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第二章 ただ今契約履行中
20 一時の逢瀬???
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「さぁ何時まで不貞腐れておられるのです、申し上げた筈ですよ陛下がお呼びだと……」
「あ、ええそうね」
茉莉花の横で控えているのは萌黄色の髪に人参色の瞳をした長身痩躯のイケメンだけれど、飄々と掴みどころのないちょっとチャラい感じのお兄ちゃん。
だが彼はただのチャラいお兄ちゃんではないらしい。
そうセオさんはヴァルの側近なのだけれど、この実に軽そ~に見える人物が、この国、いや恐らくこの世界でも一、ニを争うくらいの優秀な頭脳の持ち主だとか。
本当かな、ちょっと疑ってみたりして……。
そんな彼は肉体労働には向かず専らその優秀すぎる頭の中でお仕事をしているらしい。
当然その立派な頭脳は先程の宰相デンホルムにも一目置かれ、ヴァルの側近でありながら宰相補佐もこなしつつ宰相側の情報を仕入れてるのがセオさんの御役目。
「もっと早く助けて下さい!!」
「あれ? 凄く楽しそうに見えたのだけれどね。俺の見間違いかな?」
「あ゛あ゛〰〰〰〰一回死んでみます?」
「駄目駄目、淑女がそんな威嚇する様な眼つきで男を睨むものじゃあないよ」
「〰〰〰〰だったら何時決行するんですかっっ。早くしてくれないと私が元のふぁがもごふぉご……っっ!?」
セオさんはやや焦った様に私の口を自身の大きな手で塞いできた。
「姫さんそれ以上は喋っちゃあ駄目。何処で誰が聞いているともわからないからね。もしこれ以上ヤバい事を口にすれば無理やり俺の唇で、姫さんの可愛らし~い唇を塞いじゃうよ」
「ふぉごふごふご」
「――――で、この手を放した瞬間に、大声で叫ぶのも禁止。わかった?」
「ふぉごふぉご」
そうして漸く私はセオさんの大きな手の戒めより解放された。
「でも姫さんも厄介な相手に好かれたものだねぇ。まあ万が一俺が姫さんの可愛~い唇を奪えば、俺はある意味両方より形がなくなるまで抹殺されるんだろうな。あー怖い怖い」
「え、それってどういう……」
「茉莉花っ、やっと帰って来てくれたな。急に傍よりいなくなって心配した」
別の控えの間にいたヴァルの許へ連れていかれた茉莉花は、一瞬息が出来ないくらい思いっきり抱きしめられる。
ぎし……って彼女の骨がその驚異的な力で以って軋み、悲鳴を上げているかとも思われるくらい力強い両の腕で身体を拘束されると同時に茉莉花は、ぷいっとそんな台詞を吐くヴァルより視線を逸らす。
傍よりいなくなって……って先にいなくなったのは、貴方でしょヴァル。
そうして私ではなくエロイーズを傍に侍らせていたのは誰?
まるで……最近何時も私が貴方を置いて宰相と親しくしている様な言われ方って一体どうなのよっっ。
私は一度も宰相を誘ってなんかいないしそもそも……。
「私と共にいる時に何を考えているのかな?」
「何をってっっ」
「私の傍にいる時に他の事等考えなくともよい。それとも寝室で何も考えさせない様にすればいいのかな茉莉花」
「ちょっ、一体何を言ってっっ!?」
二人きりって、なんでここで寝室と言うワードが出てくるのっっ。
ましてや私とヴァルは契約上の婚約者であって、お互いを想いあって等いな……い筈。
然もここは単なる控室であって、直ぐ隣は舞踏会場で多くの人間がいると言うのに、一体何を言い出すのだと言わんばかりに茉莉花はヴァルを睨みつける。
そして行き成りの展開についていけない茉莉花は、赤面しつつもヴァルの檻の様な逞しい腕より逃れようと必死にもがく。
だがその檻はとても頑丈で、傀儡の王と揶揄されている割には見た目と違い程良く鍛えられ、引き締まった筋肉質な体躯なのだ。
そう、はっきり言って茉莉花の腕力では到底歯が立たない。
そんな茉莉花を愛おしげに見つめるヴァルの心情すら、まだ彼女は気付く気配はない。
多少異性として意識はされてはいると感じてはいるのだが、何故か捕まえようとすればする程腕の中にいる子猫はするりと逃げだしてしまう。
「ヴァル、そろそろ仕事に戻らないとな」
「あぁそうだな。名残惜しいが仕方がない。では行くかセオ。茉莉花、俺はまだやる事があるから先に休むといい。もし本当に寂しいのであれば深夜にでもそなたの部屋へ行って朝まで抱きしめてやるぞ」
男らしく朗らかに微笑みながら言うと、戒めを解いた直ぐ後に茉莉花の額へ口付けを落とす。
「きゃ、あ、あ、今何を〰〰〰〰っっ!?」
「辛い執務をこなす男へのエネルギー補充だな」
「ほ、補充なんていらないし、してあげないわよっっ!!」
「はは、我が聖女は実に冷たい」
「さっさと仕事へ行けっっ!!」
そうしてヴァルとセオは部屋を後にした。
ジョージー達が迎えに来るほんの少しの間、茉莉花の鼓動は益々高鳴ると同時に、ヴァルの柔らかな唇が触れた額がとんでもなく熱を持っていた。
いや額だけではない。
ヴァルに抱きしめられ、触れた部分より異常なまでの熱が感じられてしまう。
なんで、どうして……。
このまま私は一体どうなるのかな。
ちゃんと無事に日本へ帰る事が出来るのかな。
ヴァルに触れられて嬉しいと感じるなんて私は変……になったのかもしれない。
「あ、ええそうね」
茉莉花の横で控えているのは萌黄色の髪に人参色の瞳をした長身痩躯のイケメンだけれど、飄々と掴みどころのないちょっとチャラい感じのお兄ちゃん。
だが彼はただのチャラいお兄ちゃんではないらしい。
そうセオさんはヴァルの側近なのだけれど、この実に軽そ~に見える人物が、この国、いや恐らくこの世界でも一、ニを争うくらいの優秀な頭脳の持ち主だとか。
本当かな、ちょっと疑ってみたりして……。
そんな彼は肉体労働には向かず専らその優秀すぎる頭の中でお仕事をしているらしい。
当然その立派な頭脳は先程の宰相デンホルムにも一目置かれ、ヴァルの側近でありながら宰相補佐もこなしつつ宰相側の情報を仕入れてるのがセオさんの御役目。
「もっと早く助けて下さい!!」
「あれ? 凄く楽しそうに見えたのだけれどね。俺の見間違いかな?」
「あ゛あ゛〰〰〰〰一回死んでみます?」
「駄目駄目、淑女がそんな威嚇する様な眼つきで男を睨むものじゃあないよ」
「〰〰〰〰だったら何時決行するんですかっっ。早くしてくれないと私が元のふぁがもごふぉご……っっ!?」
セオさんはやや焦った様に私の口を自身の大きな手で塞いできた。
「姫さんそれ以上は喋っちゃあ駄目。何処で誰が聞いているともわからないからね。もしこれ以上ヤバい事を口にすれば無理やり俺の唇で、姫さんの可愛らし~い唇を塞いじゃうよ」
「ふぉごふごふご」
「――――で、この手を放した瞬間に、大声で叫ぶのも禁止。わかった?」
「ふぉごふぉご」
そうして漸く私はセオさんの大きな手の戒めより解放された。
「でも姫さんも厄介な相手に好かれたものだねぇ。まあ万が一俺が姫さんの可愛~い唇を奪えば、俺はある意味両方より形がなくなるまで抹殺されるんだろうな。あー怖い怖い」
「え、それってどういう……」
「茉莉花っ、やっと帰って来てくれたな。急に傍よりいなくなって心配した」
別の控えの間にいたヴァルの許へ連れていかれた茉莉花は、一瞬息が出来ないくらい思いっきり抱きしめられる。
ぎし……って彼女の骨がその驚異的な力で以って軋み、悲鳴を上げているかとも思われるくらい力強い両の腕で身体を拘束されると同時に茉莉花は、ぷいっとそんな台詞を吐くヴァルより視線を逸らす。
傍よりいなくなって……って先にいなくなったのは、貴方でしょヴァル。
そうして私ではなくエロイーズを傍に侍らせていたのは誰?
まるで……最近何時も私が貴方を置いて宰相と親しくしている様な言われ方って一体どうなのよっっ。
私は一度も宰相を誘ってなんかいないしそもそも……。
「私と共にいる時に何を考えているのかな?」
「何をってっっ」
「私の傍にいる時に他の事等考えなくともよい。それとも寝室で何も考えさせない様にすればいいのかな茉莉花」
「ちょっ、一体何を言ってっっ!?」
二人きりって、なんでここで寝室と言うワードが出てくるのっっ。
ましてや私とヴァルは契約上の婚約者であって、お互いを想いあって等いな……い筈。
然もここは単なる控室であって、直ぐ隣は舞踏会場で多くの人間がいると言うのに、一体何を言い出すのだと言わんばかりに茉莉花はヴァルを睨みつける。
そして行き成りの展開についていけない茉莉花は、赤面しつつもヴァルの檻の様な逞しい腕より逃れようと必死にもがく。
だがその檻はとても頑丈で、傀儡の王と揶揄されている割には見た目と違い程良く鍛えられ、引き締まった筋肉質な体躯なのだ。
そう、はっきり言って茉莉花の腕力では到底歯が立たない。
そんな茉莉花を愛おしげに見つめるヴァルの心情すら、まだ彼女は気付く気配はない。
多少異性として意識はされてはいると感じてはいるのだが、何故か捕まえようとすればする程腕の中にいる子猫はするりと逃げだしてしまう。
「ヴァル、そろそろ仕事に戻らないとな」
「あぁそうだな。名残惜しいが仕方がない。では行くかセオ。茉莉花、俺はまだやる事があるから先に休むといい。もし本当に寂しいのであれば深夜にでもそなたの部屋へ行って朝まで抱きしめてやるぞ」
男らしく朗らかに微笑みながら言うと、戒めを解いた直ぐ後に茉莉花の額へ口付けを落とす。
「きゃ、あ、あ、今何を〰〰〰〰っっ!?」
「辛い執務をこなす男へのエネルギー補充だな」
「ほ、補充なんていらないし、してあげないわよっっ!!」
「はは、我が聖女は実に冷たい」
「さっさと仕事へ行けっっ!!」
そうしてヴァルとセオは部屋を後にした。
ジョージー達が迎えに来るほんの少しの間、茉莉花の鼓動は益々高鳴ると同時に、ヴァルの柔らかな唇が触れた額がとんでもなく熱を持っていた。
いや額だけではない。
ヴァルに抱きしめられ、触れた部分より異常なまでの熱が感じられてしまう。
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このまま私は一体どうなるのかな。
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