
「はい!さっそくやってますね先生!」
ユイが彼女の側に転移魔法で現れる。
「折角の大舞台だからな、派手な演出してやろう」
「畏まりましたー!」
二人は魔法を発動する。
「いでよ激流の竜巻!マレ・トゥルボ!」
「トゥルボ・フラマルム!」
突如、相手軍を囲むように巨大な水の竜巻と焔の竜巻が発生。
「水の竜巻!?」
「こっちは炎の竜巻だ!」
水の竜巻はあらゆるものを切り裂き、焔の竜巻は側にいるだけでその身を焦がす程の熱を放っている。
「さあ水で切り裂かれ、溺れるか」
「焔で灰となるか」
「「好きな方を選びな」」
竜巻に呑み込まれていく遠方の仲間をみて驚愕する勇者達、しかし彼らはまだ戦意を喪失させることなく攻撃を続けようとする。それしか彼らには残されていないからだ。
「くそ!前進する!先頭は頼んだぞ神兵……え?」
女神達が神兵に指示を出そうとした、しかしそこに神兵の姿はなかった。
「な、なんだァッ!?神兵の足元からマグマが!」
神兵がみるみるうちにマグマへと沈んで行く。
それだけではなかった、神兵以外の者も次から次へと倒れていく。
「お、おい!どうした!何倒れて……なんだ、い、息がッ!」
「ずいぶんと独特なセンス」
「かわいくなーい」
彼らの近くにある岩の上からそう話す声が。
ホットチョコとディープパープルだ。
「マートル様にタケミちゃんがいる戦場に私達が来ないわけないっしよ」
「マートル様、ベロニカ様、露払いは私達が」
二人は到着した旨を報告する。
「さあ、タケミちゃんに良いところみせるよ!」
「みんなぁ行くよー」
彼女達の背後からグランドオーク達が現れ、武器を掲げ声を上げた。
グランドオーク達は女神軍に襲い掛かる。
「なんだコイツ等!?」
「デタラメな強さ、あいつらも魔神軍か?!」
エリクサーにより強化された勇者達にも動じず攻め進めるグランドオーク達。
「それじゃあ行きますか。可愛ければ一体ぐらい貰おうかと思ったけど。私の琴線には触れないなー」
ホットチョコは眼前に迫る神兵を見てそう言った。
「それじゃチョコちゃんお願いね」
「えーパープルはしないの?」
「手伝いがいる?」
ディープパープルは彼女の後ろで座っている。
「シェアしようかなってだけだよー」
「結構、私は楽できたらそれで」
「えー!冷めてるなー」
「まあそう言うことなら、遠慮なく行きますか」
ホットチョコとディープパープルは神兵の攻撃を軽々と回避した。
宙に飛んだホットチョコは何もない空間から鎖鎌を取り出し、クルクルと回す。
「な、なんだ!足元が赤く……!」
「チョコレートファウンテン!」
勇者達の足元からマグマが勢いよく噴出し、空を赤く照らした。
「に、逃げろ!空に逃げるんだ!」
飛行能力を持つ勇者や女神達が焦って空へ逃げていく。
「よしこれで……え?」
マグマが空中に逃げた相手をとらえた。
「あーダメダメ、空に逃げてもその子は追いかけるよー」
「溶岩がまるで生き物みたいに!?」
噴出したマグマは形を変えながら空にいる敵も追尾し捕らえていく。
「流石チョコちゃーんやるね」
ホットチョコの戦いぶりをみていたディープパープルは立ち上がる。
振り向いて、服を軽く払う。
「さーてと私はこっちかな。女神もいるね」
彼女の前には密かに接近して来た敵の集団がいた。
「……ッ!」
その先頭にいる女神の前まで進み立ち止まるディープパープル。
「そのまま棒立ちして、1日終わるつもり?私はそれでも構わないけど」
「黙れ!この蛮族が……!」
女神が手に持っていた剣を振り上げた、その直後、相手の頭部が吹き飛んだ。
「め、女神様!?」
後ろにいた勇者たちが動揺する。
「私はあなたが動くまで待つなんて一言も言ってないよ。私がここで待ってたのはこれが戻ってくるのを待ってたから」
ディープパープルの手にあったのはブーメランだった。彼女は事前にこれを投げており、戻って来たブーメランが死角から女神の頭部を襲ったのだ。
「あなた達の本拠地が潰れた今、膨大な魔力供給は得られない。つまりその回復能力にも制限がある」
「が……ぐ!この……ッ!」
女神は頭部を修復させるが、当然これにも魔力を消耗する。
「なんだ?目眩が急に……!」
頭部を元に戻した女神は膝をつく、この時ようやく彼女は目の前にいる相手の情報を思い出したのだ。
「ブーメラン使いグランドオーク、貴様の毒か……!」
「気づくのが遅すぎたね。まあでも、期待の神兵ってのが役立たずでパニックだったもんねぇ。しょうがないよ」
他の者達もディープパープルの毒に続々と倒れていく。
「ふぅん、やっぱりあなた達は基本的に毒に対して抗体を作るんじゃなくて毒でやられた組織を無理やり回復させてるんだね。それで毒が身体から消えるか薄まるまで待つのか」
ディープパープルは相手の様子を観察し分析している。
「でもそれじゃあ私の毒は治せないよ、何年、何十年かけようがね」
彼女はゆっくりと立ちあがる。
「バイバイ」
彼女が手を振り、その場を後にする。
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