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しおりを挟む「…ユウリ?」
なにやら外でユウリの声が開き超えた気がして、ユウリの顔が見えた窓に顔を向けた。特に変わった様子のない風景を見て、今さっきのユウリの顔を思い出した。
「ふっ」
今さっきのユウリの顔は絶対に俺が、ジュナファーに従っているのに安堵した顔だった。そして笑ったシュウに安心した顔。ユウリの顔を思い出すとシュウはにやけるのが止められなくて、口から笑いが漏れた。
(ユウリは分かりやすくて、本当に……。)
シュウは顔を崩しながら相棒のことを考えると、表情そのままの流れで言葉にならない気持ちを高ぶらせた。
ダダンはその様子を見て笑いが移ったのか、白い眉を垂れさせて笑う。
「冒険者殿、どうかしましたか?」
どこを見てもただの人と変わりのないこの男が隠しているものに、何が本能をそんなに刺激するのかと思案する。
最近聞いた話にどこか似ている様子も感じられて、ジワリと汗がにじむ。
だってそっくりなのだ。
依頼が終わり次第、なるべくかかわらないようにユウリを連れて帰ることが先決だ。
繰り返さないために、絶対に触れさせないのだ。
「いや、何でもない。気にするな。」
シュウはジュナファーの手伝いをしながらも、ユウリのことは内緒にしておきたくて、片手をあげて行動を制した。外から見れば、まるで貴族が平民にそうするように、そうなるのが当然のような感じ。
それもそのはずで正直なところ、シュウはやろうと思えば、紳士の対応だって実際はお手の物だった。
シュウの生まれは貴族だった。幼いころからマナーは叩き込まれていたし、そのうえ生まれ持ったこの容姿である。珍しい銀髪は人の目を引き、陶器人形のような容姿は誰しもが羨む。そこらの貴族が醸し出す雰囲気よりも何倍も圧のかかるものになるのは、この容姿のせいとしか言いようがなかった。
だからこそユウリの前では普通でいたくて、微塵も感じさせないように行動するのだが、ユウリの目にはそれが少しぶっきらぼうに映ってしまっているようだった。たまに教育の成果が表れてしまうことはあるけれど、自ら意識して使いはしない。
それに、紳士なのは性に合わない。基本的には自由でいたいし、もう少し見ていたいのだ。張り切るユウリを。
ユウリがシュウの行動に反していつもよりも多くの言葉を口にしていた。それも世間話を、だ。
きっと冒険者が二人して態度が悪いと依頼人ともうまくいかないとでも考えているに違いなかった。確かにギルドでは依頼に多少なりとも態度の評価は反映されるが、目標を達成すれば報酬はもらえるし、最低限のやり取りでも問題ない。むしろ世間話は愛想という面でサービスに入ることもある。そのうえ、ユウリはギルドのS級なのだ。少しぶっきらぼうでも今となってはあんまり関係ない。Sが何を示すかは町どころか、王国も知っているのだ。
ユウリの得意じゃないことをさせて、悪いなって考えないわけじゃないけど、その一生懸命さがじわじわとシュウにしみた。
シュウの頭の中ではすべてがいいほうへと変換される。ユウリが依頼者へ世間話するのは、俺たちの依頼のため。それはつまりシュウのことを考えた上の行動であって、最終的にシュウが甘やかされているということ。
つまりユウリに任せっぱなしなのは、ユウリの愛情を図るためであって、欲のためだ。
そう思うとにやけが止まらなくなった。
シュウはジュナファーの行動を制した癖に、自分では隠しきれていないニヤけ顔をレンガ造りの壁に向けた。
それにしてもユウリが遅い。そんなに遠くに行ったわけではないから、すぐに帰ってくると思ったのに足が近づいてくる気配もない。
食器の準備ももう終わって残るはユウリを待つのみだ。どうせならユウリを迎えに行った方が早いかもしれない。
ジュナファーもそう思ったのか、タイミングよく言葉を発した。
「もう一人の少年はずいぶんと遅いねぇ。」
「ええ、私も今それを思っていたところなんですよね。……あいつが心配です。ちょっと見てきてもいいですか?」
ジュナファーは頷くと優しい笑みを浮かべた。
「ああ、行っておいで。」
シュウは扉の方へ足を動かした。
何気ない態度のジュナファーのどこが可笑しいのか、シュウは去り際に視線を向けた。ユウリはジュナファーには家族がいるって言っていた。シュウだってそのことを知っている。なんて言ったって、昔ここに来たことがあるから。
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