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第118話 自由行動
しおりを挟む戦場を見渡すプロエ、彼の表情はまるで戦場にいるとは思えない程に静かだった。
「こんなに若い奴らばかりだと、私は少し見劣りしてしまうな」
「やってやるっ!」
襲い掛かる勇者。
「だがまぁ……」
相手の攻撃が当たる直前まで棒立ちだったプロエ、一瞬で拳を構え放った。
「ガァ……!」
プロエの拳が相手の身体を貫通する。
「一人につき一撃か」
彼は迫りくる相手を全て一撃で倒していく。
「な、なんて奴だ!」
「だが奴は一対一に長けた戦闘スタイルらしい!集団でいけば!」
勇者たちは味方を集める。
「流石にそこまでは頭が回るか」
相手は集団で隊列を組む、戦闘には女神が構えていた。
「私の装備でアイツの拳を防ぐ!その間に殺すんだ!」
「列をなしてくるか。更に高い回復力を持つ女神を戦闘におくとは、シンプルだが良い作戦だ」
「だが……」
プロエは勢いよく拳を放つ。
「……うそ、でしょ……ガハッ!」
盾を構えた女神と列にいた者達の胴体に穴が開いていた。
「こんな技、タケミには当たりもしないだろう、まあ当たった所でなんともないだろうが。君たちは少し鍛錬が足りないのではないか?」
プロエは相手に触れることなく敵を倒す。
「クソ!」
「む」
背後から現れた女神、その女神がプロエに襲い掛かった。
プロエは相手に反応し迎撃しようとした、しかしその攻撃を止める。
襲ってきた相手は遥か遠方に吹き飛んだのだ。
「おっと、余計な手を出してしまいましたか」
「ベロニカ殿か、いやいや助かったよ」
現れたのはベロニカだった。
「拳闘王に助力などは不要でしょうが、混ぜてもらっても?」
「ああ、もちろん」
ベロニカは地面から剣を作り出す。
「剣士なのかい?」
「剣も使いますが、武器ならばなんでも使えます。魔法もできます。私は一族の者達に一通りの戦闘方法を教える指南役でして。素手の戦闘もできますがあなた程ではありません」
そう言われて笑うプロエ。
「世事も上手いんだな」
勇者と女神達が二人を囲む。
「さぁ、我らに挑む者たちよ、どこからでもかかって来なさい」
「教え子たちに良い所見せる為、張り切らせて頂きますよ」
プロエとベロニカは背中合わせで構える。
「グランドオーク!それに拳闘王か!出しゃばりやがって!」
ミディカは何かを取り出す。
「ミディカ様、それは?」
「ああ君たちに使う特注品だ」
彼女はそういって一番近くにいた下級女神の首に注射器を刺した。
「え……?」
「さあっ!花開く時だ」
そう言って注射器から何かを注入するミディカ。
「ミディ……カ……様!?」
下級女神の身体が灰色の液体へと変化していく。
灰色のゲル状のものが蠢いている、辛うじて塊として形成されてはいるが、常に形が変化し安定しない様子だ。
「やはり下級だと形を保つのが難しいようだな。だが最低限の能力は機能しているようでなにより」
ミディカは近くにいた者達に次々と注射器を投げ、薬品を投与していく。
「出し惜しみをする場合ではないからな。ゆけ!」
彼女はゲル状になった下級女神に命令をだした。
命令を受けたそれらは不安定な形状のまま進みはじめ、戦闘しているグランドオーク達に向かっていく。
「何か来たぞ!」
グランドオーク達は魔法を放つ。
しかし、ゲル状になった女神達はその魔法を飲み込む。
「よーし良いぞ!昇華は成功だ!下級女神から君らは……うーん何が良いか、昇華したから新しい名前を……いや、今後は下級女神はああすれば良いから序列は変わらないのか。ならば下級女神のままで良いな!」
ミディカは手を叩き実験成功を喜ぶ。
「こちらの魔法を食べたのか?!」
「ヴアアアアアアアア!」
叫び声を上げながら突撃してくる下級女神たち。
「なるほど、その体に取り込もうという訳か。遠距離に対しての攻撃手段は持ってないようだ。とにかく距離を取るぞ!」
グランドオーク達は下がり、距離を取る。
下級女神たちは体を広げながらグランドオーク達を追いかけていく。
「お、おい!俺らは味方だぞ!」
「なんだこれ!全然離れねぇ!」
「か、身体が溶けていく……?!」
道中に味方であるはずの勇者達がいようがお構いなしに突き進む下級女神たち。
すると相手の足元に巨大な魔法陣が出現。
「アアアア……!」
魔法陣から天まで伸びる焔の柱が女神達を焼き払う。
「この魔法は!」
「イトウ・ユイ様!」
グランドオーク達の前にユイが現れた。
「みんな大丈夫?これってアイツが作ったの、悪趣味極まりない」
昇華した下級女神たちをみて眉間に皺を寄せる。
「あの方は!イトウ・ユイ様!素晴らしい!なんという魔力だ!」
神獣を相手にしているユイを見て歓喜するミディカ。
「貴様らは他の連中を相手にしろ!私はあの方の元へ!」
ミディカは下級女神たちを変異させながらユイの元へと飛んで行く。
「まったくあっちもこっちも好き勝手やってるな」
「本当だな、あれ?マートルは?」
「さあな、忘れ物でも取りに行ったんじゃないのか」
タケミとネラは迫りくる敵を倒しながら話す。
「私もちょっと行って来る。そんじゃあな」
ネラもそう言って移動した。
「え、お前も行くところあるのかよ。おれはどうするかな」
引き続き迫る敵を殴り倒しながら、タケミは考える。
「うーん……あっち行くか」
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