エイデン~一度死んだ俺はもう一度世界を旅する~

咲夜

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ユウリはジュナファーには家族がいるって言っていた。シュウだってそのことを知っている。
なんて言ったって、昔ここに来たことがあるから。

でも、ここは10年前にほとんど人が寄り付かなくなった場所のはずだった。だからこそこの時期にどうしてここに帰ってきたのか確かめたかった。

でもジュナファーは否定するし、どういうことだと悶々とする。予想以上のことが起こりすぎている。
ふと目にとめたカウンターに写真があった。どれもジュナファーが映っている写真。脇によっていたり、腕に何かを持っているようなポーズだったり、うでを広げていたり、構図はどれも違って、でもジュナファーさんは楽しそうに映っていた。

「ジュナファーさん。この写真は誰かに取ってもらったものなんですか?」

「え?…ああ、確かそうだったよ。誰に取ってもらったかは、…覚えていないんだけどね。それにしても僕一人の写真だけ飾ってあって恥ずかしいな。」

「いえ、とてもきれいな写真だと思いますよ。」

シュウはそういうとその写真をじっと見つめる。

何だか嫌な予感がする。

本当に早くここを出よう、そう思って駆け足になって外に出る。

あの時と同じだ。人が引き起こした無意識が多くの人を巻き込んだ。

「ユウリ!どこいるんだ?…あれ、今さっきこのあたりを通っていたはずなのに。」

シュウはユウリが通ったであろう場所を辿って、ユウリを探す。

なんでいないんだ?まさか一人で森に入ったわけじゃないよな。

ユウリは一人行動歴が長いから、ふらふらと先に足を進める癖がある。
思い出したかのようにシュウの元に戻ってきたり戻って来なかったり。今回もまた同じなのかもしれない、自分のことを思い出せときつく言いたくなる。

シュウはため息をついた。一緒に行動したいから、ユウリの近くにいるのに、これでは意味がない。

すると後ろからガサガサと何かが近づいてくる音が聞こえた。

「ユウリ?」

草が茂っていて、何の音かよくわからない。人の音にしては軽い音だが、近づく音に期待をした。
しかし、出てきたのはウサギだった。

「ウサギかよ、ユウリはどこへ行ったってんだ。」

シュウは右手で参ったと思いながら、頭に手を当てた。
出てきたウサギは人懐っこいのか、シュウへと近づいた。シュウも近くへ寄ったウサギを抱きかかえた。その時ふとウサギの足に泥がこびりついていることに気づいた。

「足にこんなに泥なんてつけて、泥遊びでもしていたのか?」

ウサギは丸い目をキョトンとさせて、されるがまま足を触らせた。

(あれ、ここ最近は雨なんて降っていないのにこいつはいったいどこで泥なんてつけてきたんだろう。)

ユウリも見当たらないし、どうするかと壁の方を振り向いた。もしかしたら先に帰ってしまっているのかもしれない。白い壁がウサギの壁と同じように、泥で汚れていた。

「おいウサギ、お前どこから来たんだ?この泥は何だ?」

答えるはずのないウサギにシュウは聞いた。

昼に聞いたトワーズの話がよみがえる。

“忽然と消えたんだってよ”

(神隠しにあったのか?)

ジュナファーの消えた家族、———なんで家族が消えたんだ?なんでいないと嘘をつく?どうして今戻ってきたんだ?
今さっきのウサギとか変な写真とか、普通はおかしいなんて思わない。でもおかしいと思ったら、おかしい以外のものは見えなくなった。絶対に関係があるわけじゃない。

(…でも、ないと言い切れないんじゃないか。)

シュウはいてもたってもいられずに無駄に足を進めて、口を開いた。

「——っ!ユウリ‼どこだ!?いるんだろ!昔みたいにかくれんぼしているのか⁉降参でいいから早く出て来い!…ユウリ‼」

大声で叫んだ。

誰も返事をしない。

穏やかな風だけが流れてくる。

その風に微かにエイデンが香った気がして、シュウはそういえばユウリが、においがするとか言っていたことを思い出した。ユウリは昔から匂いがするっていうとそのにおいの元をたどりたがった。だから今回もそれだと思ったのに。

ユウリがその匂いを追って遠くまで行ってしまったのかと、一人で行ったのかと、どうして俺は一緒に行かなかったのかと様々な感情が渦舞いた。

どうしよう、今度こそ離さないと決めたのに。

なんでユウリばっかりこんな目に合わなきゃいけない?

「ふざけるな…どこに行けばユウリに会える?」

シュウは暗闇に入り込んだような錯覚を覚えた。やっとここまで来たのに、またユウリから目を離してしまった自分にいらだった。

「くそっ」とシュウがつぶやくと拳を握りしめて、泥の付いた壁を強く殴った。

でもその腕は痛いと感じることもなく、どういうわけか壁に入り込んだ。

「え?なんだこの壁、こんなに柔らかいわけないよな?」

もう一度、手を差し込むと泥の感触じゃなくて、まるで水の中みたいな感覚だった。
どこかに繋がっている、そう思うとますますそんな気がして、さらに深く手を突っ込んだ。
ユウリが消えた手掛かりがいきなり現れるものだから周りなんてどうでもよくなって、シュウはその先に何があるのか確かめようとした。

「冒険者の方、大きな声が聞こえましたが何かありましたか?」

「——っ!」

いきなり後ろからかかった声にシュウはびっくりして、壁だった場所に体重をかけると何も支えが無くなって、倒れるようにシュウの体は泥に吸い込まれてしまった。
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