とりかえっこ

茶歩

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第5話『もどかしい』

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カフェでのバイトは、芽衣子からの紹介で働き出した。芽衣子は高一の時からそのカフェで働いていて、人手不足を補う為に声を掛けられたのが私だった。

可能な限りでいいよと言われた私のシフトは少ない。基本的には週に1日か2日くらい程。

制服のスカートはフリルが付いて可愛いデザインだけど、高校の制服よりも短い。そのうえ、店から支給された統一デザインのインナーはピッチリと肌を包むもの。
つまり、きっと‥可憐なスカートの奥に潜むバナナがバレる可能性があるのだ。


もしも万が一バレてしまった時の代償は計り知れない。変なお婆さんに魔法を掛けられただなんて、地球上の誰も信じてはくれないはず。

普段仮病なんてしない私も、さすがにあの『取り替えっこ』があった翌日のバイトは休ませてもらった。
芽衣子にだって絶対知られてはいけないし、お客さんにでさえバレてしまったもんならSNS等で拡散されるかもしれない。

そんなこんなで、取り替えっこから早3日。
私にはバナナがつきっぱなしのまま、今を迎えている。

時間が勝手に解決してくれるわけではなさそう。
取り替えっこの初日はあんなにもコロコロ下腹部が交換されてたのに、あの夜私にバナナがくっ付いて以降なにも変化なし。

かと言って高梨と会ったところで何かが変わるわけでもないだろうし、本当に嫌で嫌で仕方ないけど、もうお風呂やトイレは観念して受け入れるしかなかった。

あの魔女のお婆さんを1人で探しに行ったりしてみたけど、お婆さんも全く見つけられないし‥

高校最後の夏休み‥
満喫できないうえに、誰かと一緒に過ごすのも危険。(なんかこのバナナ、よくわからないタイミングで突然勃ったりしやがる)


昨日お母さんと一緒に再放送のアニメを見てて突然勃ったりした時には、もうこの世の終わりかと思った。


そして、そろそろ奴から電話が来るだろう。
パンパンに張った胸が、生理の始まりを知らせてる。

私ももう、正直限界だった。
簡単に大きくなるバナナを、時間をかけてなんとか鎮まらせていたこの数日。その場凌ぎのこの対処法も、もう効いてはくれないらしい。
思春期の精力凄まじすぎる。かれこれもう何時間も、バナナは凶悪なまま私の股で威張っている。おかげで部屋から出れやしない。


‥高梨、なんか1人でめっちゃやってる的なの公言してたけど‥
所謂オナ禁的な状態が続いてるせいなのかな‥?

とは言っても、その、なんていうか。
抜き方なんて分からないし、そもそもアイツのバナナでそんなこと本当に勘弁してほしいし、アイツには初日にそんなこと絶対しないって公言してるし、本当に本当に嫌なの。

それなのに布団の中でもぞもぞと、間接的に股に触れ始めてから私の手は止まってくれない。


もどかしい。
いや、こんなことしたくないのに。

熱を帯びたソレを、どうすれば気持ち良くなれるのか分からないソレを、気が付けば直に触れながら息を荒くしている始末。


もっと気持ち良くなりたい。
早くこのもどかしさから解放されたい。

脳内を過るのは、高梨とお風呂に入ったあの日の信じられない程の快感。

あれは、もしかしてそういうことだったんじゃ‥


そう思って、あの日の高梨の真似をして竿を握る手を上下に動かしてみる。


「‥っ」


声が溢れそうになった。これもあのお風呂の時と同じ‥
でも、私の手と高梨の手じゃ全然違う‥


ーーーコンコン


突然扉をノックされて、私の肩はぴくりと跳ねた。


「夢、起きてる?
お母さん野原さんとお茶してくるからね。
そのまま買い物してくるから少し遅くなるから」


「あ、う、うん!楽しんで!」


荒くなっていた息が、ほんの少し落ち着いてくれたのも束の間。
私の股に居座るソレは、早く解放させてくれと疼いて仕方がない。
頭の中もとうとうおかしくなってしまったようで、お風呂の時のいつもと違う色っぽい高梨の顔がフラッシュバックしてくるから泣けてくる。

なんでよりによってアイツを思い浮かべなきゃいけないのよ‥。
ってまぁアイツのバナナなんだから仕方ないかもしれないけどさぁ!


うぅ、先っぽがヌルヌルして気持ち悪いよもぅ‥!
なのに更なる刺激を求めて手はソレを弄り続ける。

でも、イケナイ。クーラーが効いている筈の室内で、私はやけに汗だくだった。


ーーー♪


突然の着信音に、またもや体が跳ねた。
そして、スマホの液晶に映った発信元の名前に私の心も思わず跳ねる。


「‥はい」


『‥俺だけど』


「‥うん」


息が荒くなっているのを悟られないように、なんとか声を出す。


『‥‥いまお前の家の前にいるんだけど。
出てこれる?』


「は?!」


なんで?!あ、あれか。
生理の対処法がわからないのかな?
もうきててもおかしくないし。


『‥俺の体やばくなったかも』


「え?」


『腹痛すぎるし気分悪いし最悪なんだよ‥』


「‥血はもう出た?」


『は?』


「あーいや、ほら。
生理近いって言ってたじゃん?多分それ生理のせいだから」


『‥‥‥』


高梨が言葉失ってるのウケる。


「ナプキン持ってる?」


『持ってるわけねぇだろ‥』


「だよね。付け方わかる?」


『わかんねーし、まず俺のパンツに付けられるのかよそれ‥
ていうか出てこいよ‥外でこんな話したくねぇよ』


随分とメンタルがやられてるようだ。
こんな潮らしい高梨レアすぎる。

股についたバナナも電話中になんとか落ち着いてくれたみたいだし、いま家にひとりだし‥


「いま鍵開けるよ」


そうして私はこの日、小学生の頃以来に高梨を家の中に入れた。
このあと凄まじいことが起きるだなんて想像もできないままに‥


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