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第一部 第四章 現在
2 昼食を一緒に ラファエル&フィオ視点
しおりを挟むラファエルは執務室にて普段よりも倍速で執務をこなしている。
長多忙を極める彼にとってエヴァとの昼食時間は、今ささやかな楽しみとなっていた。
ラファエル視点
2年前――――あの日俺が襲撃されチャーリーの機転で誰にも知られずにマックスの所で養生する事になり、俺はあの姫と再会し、彼女が自分の妃だと知った時は流石に慌てた。
10年前に初めて出会った頃の彼女の顔ははっきり言ってうろだ。
そして再開した時表情にこそ出してはいなかったが、女とは7年も経てばあの様に別人――――否違うな、あの印象に残っていた赤毛交じりの金色の髪も煌めくエメラルドグリーンの澄んだ大きな瞳や白磁の様に透き通る様な白い肌は、あの頃と変わらないというか更に輝きが増したな。
そして10年前には恐らくなかったであろうくるくるとよく変わる表情や仕草、そしてまだ16歳だというのに仕事もそつなくこなし、その姿を目で追っているだけで心が妙に温かくなる。
しかし最も驚いたのは王女だというのに料理の腕が王宮の料理長よりも上だったのだ。
最初はあのアナベルが作ったモノを出している――――それだけでも驚きものだが、実際昼食を共にする様になってわかった事は、並んでいる料理全て姫が自ら作っているというのだ。
彼女はそっとはにかみながら「簡単なモノしか作れないのですけれどね」と言う仕草が堪らなく可愛いと素直に思えた。
それに用意されたモノはそんなに簡単なモノでもなかったからな。
俺に妹がいればこんなモノなのかとつい考えてしまう。
確かに可愛くて護りたい存在だ。
だから傷が癒えた後も政務を遣り繰りして週に一度はこの診療所で姫に逢い、そして3人で昼食を共にしている。
然しあれから2年――――最近になってやや困った事になってきた。
姫も今年で18歳となり身体つきも女性らしいまろみが帯びてきており、それに加え細く括れた腰に簡素なドレスからもわかるきゅっと締まった小さな尻。
そしてあの頃にはなかった二つの双丘の盛り上がるその存在全てが今は何とも悩ましい。
フィオ視点
最後の患者さん―――スティアおばさんを見送ってから、私は診療所内の掃除と手拭いや包帯等消毒してあったモノを洗ってから中庭に干していく。
そしてマックスがカルテの整理をしている間に私はダイニングで昼食の用意を今日は3人分っと。
本当は私とマックスの分だけでいいのだけれども、2年前怪我負って入院していたエルさんがその時甚く私の料理を気に入ってくれたとかで、マックスの提案により週に一度水曜日のお昼はこうして3人分食事を用意する事になったの。
でもね、ここだけの話、最初はエルさんがとても怖かった。
何故って初対面で行き成り部屋に入った瞬間何処の誰が羽交い絞めなんてする人がいるのかって思ったのだもの。
それに何時も部屋に入ると難しい顔をして書簡を読んでいるし、彼って一体何者なのだろうと思い巡らせてみてもきっと敵でないのは確かだと思う。
あのマックスが礼儀正しく彼に接しているところからして、もしかすると役人関係なのかもしれないわね。
でも役人だとしたら私の正体……いえ、見事に忘れられている人間なんてもう誰にもわかりっこない。
心配するだけ無駄だわ。
だけどこのエルさんは本当によく食べる男性。
年齢もマックスと一緒くらいで私よりも遙かに年上なのはわかるし顔の作りも悪くない。
寧ろ女性が放っておかないくらい整っているイケメンという部類に入るのでしょうね。
銀色の流れる髪に深い湖の様な蒼い瞳が何とも印象的。
一度見たら忘れられないという感じに見受けられるけれど、私にとってはただの元患者さんでありおじさん……ん~おじお兄さんというところかしら???
それとも週1回一緒にお食事をするお友達?
何にしてもこの診療所にいるだけのお付き合い。
それに忘れはしない、前回私はこの国を出る事に失敗してしまったのだから今度の失敗は許されないのっっ!!
この国へ来て10年。
そうやっと目標の年月をクリアしたのよっっ!!
蓄えもそれなりに出来たわっっ。
後はタイミングを狙ってアナベルと一緒に第三国へ脱出し、そして彼女をライアーンへ帰して私は今度こそ私の為の人生を送るのよっっ!!
そう、今度こそ私だけを愛してくれる素敵な男性と恋をするのっっ。
きっと白馬に乗った素敵な方が私を探して見つけてくれるわよね。
そうねきっと……私がいなくなれば陛下もきっと遠慮なく新しい王妃を娶る事も出来るというもの。
顔さえ知らない夫なんて私にはいらない。
私自身覚えていないというのも問題かもしれないけれども、陛下もきっと私の事なんて覚えていらっしゃらないでしょうから……ね。
私がこの国を出れば全て問題ないのだわ。
さぁ早くお料理を並べなくてはっ!!
今日のお昼はスイーツ鴨のオレンジソースに朝市場で新鮮な魚が手に入ったからカルパッチョをサラダ風にアレンジして、人参のポタージュに自家製のクロワッサンを温めて……と、デザートは苺のカスタードパイ。
我ながらお料理の腕は本当に上達したわね。
これならば何処へ行ってもちゃんと暮らしていけるわ。
う~ん、後何回こうして3人でお食事会が出来るのでしょうね。
私が出て行っても男性2人がちゃんと食事をしてくれたらいいのだけれど、それだけが少し心配だわ。
ふふ、何年かしてこの診療所へ訪れた時、マックスとエルさんの干乾びたミイラになっている姿なんて見たくはないですものね。
そうならない為にもおじ様達、ちゃんと早く結婚して家庭を持って下さいね。
応援ありがとうございます!
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