婚約破棄して国外追放されましたが、王子が追っかけてきます。

胡蝶

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リアン④

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「なによ、ここ」
  私はギロリ、と偽修道女こと──リアナをにらみつけた。

「文句言わないでよ。こんなところに入り込んだことがバレたらただじゃ済まないんだから……」
  カビ臭い臭いの立ち込める横穴を這ってすすむリアナは私を振り返った。

「この地下道が唯一の抜け道なの。いつもならたんまり金を搾り取ってからじゃないと案内しないのに──お頭にバレたらあたしが危ないのよ! だからとっととついてきなさいよ!」 
「偉そうねぇ…」
   私はため息をつきながら、リアナの尻をおいかけた。

  うん、安産型ね──。

  そんなことを思いながらカビ臭い、じめじめした通路を進む。

  大人一人がやっと進むことが出来る空間だったのが、少し開けた場所に出た。

「ふぅ。あともう少しで隣国よ──」
  リアナがそう言った時。

「そこにいるのは誰だ!」
  暗闇から鋭い声がかけられた。
「うげっ!」
  目の前のリアナの喉がカエルを潰したような音をあげる。

「……?」
「おかしら──」
  そこには。

  黒髪ロング、そこそこマッチョの目付きの悪い男が趣味の悪い革の上着を着て立っていた。

「リアナ。ここを通って良いと誰に許可をとった?」
  低い鞭のような厳しい声をあげる。

「……えぇぇ──と。そ、そう。極上の客が見つかったので、後で御報告しようかと……」
  しどろもどろに答えるリアナ。

「ふん。極上ねぇ」
  おかしら、と呼ばれた男は埃だらけになった私の頭から爪先まで無遠慮にジロジロと眺めまわした。
「この小汚ない女がか?」
「悪かったわね! 金をとるならもうちょっとマシな抜け穴を作りなさいよ」
  喚く私を無視すると男はリアナに向き直った。

「で? 前金はもちろんとったんだろうな?」
「──は、はいぃぃ、もちろん……」
  小さな声でリアナは答えた。

「んなもん、払うわけないでしょ?」
  私は胸を反らして言った。
「は? リアナ、どういうことだ──?」
  男はギラギラと眼に凶悪な光をたたえてリアナに詰め寄った。

「あの、はい──そうです! 国の親からたんまりとせしめるつもりでしたぁ!」
「親? こいつはそんな金持ちには見えんが……」
「それがビックリ! こう見えて、めちゃくちゃお嬢さまなんですよ。ね?」
  リアナは必死に私を見た。

  仕方ない。

  私は首を縦にふってリアナの言葉を肯定してやった。
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