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第二章 こうして物語はこうしてゆっくりとでも確実に動いていく?
5 物語の強制力なんかには負けない??? 天音Side Ⅲ
しおりを挟む「……っチッ、――――あ、ま、まあドリゼラお義姉様っ、態々この様な場所にどうしてっっ!?」
ん、んんっっ⁉
ちょ、ちょっと今貴女舌打ち……って、どこからどう見ても完璧な淑女のエラが舌打ち……っていやいや今はそんな事はどうでもいいっっ。
ああそれよりもよっっ。
何故こんな地下の、然も使用人しかいないだろう場所にどうして貴女が――――っっ!?
なんで行き成りこんな展開どうになっているのよっっ!!
「――――エラっ、どうして貴女が地下の厨房にいるのっっ。そして何故っ、その様な姿をしているのっっ!!」
そう、俄かには信じられないし当然信じたくもない!!
何故なら目の前にいるエラの姿は昨日までのキラキラしい装飾品を沢山、うんそれはもうテンコ盛りにね。
確かにエラの好むドレスは何れも派手で豪華ないずモノだった筈なのに、まあ言い換えれば物語の様な清らかなイメージのヒロインにはちょっとばかりそぐわないかな……とは思ってはいたけれど、でも今の姿は一体何なのっっ⁉
うん、今目の前にいるのは常のエラならば到底身に付けない、ううんお嬢様のエラが断じて身に付けない衣装。
それは使用人が着る黒いお仕着せ。
然も見た目でもわかるくらいかなりのボロいもの。
屋敷内にいるだろう使用人達でさえ敬遠しそうなくらいにボロいし薄汚れている。
多分暫くの間物置にでも放り込まれていたんだろうと想像に難くないもの。
それにしても――――っっ!!
「ねぇ何故エラはそのような姿でどうしてここにいるの? もしかして何か新しいお遊び……なのかな?」
かなり無理やり感があるのは否めない。
まあこれはあくまでも私の願望で、もしそうだったのであればどんなにか良いだろうと一瞬だけ現実逃避した結果が言葉として出たもの。
でも譬え百歩なんて可愛らしいものでなく千歩引いてお遊びだったとしてもだっ、流石にこれは納得出来ないけれどね。
そしてなるべくならば私は現実を直視したくは――――ない。
「あ、そうそうエラは知らない? 朝起きたら私のアメリアはおろか他の使用人達も見かけないの。おまけに庭師もよ、彼まで見かけないなんて今までその様な事はなかったのに、何か知っているエラ?」
私はゆっくりとエラへ近づきながら当たり障りのないって実際そうでもないのだけれども、何とな~く真実を知っていそうな彼女へ問い掛ける。
勿論優しい口調でよ。
そして周りをゆっくりと見回していく。
床にはお皿らしいモノが割れただろう破片が周囲に沢山散らばっていた。
うん、これはきっとお皿が一枚だけ割れたんじゃあないよね。
最低でも三枚以上は割れているのだろう。
その証拠に大小様々な破片が沢山散らばっていた。
これは早急に片づけなければいけない。
何故ならエラも私も下手をすればガラスで足を切ってしまうものね。
それから調理台には乱切り?
いやいやそうじゃないっっ。
う~んある意味乱切りなのかもしれないけれど、色んな野菜やお肉が大小様々、はっきり言って一つも同じ形を有さない物体が、広い調理台をしっかりと占拠しているっっ。
果たしてこれは一体何を作る予定なのだろう。
流石の私にも全く理解出来ない。
次に流し台を見れば何でこんな状態になるのかさえ最早不明だ。
何に汚れているのかはわからないけれど、兎に角汚れものが山済みである。
ジェ○ガじゃあないけれど、一つ間違えばバランスを崩して色々なモノが壊れるのは必至だ。
そしてこの状態を見てわかった事がある。
これは絶対に使用人が成したものではない。
うん間違いなくっ、絶対に目の前にいるエラ本人のなせる業なのだろう。
でも何故?
目の前のエラは何か言いたげな様子だけれど、でも何故か何も答えようとはしない。
「ねぇエラ、何も私は怒っている訳じゃあないの。ただ理由が――――っっ!?」
尚も必死に私がエラへ問い掛けると背後より階段を降りてくるだろう人の気配を感じて……。
「いい加減になさいドリゼラ、この場所は貴女に相応しく等ないわ。貴女は将来を約束された私の愛しい娘なのよ。ええそこにいる汚らわしい娘とは違います。さあ私と共にお部屋へ戻りましょうドリゼラ」
そう冷たい口調と共にカツンカツンとヒールを鳴らして優雅に階段を下りてきたのは、私としては受け入れ難い人物の登場であった。
「え、な、何を……何を仰っているのですお母様っっ。エラはお母様の義娘でしょう? それにエラは私の義妹だわっっ。昨日の夜まで何時もと変らなかったのにっ、何故っ、どうしてその様な事をっっ!?」
「余り困らせないで頂戴ドリゼラ」
気怠げに物を言うお母様は何処か何時もと違う雰囲気を纏っていた。
何がどうと言うモノなのか判然とはしない。
ただ分かった事はお母様の真冬の夜空を思わせる美しいダークブルーの瞳が、何時もより一層昏いなと感じてしまった。
「私にとっての娘は愛する貴女とアナスタシアだけ、それ以外はいないのです。さあ何を愚図愚図しているのですっっ。お前は今日より使用人なのよっ、さっさと仕事おし!!」
「は、はいお義母様」
えっ、ちょっ、ちょっと待ってよ!!
一体何が起こっていると言うか、どうしてこんなどう展開にって言うのかまあこれが王道のストーリーなのだけれどもだっっ。
可哀想にエラはお母様の怒声に心底怯えきっているのだろう。
力なく弱々しい声で返事をしているし、身体は恐怖の余り小刻みに震えている!!
なのにそんな可哀想なエラをお母様は更に追い詰めるっっ。
「お義母様? ふ、何時まで義娘の心算なのかしら? 本当にお前はわかっていないのね。いいでしょうこの際はっきり言います。私の事はお義母様と呼ぶ事を許しません!! お前にそう呼ばれると考えただけで虫唾が走るわっっ」
「で、でも……」
「エラ、今日より……いいえたった今より私の事は奥様、いえトレメイン夫人とお呼びなさい。いいですね、さあ返事は!!」
更にお母様はエラを恫喝して追い詰める。
止めてっ、止めて頂戴お母様っっ。
お母様は本当は優しい御方でしょう?
それに昨夜までずっと亡くなられたお義父様を想ってお部屋に籠っていらしたでしょう!!
なのにどうして!!
駄目っ、このままじゃあ絶対駄目よ!!
こんな事って許される事じゃあない!!
エラももっと何時も通り勝気な性格を前面に出してお母様へ何とか言い返してっ、お願いだから――――っっ!!
「は……い、トレメイン夫人」
エラああぁぁぁ……っっ!?
私は目の前が真っ暗になる。
これが物語の強制力というものなの?
本当にどんなに抵抗しようとしても、未来はもう決まってしまっているの???
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