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リアン②
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「何よ、これ……」
私は足で何か柔らかいものを踏んだ。
「げっ! ナンシーじゃん!」
「リ~ア~ン!」
白い毛玉は情けない声で叫ぶと私に全力で飛びついてきた。
その勢いに私は馬車の背もたれに頭を打ちつけそうになる。
「何であんたがここにいるのよ! 化け猫!」
私はしゃべる猫の喉元を締め上げた。
「ぐえ! やめてよ。あたしだって好きで来たんじゃないわ。ディルが行けって言うから──」
化け猫こと、ナンシーは私に身体を押さえつけられ、手足をバタバタさせて答えた。
「帰りなさいよ。私は用はないわ」
「だから帰れないんだって」
「あぁん?」
「あんたをバナンに送り届けるまで帰ってくるなって言われてるのよ。あたしは」
ナンシーは軽く咳き込んで嫌そうに答えた。
「そんなの嘘ついて帰ればいいじゃん」
「あんたが庇ってくれるならね」
「そんなことするわけないでしょ」
「だから帰れないんじゃないの。とっとと隣国へ行きなさいよ!」
尻尾を振り、毛を逆立てるナンシー。
まぁ、仕方ないわね。
子どもの頃はナンシーをよく風呂に浸けて遊んだっけ。
池に突き落としたりして、引っかかれたもんだったわ──。
幼少期のろくでもない思い出が脳裏によみがえる。
ナンシーは城に住み着いている妖精猫だ。
ディルが生まれる前は城の庭園をうろいていたときく。
が、今は基本的にはディルのベッドの上で寝て過ごしていることが多い。
ディルの使い魔のような存在だ。
「本当にあんたって昔から可愛くないのよねぇ……」
ため息を吐きながらナンシーは揺れる馬車の窓から外をのぞきこんだ。
「はいはい。もう着くんだからお役御免でしょ。本当に何も役にたってないけど。さよーならー」
「あんた、どうせなら一回捕まってみたらいいんだわ」
鼻にシワをよせてひくひくさせながらナンシーは言った。
折角の一人旅だったのに。
よりによってうるさいのが、着いてきてしまった。
私のテンションが下がったところで、ガタピシ音をさせながら進んでいた馬車がらガタン! と止まる。
「送れるのはここまでです──」
私を降ろすと逃げるように御者は今走ってきた街道と逆方向へ消えていった。
……なるほど。城には帰らないというわけか。金で雇われたのね。きちんと送ってくれただけありがたいわ。
「さて。行きますか」
私は毛玉をつまみ上げて肩にのせると目の前のがっしりとした門をくぐった。
まぁ、わざわざ妖精猫をくっつけてくるってことは──事態があまりよろしくないということだ。
さっさと隣国バナンに抜けた方が良さそうだった。
私は足で何か柔らかいものを踏んだ。
「げっ! ナンシーじゃん!」
「リ~ア~ン!」
白い毛玉は情けない声で叫ぶと私に全力で飛びついてきた。
その勢いに私は馬車の背もたれに頭を打ちつけそうになる。
「何であんたがここにいるのよ! 化け猫!」
私はしゃべる猫の喉元を締め上げた。
「ぐえ! やめてよ。あたしだって好きで来たんじゃないわ。ディルが行けって言うから──」
化け猫こと、ナンシーは私に身体を押さえつけられ、手足をバタバタさせて答えた。
「帰りなさいよ。私は用はないわ」
「だから帰れないんだって」
「あぁん?」
「あんたをバナンに送り届けるまで帰ってくるなって言われてるのよ。あたしは」
ナンシーは軽く咳き込んで嫌そうに答えた。
「そんなの嘘ついて帰ればいいじゃん」
「あんたが庇ってくれるならね」
「そんなことするわけないでしょ」
「だから帰れないんじゃないの。とっとと隣国へ行きなさいよ!」
尻尾を振り、毛を逆立てるナンシー。
まぁ、仕方ないわね。
子どもの頃はナンシーをよく風呂に浸けて遊んだっけ。
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「本当にあんたって昔から可愛くないのよねぇ……」
ため息を吐きながらナンシーは揺れる馬車の窓から外をのぞきこんだ。
「はいはい。もう着くんだからお役御免でしょ。本当に何も役にたってないけど。さよーならー」
「あんた、どうせなら一回捕まってみたらいいんだわ」
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折角の一人旅だったのに。
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「さて。行きますか」
私は毛玉をつまみ上げて肩にのせると目の前のがっしりとした門をくぐった。
まぁ、わざわざ妖精猫をくっつけてくるってことは──事態があまりよろしくないということだ。
さっさと隣国バナンに抜けた方が良さそうだった。
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