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まかろんたわー

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第一章・美麺を制する者、世界を制す

焦土作戦について

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カルメンと俺は、城に帰ってから書庫で勤勉に努めた。
城の地下にある書庫には、何百万冊もの蔵書が置かれている。
本棚で眠らされた無数の書物達は、封印された獣のようだった…。
この中から、様々な情報を得、判断力と知識力を養うのが俺の仕事だ。

「やはり、補給部隊を絶たれて失敗した戦が過去にいくつもあるな」

分厚い本のページを開く俺。

「ええ」

頷くカルメンも勉学に励んでいる。

「例えば城から出られないようにして餓死させる作戦などは、城に秘密の脱出口を作る事で突破できるな。考えてみるか………」

「なるほど。上空から逃げるという方法もありますね」

「上空は空中部隊がいるから無理だろ。それより、地底にひそかに脱出路を作るか、転移魔法を使用した方がいい」

俺は戦略書を閉じた。

「しかし、敵が地底の脱出口の作戦を見抜いていたらどうします?」

「なに、その場合は、夜間に忍を使い脱出策を練るしかないな」

ちなみに、我が軍隊では基本的に諜報活動は昼間が苦手で夜間が得意な半吸血鬼達にやらせている。

もちろん、諜報活動が夜間になるとは限らない。また、半吸血鬼は弱点も多いので純粋な吸血鬼の諜報部隊もいる。

「しかし、補給戦の中でも焦土作戦は民を苦しめるうえに、広い国土と独裁的な政治家でなければできぬ作戦だな…まあ我が国もできぬことはないが、それだけはなんとしても避けたい」

「焦土作戦?」
質問するカルメン。

「ああ、焦土作戦とは敵に攻め込まれた防御側が敵軍の現地での食糧などの補給を絶ち、飢え苦しませる作戦のことだ」

「はい?どういうこと?」

「例えば敵国に侵略する攻撃軍は、敵国の国土及び国民が持つ財産を略奪し利用しようとするだろう?食料や水の確保は勿論、都市や建物などの休憩所、森林伐採に軍以外の人材、燃料の補給、輸送の拠点の配置、などな。しかし、これらが利用できなければ、敵の進軍は怠るわけだ。つまり焦土作戦とは…」

「自分で自分の国をあらかじめ焼き払い、破壊しておく作戦ですか?」

カルメンは目を見張った。

「ああ、自国のインフラを破壊することで、敵の進路を絶つ作戦だが、欠点リスクも多大だな。まず敵を消耗させる時間稼ぎのためには、広い国土がいる。そして、民の気持ちを考えぬ独裁的な強権がいる。なにより、焦土作戦は自国にとって多大なロスだ。焦土作戦の最大の弱点は手抜きをすると敗北する事だからな。焼き払い損ねた街があったら一瞬で敵の本拠地に変わる。徹底的に自分の国の領土を焼き払わねばならない」

「まあ、かなり自己犠牲的な作戦ですね」

「ああ、だから私はあまり戦争はしたくないんだよ。せっかくの国をボロボロにしたくないのでね」

俺は小さな顎に手を添えた。

「しかし戦闘で補給がかなり重要である事がわかりました。やはり補給を巡る兵糧攻めが厄介なのですね」

「ああ、だから平時の内に食料開発を進めた方がいいのだ。とりあえず、遠い国に長い補給線を敷くのはやめたほうがいいな。食糧が重ければ重いほど、軍の負担は増える。勝ち続ければそれでよいというわけにもいかない。進軍はほどほどにしておいた方がよいな」

「あまり、南端にいくのはよろしくないという事ですね」 

「ああ、という事は私が国の最大の難敵は…」

「プルプルンという事でございますかね、軍事的には」

カルメンが言った。

「ああ、北の大地の民は南の暑さに向いていないからな。それにあそこはジャングルという迷宮が待ち構えている。もしプルプルンと戦争になった場合、なんとかしてそこを突破する手段を探さねばな」

「プルプルンは国土も広いですからね。なにせ、島が密集した広大な領海を持つ国だから、船を破壊されたらひとたまりもないですし、焦土作戦を使われたら困りますね」

「まあ、あの国が焦土作戦を使用している間に
、自滅するくらいの量の食糧なら我が国にたっぷりあるが」

「フェニックスヌードルだけで自滅しそうですね」

「ふふふ」

カルメンは笑った。

「嘲笑っている場合ではないぞ。血液の補給という難点が残っている」

俺は真摯な顔で言った。

「たしかに、食糧よりそれを絶たれることの方が我々軍には致命的ですよ」

カルメンが冷静になった。

「だから、まずプルプルンと戦争をするには、先にカエルレウスとビャンコを叩かないといけないな…二国には悪いが。それか、あるいは二国と共同戦線を張るか」

「なるほど。できるだけ他の近い国を支配下か協力相手においておき、補給地を確保する作戦ですか」

カルメンが頷いた。

「まあ。カエルレウスとビャンコなら制圧もあっという間だろうな。協力も、してくれるだろう」

「なんとか、カエルレウスとビャンコと戦う前にプルプルンと戦うのだけは避けたいですね」

「そもそも戦争自体を避けたいんだがな、私は。カエルレウスもビャンコもプルプルンも、王達はともかく、国民性に富んだ国だから、傘下にすることで国の風土を乱したくはない」

「あなたが恐らくあの三国を支配しても、風土は乱れませんよ。むしろ、発展致します」

「それが、世の中には弱者に勝つと急に威張りだすバカがうようよいるからな。自省せねばならん」

「謙虚な姿勢、お褒め致します」

「王らしく振る舞うのと威張るのとは違うからな。部下にヘコヘコしすぎるのもあれだが、そのバランスが難しいな」

俺は困った顔をした。

「そうですね」

カルメンが兵法の本を閉じた。

「とりあえず、今は三国は弱者でも、いつ豹変するかわからぬからな。軍事力を徹底的に強化せねば」

「ええ」

「徴兵に対する不満もあるが、軍事力すなわち戦争と捉えるのも些か短絡的だと思うのだよ」

「刃物を持つすなわち殺人ではありませんからね」
 
「しかし、もし万が一三国が纏めて襲ってきたら、まあ向こうからこちらの国に来てくれるので、南端に行く必要がなく制圧しやすいんだがな」

そう戯言のように言って、銀の束の髪を弄ぶアデリナであった。

「見も蓋もないこと、言わないでくださいよ」

げんなりするカルメン。

「そういう事態も避けたいな」

「ええ」
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