4 / 20
第一章 出会い?
最悪の出会い
しおりを挟む声を掛けられた方へ…アンはゆっくりと振り向いた。
アンはその男の顔に見覚えがあった。
彼の名はウィリアム・リチャード・フェンリーガ公爵…このレクストン王国でも屈指の名家だ。
その容姿は…煌めく金色の髪に青灰色の瞳をした…整った顔立ちで身体もすらりとした細身だが、騎士でもある彼は胸や腕等必要な部分には筋肉も程良く付いている。
決して軟弱そうでない体型だ。
そして彼は所謂イケメンの部類…しかも極上の。
彼はイケメンで加えて人付き合いも良く…特に多くの女性と浮名を流している事も有名な話だ。
仕事は出来ても…結婚もせず、男性貴族の嗜みと言われればそうかもしれないが、アンにとっては苦手なタイプだ。
だから名前と顔は知っている――――ただそれだけ。
黒いタキシードを見事に着こなし…胸に白い薔薇を差していた。
この時間…だとすれば夜会へ行く途中だったのであろう。
こんな嫌味を言われるならば…馬車等止めずにそのまま王宮へ行けばいいものを…とアンは思ってしまった。
そして向こうもアンが何者か…その姿を見てわかった様…だ。
「殿下…馬車でお送りしましょう」
そう言って自分のマントを外し…紳士らしくそのマントを彼女へと掛けようとする。
だが…彼女はそれを断った。
「お気持ちは有り難いが私は歩いてきたのではない、彼女が私を王宮まで連れて行ってくれますわ」
そう言って…本当は濡れ鼠状態で…身体も冷えてガチガチと歯が音を立てるのを必死に抑えていたのだ。
そんなアンの前に彼女が銜えてきた上着に袖を通し…そのまま何も言わず駆け去って行った。
あんな女ったらしの公爵なんかに触れて等欲しくはないっっ!!
しかも6歳も年下なのに…なに、あの余裕な表情はっっ!!
本当に無礼極まりないと言ったらないわっっ!!
本当に腹の立つっっ!!
アンは怒りのあまり寒さも忘れてそのまま王宮まで駆けて行った。
「アン様っっ!! 如何なされたのですか…その様な御姿でっっ!!」
帰って来て最初に驚かれたのは馬房長のアイザックだ。
その次に呼び出された侍女のクレアは驚いたのもさる事ながら、直ぐに持ってきたガウンで、アンの身体を包み部屋へと連れていく。
夜会の為に用意していたお風呂が丁度良く…芯から冷えた彼女の身体を温めたのだった。
クレアには事の次第を…公爵の事は端折ったが、それ以外は説明した。
変な輩に襲われたとか噂にならない為にも…結婚は絶望的だが、それでもアンは未婚の女性なのだ。
噂には取り分け注意しなくてははならない。
お風呂からあがって身体も温まってからは、姪のルーレシアとの約束通り夜会の準備をしている。
本当ならば自分も最後は溺れかけたのだから…今夜はゆっくりと寝ていたかったのだが、可愛い姪の晴れ姿を見ない訳にはいかない。
落ち着いたモスグリーンのドレスに身を包み…下品にならない程度に開いた襟ぐりはレースと真珠で縁取られ、彼女のたわわな白桃の様な胸の谷間がきっと皆の目を引いてしまいそうだ。
そしてその胸と耳にはエメラルドの装飾を施し…結い上げた頭頂部にはダイヤモンドとエメラルドが散りばめられた装飾品がつけられた。
仕度が終わった彼女は、やや重い足取りで広間へと赴いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。
四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」
突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる