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第三章 愛するが故に (仮)
1 聖女様だって悩むのです 茉莉花Side
しおりを挟む今は夜の九時過ぎ。
夕食も終え寝支度も済ませ、ジョージー達侍女軍団も自身達の身体を休める為に……とは言っても、必ず私室の隣にある控室には、常に三人の侍女が当番制で宿直をしてくれている。
だからと言って夜中に呼び出す事はない。
でもヴァルの私室ではきっと夜遅くに戻ってくるだろう主の世話をする為に、休む事もなくずっと静かに待っている筈。
本当に頭が下がる思いです。
元の世界で夜勤をしていたからこそ、寝ずの番と言うモノの辛さは十分過ぎる程理解が出来ると言うもの。
まぁ私の身の回りの事なんて正装をしない限り自分で出来る。
本当の事を言えば侍女さんなんて必要ないのだけれどね。
そうね、侍女としてでなく話し相手になって欲しいな。
女子会何てモノもしてみたいしね。
はぁ……それにしてもこの世界に呼ばれて七月も経っちゃった。
なんか長いようで短いもの。
ジョージー達を下がらせ、こうしてヴァルの帰りを待つまでの時間って何やら色んな事を考えてしまう。
見上げる夜空に輝くまんまるお月さまやそしてギラギラと照りつける太陽も、元の世界と寸分違わずこの世界にも存在する。
勿論満点に輝くお星様もね。
日本にいる頃と余り変わらない様で、でも全く違う異世界。
そもそもどうして私なんかが聖女として召喚されたのかな。
ヴァルは私だから召喚したと何度も言うけれど、はっきり言って美人でもないし思いっきり若くもない。
23歳と言えばこういう世界のお話の中の女性は、最早行き遅れ対象じゃない。
そう普通は15歳~18歳のピチピチのJKが対象でしょ。
なのに何故???
全く理解出来ないんだよなぁ、そこのところが……。
最初召喚された時はもう吃驚して、ずっと帰る事ばかりを考えていた。
ううん、今だってそう。
この結婚は飽くまでも契約。
お互いの願いを叶える為だけのもの。
なのに、なのにどうしてヴァルは毎夜必ず私を抱くのだろう。
おまけに避妊――――してないよね!!
最初こそ、いやいや今でも一度ヴァルに抱かれれば行為が終わって?
いやいやはっきり言って翌朝ですねー。
うん、しっかり朝になるまで私の脳内……全身の感覚やら色んなものが可笑しくなって一切使いものにならないっっ。
それに知らなかった事がまだある。
sexって想像以上に体力を奪われるんだ。
そう眠っていると言うのにも拘らず、何時も起きようとしても腕一本動かすのも辛いし、声はガラガラだし、腰が半端なく重だるい。
でも行為の最中は私は本当にヴァルに愛されているのだと思うくらい優しいのと同時にめっちゃ激しい。
ねぇどうなのだろう。
よくTVで言うじゃない。
男の人は愛がなくても女性を抱く事を出来るのだと。
ヴァルは、ヴァルはどうなのかな。
少しは私の事が好きなのかな。
それともやっぱり聖女だから?
この世界を護る為に、私の力を引きだす為だけに抱いているの?
最近の私は少し変だ。
そんな事を考えていると堪らなく悲しいし、心がぎゅっと締めつけられてしまう。
でも私はそんなヴァルを責められない。
だって私もまたヴァルの事を愛しているのか、好きなのかさえ分からないんだもん。
この悲しい気持ちと抱かれている時の多幸感は、ヴァルが好きだからそう思ってしまうの?
わからない。
本当に分かんないよ。
初夜で行き成り抱かれて、そのままずるずるとした関係を誰に相談すればいいの?
ジョージーやドロシー?
いーや彼女達だけでなく、第一他の人だってそんな事恥ずかしくって相談なんか出来ない。
ほんと、誰にも相談なんか出来ない。
ヴァルだって、ヴァルなんか絶対無理!!
それこそ笑って――――。
『決まっているじゃないか、俺と茉莉花は勿論契約関係だろ。お互い願いをかなえれば茉莉花は日本へ帰るからな。それまでお互い楽しめば問題ないだろう』
ぐふぁっっ!?
それはそれで何か凹む〰〰〰〰。
でもなんで凹むんだろう。
だって所詮は契約――――でしょ。
それとも私はヴァルの事が――――好き?
いやいやそれこそ考え過ぎでしょ。
だけど今、本当に方法が見つかれば私は喜んで帰るのかしら。
それとも……。
偽りとはいえヴァルと結婚する前の私だったら、きっと迷う事無く即行動に移していたわね。
なのにヴァルと結婚した今は……?
はぁ……一人になるとこうして悶々と考え込む。
私にはやらなければいけない事がまだまだあると言うのに。
そうね、凹む事は何時でも出来るし、それこそにほんへ帰ってから思い存分凹めばいい。
先ず私の力を十分に制御出来る様にしなければいけない。
それから世界を覆う結界の修復。
そしてヴァルのお母様、王太后陛下を何としても見つけ出さなければね。
最後に夜は是が非とも静かに寝かして欲しい……。
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