エイデン~一度死んだ俺はもう一度世界を旅する~

咲夜

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ユウリはそこまで記憶をたどってから、今の状況にどうしようかとため息をついた。

自分はミノムシ状態で身動きは取れなくて、周りには人もいない。こっちに引っ張られたときに、何も言えなかったからシュウには居場所なんて特定できないだろうし、そもそも自分が自分の居場所もわからない。
ひとまずどうにかしようと思って、腕に力を入れて蓑虫の蓑をちぎってやった。

思ったよりも柔らかく包んでいたみたいであまり力を入れないで済んだ。だからユウリは軟だった蓑を自力でちぎれて自由になったのはもちろんよかったのだが、ギルドで見たアンジェルやシュウの筋肉をなぜか思い出してしまった。そこで思うのはやっぱり自分の筋肉の心配で、日ごろからかの程度のもので喜んでいるから筋肉がついていないんじゃないかとひとりで一瞬落ち込んだ。

(あーやめだ、めんどくせぇ———やっぱり、俺だって軟弱なわけじゃないよな…。あいつらの筋肉が隆々しいだけだよな?)

それでもやっぱり、ユウリは筋肉のほうが心配になって自分の筋肉を確認しようと思って視線を向けると、しっかり見えないくらいには暗かったことを思い出したのだった。
あたりは洞窟みたいで薄暗い。でもどこからか光が入っているのか完全に暗いわけじゃなくて、発狂しないで済みそうだ。
音のない空間にずっといると気が狂いそうだっていうし、そう考えるとマシな空間だ。

「あー、誰かいますかー?……いない、いないですよねー?」

一応確認のため大きな声で叫んでみる。叫んでから、「あ、もしかしたら悪いやつらがいたかもな」なんて思ったけど、叫んだあとだったのでしょうがないことにした。
あたりはぴちょん、ぴちょんっていう水の音だけで、人の話し声は聞こえてこない。

(—————ってことはだ、俺はやっぱりここに一人ってことだ。)

最近はずっとシュウと行動を共にしていたからか、なんだか誰も話さない空間というものに違和感を覚えた。洞窟特有の水の音とか風の通る音とか動物の通る音とか、何か聞こえているはずなのに、何も聞こえていない気がする。すべて、こんな風に思うのはシュウがうるさいからだ。あとであったらシュウにもう少し穏やかな旅にしてもらおう。そうでないとこの先また一人になった時に困る。
そう眉間にしわを寄せて、おなかをさすった。

ひとまず食べ物はあったかなと自分の荷物を確認した。自分の荷物ぐらい把握しておけよって思わなくもないが、最近はシュウがいろんなものを手渡してくるから自分ではあまり気にしていなかったのだ。
一応確認しながら受け取ってはいるが、不足があるかもしれない。
そこまで考えるとユウリは左手を45度くらいにあげて、指先に力を籠めるとお得意の空間魔法で空間にある鞄に手を突っ込んだ。

——冒険に出る時に重要なのは持ち物チェックだ。

それはユウリの両親がいたときに聞いたことだった。物心ついた時にはお父さんに付いて行って狩をしていたが、持ち物だけは何があっても確認しなきゃいけないと教え込まれた。父さんが言うには「母さんとけんかして家を追い出されたとしても食い物さえあればどうにかなることだってある」ってことらしい。ユウリははるか昔のそんな出来事を思い出しながら、荷物に手を突っ込みながら周りを探索することにした。ごつごつした岩の間やら、上から落ちてくる水滴やらそこらへんに生えているコケとかそんなものもここでは役に立つことがある。

「ん-、困らないくらいにはあるか。問題ねーな」

一般的な生活魔法をよく使うけれど、特に剣で生活するユウリにとってお気に入りはこの魔法かもしれない。自分の持ち物はすべてそこに投げ込めばいいし鞄なんぞ持つ必要がない。その中から茶色い麻のような素材でできた大きな袋を取り出すと中には大量の食糧が詰め込まれていて、安堵した。

世界の全員が出来るわけではないが、ほとんどの人は便利な魔法が使える。魔法にもさまざまな種類があって、使える魔法つまり得意な魔法は相性の問題できまる。シュウがいとも簡単に植物から力を借りるように、ユウリもいくつか得意な魔法があり、中でも得意なのが空間魔法だった。なんでかというと単純によく使うから得意だと思っているだけなのだが。

空間魔法は直接別空間に接する必要があるから高難易の魔法であるが、ダンジョンに潜ることの多い人は獲得しようとする人のほうが多い。ユウリもお父さんの真似をしたらできたというそれだけの事。ただ、やはり向き不向きはあるので空間魔法を施した鞄、拡大鞄を使う人が多いのも確かだった。

そのうえ空間魔法の空間の大きさは人によって違う。空間を開けても指を一本突っ込める程度の空間な人もいるし、王宮が入るくらいの大きな空間を保持する人もいるらしい。この前話しかけてきた少年に教えたら空間は開くことが出来たのに、本当に小さいパン一つくらいしか入らなくて驚いた。

ユウリの空間の大きさはどちらかというと後者の方に近くて、王宮は見たことないけど、物を入れるのに困ったことがない。気にすることは自分の獲物が持って帰れるかどうかだけ、つまり自分たちの荷物が入ればそれでいいというスタンスだ。

(これからどうすっかな、…シュウいねぇし一人で歩き回って文句言われないかな。食いもんはあったし…食い物?——そういえばなんか食い物関連で今さっき何か思っていたことがあった気がするんだけど…)

その時どこからともなく地鳴りのような音が鳴り響いた。
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