最強の1年1組、理不尽スキル「椅子召喚」で異世界無双する。微妙なスキルしか無い担任の私は「気持ち悪っ!」連発しながら子供たちを守り抜きます!

加藤伊織

文字の大きさ
48 / 51

48 レッツ廃墟探検

しおりを挟む
 翌朝、朝食の後で月姫るなちゃんがわくわくを隠せない顔で私に尋ねてきた。
 
「せんせー、今日はどこに探検に行くの?」
「今日はね、廃墟! ……って言ってもわからないよね。むかーしあった、街の跡だよ」
「鎌倉みたいなところ?」
「鎌倉は今でも街だね。えーとねえ、ピラミッドとか、そういう感じかなー」
「ピラミッド!」

 一翔かずとくんが食いついてきたよ。さすがだ、戦国時代と三国志と幕末以外にも詳しいんだなあ。そういえば図書室でもいろんな本を読んでるし。

「わーい、楽しそうー!」
「そこだったら虫もいないだろうってジュスタさんが言ってたしね」
「虫いないの? ほんと!?」

 聖那せいなちゃんが凄い勢いで私に迫ってきた。私は「多分」としか答えられなかったけど、明らかに聖那ちゃんがほっとしている。

「ジュスタさんも一緒に行きますか?」
「いや……。妾は行かぬ。あそこには思い出もある分、少々辛くてな。オウムに先導させよう。魔物避けにもなるからの」

 薄く微笑むジュスタさんが痛々しい。神様にとっては昔の事でもずっと忘れられないことなのかなあ。
 だとしたら、私たちとの思い出も、いつかは愛しく思い出して寂しくなったりするのかもしれないな……。

「……ジュスタさん、この森、思い切って切り拓いて、人間と交流したらどうですか?」
「む? なんじゃ、突然」
「寂しくないですか? 私だったら、言葉を交わす相手がいないままずっとひとりでいるのは耐えられません」
「妾のことを思ってくれるのは嬉しいが、古の時代ならいざ知らず、今は人間が増えておる。妾の側には魔物がおるし、人里に近づけば人間と魔物、互いにとって良いことにはならぬ」
「でも――」
「言うたであろう、人も、動物も、魔物も、妾にとっては等しく愛を注ぐ存在じゃ、と。人と交わることには固執せぬ。逆に、軽率に人と交われば、今は敬意で済んでいるものが畏怖になるやもしれぬ。それどころか、魔力を司る存在として人間の欲に巻き込まれる可能性もな」

 そうだ、この世界の神様って万能じゃないんだ――。
 目の前の少女の姿をした女神を見て、改めて私は考えた。

「すみません、余計なことを言いました。忘れて下さい」
「そうじゃの、もっと文明が進化して人間にとって魔物が脅威でなくなったら、この髪の色を変えて街を渡り歩くのも楽しいかもしれぬな。昨日のケーキは美味であった。妾もたまにはああいうものを食べたいものじゃ」

 私の事を気遣ってくれたのか、少しおちゃらけたようにジュスタさんが言う。私はそれに頷いて見せた。

「その時には、兄か姉の役をさせて神様も連れて歩くといいですよ。人間の営みを間近で見たら、あんなめちゃくちゃなこともしなくなるんじゃないですか」
「それもいいのう」

 お互いにくすりと笑い合い、私たちはその話をそこで切り上げた。


 念のためにリュックに飲み物などを詰めて準備をしてから、私たちはあのオウムに先導されて遺跡へと向かった。
 相変わらずこっちのペースを考えないスピードで飛ぶよ、このオウム!
 ほとんど全力疾走だったせいか、30分ほどで目的地へ着いた。ちょっと驚いた。「さほど遠くない」どころかかなり近いね? もしかしたら私たちの移動スピードがおかしかったからそう感じるのかもしれないけど。

「うわぁ……」
「すごーい」
「い、遺跡だあ!」

 子供たちの感嘆に混じって、私も思わず叫んでしまった。
 密林の中から現れた石造りの大きな建物はアンコールワットを彷彿とさせるようなもので、周囲にも崩れてはいるけども小さな建物がいくつもある。

 蔦が絡まったり木に飲み込まれている部分があったりするけど、確かにこれは街の跡。
 テンション上がってくるー!

「よーし、じゃああの建物の中を探検だよー!」
「オー!」
「はーい!」

 神殿だか宮殿だかわからないけど一番大きな建物に、私たちは意気揚々と乗り込んでいった。
 通路もそこそこ広いし、天井も意外に高い。
 本当に虫は出ないのかなって心配になる。
 いや、それよりも、無計画に進んでいったら迷子になりそう。通路はそこそこの複雑さがある。

「ちょっと待って、先生、地図を書きながら行くからね」

 まさかTRPGのマッパー経験がこんなところで活きるなんて。
 私は手帳とボールペンを握ったまま、進んだ道を書き込んでいく。幸い、通路は碁盤の目の様になっているので、私の拙い技術でもなんとかなりそうだ。

「部屋があるよー?」
「先生、見ていい?」
「いいよ、でも気を付けてね。モンスターが出てくるかもしれないからね」

 私の言葉で、そろりと聖那ちゃんと雄汰ゆうたくんが小部屋を覗き込む。
 そして、一瞬にして顔色を変えて急ぎ足で戻ってきた。

「何かあった?」
「ほ、ほ、ほ、ほね……」
「先生、ここ、お墓?」
「えっ?」

 手帳にペンを挟み込んで、私もそろそろと部屋を覗く。すると、あちこちに茶色い骨になった遺体が散らばってるのが見えてしまった!!
 まさか、まさか、この遺跡に出てくるモンスターって……。

 私の想像を読み取ったように、骨がカチャカチャと音を立てて組み上がっていく。そして、ふらふらとこちらに向かって歩いてきた!

「うっそ、スケルトンじゃーん!!」
「ぎゃー!」

 一瞬にしてパニックに陥った子供たちはダッシュで逃げた。もちろん私も全力ダッシュした。
 だけど、スケルトンも追いつけないながらも凄い速さで追ってくる!

「椅子、椅子投げて!」
「椅子召喚!」

 月姫ちゃんがすぐさま椅子をスケルトンに向かって投げる。椅子がスケルトンにぶつかると煙幕が広がって……それが晴れたとき、そこにはバラバラになった骨が散らばっていた。

「うわっ、すっごい嫌な予感」
「黄色い箱になってないよ?」

 こわごわと見守る私たちの前で、骨が再び組み上がっていく! やっぱりー!

「うぎゃー!!」
「虫よりやだぁぁぁ!!」
「一翔くん! 八門遁甲の椅子!」
「椅子召喚、八門遁甲の陣!」

 一翔くんがすかさず八門遁甲の椅子を出すけれど、スケルトンは椅子の中に入ってもまっすぐこちらに向かってくる!

「うっそー! なんでー!」

 もしかして脳みそがないから!? そんな理由で突破できるものなの!?
 なんだかわからないけど、とりあえず私たちはまた走って逃げるしかなかった。
 そして、気がついたら、合流したスケルトンがどんどん増えていて……。

「来なきゃよかったよぉぉ!」
「骨怖いよー!」

 阿鼻叫喚の地獄絵図だよ!
 帰ったらジュスタさんに思いっきり恨み言を言ってやるー!

 どうしよう、普通の椅子も八門遁甲の椅子も効果がないとなると――。

「桂太郎くん、あの骨に向かって椅子を投げて!」
「ぼ、僕ですか!?」

 一か八かだ! アンデッドには治癒魔法が効くと相場が決まってる! もしかしたら桂太郎くんの癒やしの椅子が効果あるかもしれない。

「投げて! 倒してあげないと、あの骨のモンスターは安らかに眠れないんだよー!」
「安らかに眠れない……わかりました、椅子召喚! 骨さん、すやすや寝て下さい!」

 意味合い違うね!? でも桂太郎くんがモンスターに向かって椅子を投げたことだけでも結構凄いことだよ。
 そして、私の期待通り、桂太郎くんの椅子を食らったスケルトンはキラキラと光って消滅していった。――でも、全然手数が足りないんだよね!

「いける、いけるよ! もっと投げて!」
「はいっ!」

 桂太郎くんの椅子投げのスピードはそれほど速くないけど、悠真くんの椅子爆弾がスケルトンの足止めになった。爆破されて細かくなってから、また組み上がるまでに時間が掛かる。
 そこに桂太郎くんの椅子が当たると、スケルトンを浄化することができた。

 30体ほどのスケルトンを倒した頃には、黄色いコンテナがふたつ現れていて、中身を見てみれば飲むヨーグルトだった。
 いや、そこでカルシウムアピールしなくていいよ……。

「これ、飲む?」
「喉渇いたから飲むー」
「そうだね……」

 そして私たちは、全員疲れ切った顔をして飲むヨーグルトをずずずっと飲んだ。
 うん、喉が渇いてる時って、こういう濃いものあんまり効かないね。牛乳の方がまだよかったかも。
 

 遺跡探検は、はっきりいって失敗だった。確かに虫は出なかったけど、もっと全員にまんべんなく嫌悪感を与えるようなモンスターが出るなんて!
 すっかり迷子になった私たちは、椅子で建物の壁をぶち抜いて、無理矢理道を作って脱出した。
 もしかしたら将来、ここを調査する人がいるかもしれないけど。
 本当にすみません! 背に腹はかえられなかったんです!!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...