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第20話
しおりを挟むレックスはチャーリーさんの屋敷の中で乳母に育てられていた。私たちがチャーリーさんに呼び出されて屋敷内に入るたび、突然母親から離されたレックスの泣き声がよく響いていた。
どうやら売り飛ばすのではなく、大切に育てあげて忠実な駒にしたいらしい。生後1歳に満たないレックスが、母親を忘れてチャーリーさんに懐いてしまう前に母親の元に返してあげたいな‥
私とギルさんはチャーリーさんの依頼を受けて、主にチャーリーさんの護衛としてチャーリーさんについて回ることが多かった。
酒場の裏で待機していたり、重役との取引を部屋の外で見守ったり、といった感じだ。
話はよく聞こえないし、この間のプテラスのように事件と直接関われているわけではない。よって、私たちは思っていたよりも新たな腐食に出会うことができなかった。
別邸の窓から庭を歩くチャーリーさんを見つけ、とりあえずチャーリーさんに向かって一時的な豪雨をお見舞いするという地味な嫌がらせを繰り返しながら、私は溜め息を吐いた。
「‥‥やめとけ、そろそろバレる」
「‥‥はい。‥ギルさん、今日は依頼されてないですよね」
「あぁ」
「暇ですね‥。それに進展もないし‥」
それに結局ギルさんの手持ちのお金に頼りながら生活してしまっていて、お金を稼ぐ術も見つけられていない。
思うように事がポンポンと進まずに、私は焦りを感じ始めていた。
「一応進展はある。酒場で密会してたのは大臣補佐だったし、この間の取引相手の重役は憲兵隊長だった」
「?!?!」
な、なにそれ?!何故そんなことが分かるの‥?!
だってギルさん、王宮から離れてお母様と護衛との3人で暮らしてたんだよね‥?!
「俺の身を案じた護衛が、よく王宮とかその近辺の状況を探ってたんだ。
だから名前は耳にしたことがあったし、俺の耳は地獄耳だからチャーリーとの会話もほんの少しだけ聞き取れた。結果相手が炙り出せたってわけ」
「凄いですね‥‥。
でもその情報が“進展”なんですか?」
「そりゃあな。
チャーリーはここらを牛耳って悪いことしてるマフィアだ。普通なら大臣補佐も憲兵隊長も関わりを持つわけがないだろ」
「あ‥政治も憲兵も腐ってるかもしれないですね」
「そうだな。賄賂渡して悠々と悪さをしてるんだろ」
「腐ってますねぇ‥」
「チャーリー、そろそろやっつけるか」
ギルさんが腕を組んで窓の外を見ながらそう言った。
討伐対象が他にも見つかったことだし、レックスを早く母親に返してあげたい。
私は力強く頷いて、決意を新たにした。
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