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第一章  出会い?

最悪の出会い

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 声を掛けられた方へ…アンはゆっくりと振り向いた。



 アンはその男の顔に見覚えがあった。



 彼の名はウィリアム・リチャード・フェンリーガ公爵…このレクストン王国でも屈指の名家だ。



 その容姿は…きらめく金色の髪に青灰色ブルーグレイの瞳をした…整った顔立ちで身体もすらりとした細身だが、騎士でもある彼は胸や腕等必要な部分には筋肉も程良く付いている。



 決して軟弱そうでない体型だ。



 そして彼は所謂いわゆるイケメンの部類…しかも極上の。

 

 彼はイケメンで加えて人付き合いも良く…特に多くの女性と浮名うきなを流している事も有名な話だ。


 
 仕事は出来ても…結婚もせず、男性貴族のたしなみと言われればそうかもしれないが、アンにとっては苦手なタイプだ。


 
 だから名前と顔は知っている――――ただそれだけ。




 黒いタキシードを見事に着こなし…胸に白い薔薇を差していた。



 この時間…だとすれば夜会へ行く途中だったのであろう。



 こんな嫌味を言われるならば…馬車等止めずにそのまま王宮へ行けばいいものを…とアンは思ってしまった。



 そして向こうもアンが何者か…その姿を見てわかった様…だ。



「殿下…馬車でお送りしましょう」



 そう言って自分のマントをはずし…紳士らしくそのマントを彼女へと掛けようとする。




 だが…彼女はそれを断った。



「お気持ちは有り難いが私は歩いてきたのではない、彼女が私を王宮まで連れて行ってくれますわ」



 そう言って…本当は濡れねずみ状態で…身体も冷えてガチガチと歯が音を立てるのを必死に抑えていたのだ。


 そんなアンの前に彼女がくわえてきた上着に袖を通し…そのまま何も言わず駆け去って行った。



 あんな女ったらしの公爵なんかに触れて等欲しくはないっっ!!




 しかも6歳も年下なのに…なに、あの余裕な表情かおはっっ!!



 本当に無礼きわまりないと言ったらないわっっ!!



 本当に腹の立つっっ!!



 アンは怒りのあまり寒さも忘れてそのまま王宮まで駆けて行った。




「アン様っっ!! 如何いかがなされたのですか…その様な御姿でっっ!!」



 帰って来て最初に驚かれたのは馬房長ばぼうちょうのアイザックだ。



 その次に呼び出された侍女のクレアは驚いたのもさる事ながら、直ぐに持ってきたガウンで、アンの身体を包み部屋へと連れていく。



 夜会の為に用意していたお風呂が丁度良く…芯から冷えた彼女の身体を温めたのだった。




 クレアには事の次第を…公爵の事は端折はしょったが、それ以外は説明した。



 変なやからに襲われたとか噂にならない為にも…結婚は絶望的だが、それでもアンは未婚の女性なのだ。



 噂には取り分け注意しなくてははならない。



 お風呂からあがって身体も温まってからは、姪のルーレシアとの約束通り夜会の準備をしている。



 本当ならば自分も最後はおぼれかけたのだから…今夜はゆっくりと寝ていたかったのだが、可愛い姪の晴れ姿を見ない訳にはいかない。



 落ち着いたモスグリーンのドレスに身を包み…下品にならない程度に開いたえりぐりはレースと真珠で縁取ふちどられ、彼女のたわわな白桃の様な胸の谷間がきっと皆の目を引いてしまいそうだ。



 そしてその胸と耳にはエメラルドの装飾アクセサリーほどこし…結い上げた頭頂部とうちょうぶにはダイヤモンドとエメラルドが散りばめられた装飾品ティアラがつけられた。



 仕度したくが終わった彼女は、やや重い足取りで広間へとおもむいたのだった。
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