婚約破棄して国外追放されましたが、王子が追っかけてきます。

胡蝶

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リアン⑤

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「トゥーレ伯爵家にたんまり請求してもらってかまわなくてよ」
  どうせこんな辺境まで、まだ都の騒ぎは伝わってないんじゃないか。と、たかをくくった私は偉そうにツンと頭をそびやかして言ってやった。

   一応、これでも私はお嬢様なんだから。

「追放されたクセに随分と偉そうに……チッ、リアナの奴。また厄介な客を引っ掛けやがって!」
  うっ、バレてる。
  それにしてもちょっと田舎の連絡網、早過ぎない? 何故もう知ってるのよ!?


  おかしらと呼ばれた男は地面に唾を吐き捨てて言った。
「罪人でも構やしねぇ。おそれながらと、役人に突き出し、たんまりと謝礼金をせしめたいところだが──さっき検問所の方でトゥーレ伯の娘とおぼしき者、及びその係累は皆殺しにせよとの通達があったようだ」
「皆殺し……」
  男の言葉に私は寒気を感じた。
 
  実はここはのんびり乙女ゲーム「ルイーズ・ワールド」の世界。

  まぁ、ご多分にもれず私は転生者で──   別に突然思い出すこともなく、物心ついたら前世の記憶も持っていた。

  特にチート能力があるわけでもなく、前世の知識で無双をすることもなく。ただ、のんべんだらりと伯爵令嬢として私は過ごしてきたのだ。


  中世ぽいところはあってもこれまで、この世界は私が知る限りは普通の法治国家。
  皆殺しなんて今まで聞いたことのない通達。

  
  ついにはじまったのだろうか。ゲームのバッドエンド。
  世界の破滅──魔族の侵攻という、最悪のシナリオの方へ……。

  私はそこそこ厚みのある自分の両肩を不安にかられて抱きしめた。

「ここのところの天候不順や変な疫病のおかげで皆イライラしてるからな。そこへいきなり税率はをはね上げるなんて──ここの国の中枢は俺達以上に狂ってることは間違いないだろうよ」
「──この豊かなエルンストが……」
「とにかく、お前は厄介者なんだよ。とっと隣国のバナンにでもどこにでも消えてくれ」
  男は顎をしゃくると通路の奥の扉を示した。

「ありがとう」
  一応、礼を言って頭を下げる。
「いいか、絶対にエルンストには帰ってくるなよ! そして、俺達のことは──忘れろ」
  男はそう念を押すとリアナを引き摺るようにしてブルズの町の方向へ通路を引き返していった。


  その後ろ姿を見送り、バナンに通じる扉のドアノブに手をかけようとした瞬間!

「フニャア!!」
  妖精猫ナンシーが私にいきなり、体当たりをした。

「うきゃぁっ!」
  ナンシーに弾き飛ばされて尻餅をつく私。

「このクソ猫! 何すんのよ──」
  悪態をつく私に構わず、フウウゥ……と体を丸めてナンシーは扉に向かって警戒姿勢をとった。

  何?
  何か来る?


  私は服についた埃を払って立ち上がると、視線は扉に据えたまま、警戒しつつ後ろにジリジリと下がった。
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