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「クククク──」
扉が派手な音を立てて開き、通路に低い笑い声が響き渡る。
現れたのはマント姿の覆面男。
彼は闇を背にポーズをとって高らかに声を張り上げた。
「この国から逃げようとしてもムダだ! お前はここから逃げることはできぬのだ!」
リアンの足元で痙攣するようにナンシーがガタガタと震えている。
「ナンシー!?」
リアンはナンシーに心配そうな視線を向けた。
「──フニャアッ!」
妖精猫は何かに抗うように地面に爪を立てていたが、いきなりフッとかき消えた。
「ちょっと! ナンシーに何したのよ?」
「いいじゃないか。二人きりだ──なぁ、リアン?」
リアンは近づいてくる目の前の覆面男をキッと睨みつけた。
「あんて、返答によっては許さないわよ! 早くナンシーを返して」
「ふ──ハハハハ! いつものようにちょっと城にもどってもらっただけじゃないか。何て言う顔をしてるんだよ、リアン」
突如、覆面男は何かに耐えかねたように身体を折り曲げて笑い出した。
「……?」
「俺だよ、リアン」
男はククククと笑いながら、覆面をとって言った。
「ディル!」
覆面の下から現れたのは──リアンには見慣れた幼馴染みの整った顔。
「驚いたか? リアン」
覆面をクルクル回しながらおどけてディルは言った。
「驚くに決まってるでしょ?」
警戒しつつ、リアンは言った。
「どうした? リアン──」
ディルはつとリアンのそばによってきて、その肩を引き寄せようとした。
リアンはその手をするりとかわす。
「リアン?」
「ねぇ──」
「ん?」
「──ねぇ。貴方は誰?」
リアンは初めて見るかのような視線をディルに向けた。
「何だ? じゃあ、リアン。俺は誰だと言うんだ?」
「さぁ──ディルじゃない、邪悪な何かかまではわかるんだけど。そこからは名乗ってもらわないとわかるわけないでしょ?」
「ハーハッハッハ。なるほど。さすが転生者の聖女だ──こうもあっさり見破られるとは思わなんだ」
冷ややかに唇を歪めると、ディルは言った。
「やっぱり!」
リアンは息をのんで目の前のディル──の姿をしたモノを見つめた。
「あんなに懐いていたナンシーが貴方を見た時に寄っていかなかった。それがディルでない何よりの証拠よ」
「あぁ、あの忌々しいネコか。力を封じて次元の狭間に放り出してやったのに、生意気なことだ──」
ディルの形をしたモノはせせら笑った。
「茶番は終わりだ。聖女リアン。ここで死んでもらおうか──」
腰の剣をディルの顔をしたモノは、リアンに突きつけた。
扉が派手な音を立てて開き、通路に低い笑い声が響き渡る。
現れたのはマント姿の覆面男。
彼は闇を背にポーズをとって高らかに声を張り上げた。
「この国から逃げようとしてもムダだ! お前はここから逃げることはできぬのだ!」
リアンの足元で痙攣するようにナンシーがガタガタと震えている。
「ナンシー!?」
リアンはナンシーに心配そうな視線を向けた。
「──フニャアッ!」
妖精猫は何かに抗うように地面に爪を立てていたが、いきなりフッとかき消えた。
「ちょっと! ナンシーに何したのよ?」
「いいじゃないか。二人きりだ──なぁ、リアン?」
リアンは近づいてくる目の前の覆面男をキッと睨みつけた。
「あんて、返答によっては許さないわよ! 早くナンシーを返して」
「ふ──ハハハハ! いつものようにちょっと城にもどってもらっただけじゃないか。何て言う顔をしてるんだよ、リアン」
突如、覆面男は何かに耐えかねたように身体を折り曲げて笑い出した。
「……?」
「俺だよ、リアン」
男はククククと笑いながら、覆面をとって言った。
「ディル!」
覆面の下から現れたのは──リアンには見慣れた幼馴染みの整った顔。
「驚いたか? リアン」
覆面をクルクル回しながらおどけてディルは言った。
「驚くに決まってるでしょ?」
警戒しつつ、リアンは言った。
「どうした? リアン──」
ディルはつとリアンのそばによってきて、その肩を引き寄せようとした。
リアンはその手をするりとかわす。
「リアン?」
「ねぇ──」
「ん?」
「──ねぇ。貴方は誰?」
リアンは初めて見るかのような視線をディルに向けた。
「何だ? じゃあ、リアン。俺は誰だと言うんだ?」
「さぁ──ディルじゃない、邪悪な何かかまではわかるんだけど。そこからは名乗ってもらわないとわかるわけないでしょ?」
「ハーハッハッハ。なるほど。さすが転生者の聖女だ──こうもあっさり見破られるとは思わなんだ」
冷ややかに唇を歪めると、ディルは言った。
「やっぱり!」
リアンは息をのんで目の前のディル──の姿をしたモノを見つめた。
「あんなに懐いていたナンシーが貴方を見た時に寄っていかなかった。それがディルでない何よりの証拠よ」
「あぁ、あの忌々しいネコか。力を封じて次元の狭間に放り出してやったのに、生意気なことだ──」
ディルの形をしたモノはせせら笑った。
「茶番は終わりだ。聖女リアン。ここで死んでもらおうか──」
腰の剣をディルの顔をしたモノは、リアンに突きつけた。
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