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ディル③
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「……伯爵から何か手がかりがわかるといいが──」
俺は人気のない薄暗い通路に身を潜めながら呟いた。
舞踏会のあと──。
こっそりと地下牢のある場所へ潜り込んだのだが、いつも手薄なはずなのにやたらと警備の衛兵が巡回している。
人目を避けて暗い通路の奥を目指しながら進むことしばし。
「──!」
前方に人の気配が感じられた。
淀んだ空気の中に漂う──鼻につく鉄錆びのような臭い。
血臭だ。
「ちっ!」
俺は舌打ちをすると通路から牢の扉の前に躍り出た。
「何者!?」
衛兵が二人、打ちかかって来るのを峰打ちで黙らせ扉のノブに手をかけた。
──ギイッ!
古ぼけたランプの灯りに牢の中で横たわる男の姿が見えた。
顔色は土気色だ。
胸が上下しているのでかろうじて息はあるのがみてとれた。
「拷問したのか──ズルターンめ!」
特に鞭打たれた背中からの出血がひどく、トゥーレ伯爵はほぼ昏睡状態であった。
これでは証言をとるどころではない。
トゥーレ伯を戒めていた手枷足枷の鎖を長剣で断ち切ると俺は彼を背中に担ぎ上げた。
「うっ……」
意識のない人間を運ぶのはかなりの負担だ。
でもここで諦めるわけにはいかない。
何とか扉をくぐって地上まで出たところで──。
「どこへ連れていく」
裏庭から聞こえたのは、聞き覚えのある耳触りな甲高い声。
げぇっ!
ここで見つかるとかありかよ!
あわててトゥーレ伯爵を地面におろして振り向くと──。
そこには予想通りの大臣、ズルターンと見たことのない痩せぎすのフードを目深にかぶった男が立っていた。
俺は人気のない薄暗い通路に身を潜めながら呟いた。
舞踏会のあと──。
こっそりと地下牢のある場所へ潜り込んだのだが、いつも手薄なはずなのにやたらと警備の衛兵が巡回している。
人目を避けて暗い通路の奥を目指しながら進むことしばし。
「──!」
前方に人の気配が感じられた。
淀んだ空気の中に漂う──鼻につく鉄錆びのような臭い。
血臭だ。
「ちっ!」
俺は舌打ちをすると通路から牢の扉の前に躍り出た。
「何者!?」
衛兵が二人、打ちかかって来るのを峰打ちで黙らせ扉のノブに手をかけた。
──ギイッ!
古ぼけたランプの灯りに牢の中で横たわる男の姿が見えた。
顔色は土気色だ。
胸が上下しているのでかろうじて息はあるのがみてとれた。
「拷問したのか──ズルターンめ!」
特に鞭打たれた背中からの出血がひどく、トゥーレ伯爵はほぼ昏睡状態であった。
これでは証言をとるどころではない。
トゥーレ伯を戒めていた手枷足枷の鎖を長剣で断ち切ると俺は彼を背中に担ぎ上げた。
「うっ……」
意識のない人間を運ぶのはかなりの負担だ。
でもここで諦めるわけにはいかない。
何とか扉をくぐって地上まで出たところで──。
「どこへ連れていく」
裏庭から聞こえたのは、聞き覚えのある耳触りな甲高い声。
げぇっ!
ここで見つかるとかありかよ!
あわててトゥーレ伯爵を地面におろして振り向くと──。
そこには予想通りの大臣、ズルターンと見たことのない痩せぎすのフードを目深にかぶった男が立っていた。
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