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第3話
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驚きすぎて息が止まったのはこの時が初めてだ。
だって、レベッカが‥
貴族に対して暴言を吐いた上に中指を‥
「‥‥お前」
貴族の男がプルプルと震えている。
そりゃあそうだろう。男はただ、瀕死の子猫を救ってくれと頭を下げただけなのだから。
レベッカの頭を左手で上から無理矢理押し込んで、必死に頭を下げた。どうか許してください、どうか‥。目をぎゅっと瞑って、ただただ謝り倒す。
「ご、ごめんなさいっ!!本当にごめんなさい!!」
貴族の男の隣にいた小太りの男が口を開いた。
「おい、リュウ。こいつらカルマート家のやつじゃねぇか?」
その言葉が聞こえた途端、私とレベッカは微かにピクリと反応した。
「魔法使いのくせに、こんなにオンボロな黒装束だぜ?
カルマート家のやつなら魔法が使えなくて当然だよ」
恐る恐る顔を上げる。男たちの冷たく突き刺さるような瞳。まるでドブネズミを嘲笑うかのような表情だ。
「‥あのカルマート家?
はーん、じゃあ俺は、そんなカルマート家のガキに死ねと言われて、中指まで立てられたわけだ」
レベッカが、また言い返しそうな表情な顔をしている。
私は、レベッカをキッと睨みつけて牽制してから、また貴族の男に頭を下げた。
「ほ、本当にごめんなさい‥‥
治りはしないと思いますが、本当に少しなら、元気にさせてあげれるかもしれません」
男たちの目は、冷たいままだ。
私の言葉に返事をすることもなく、やれるもんならやってみろ、という圧だけを掛けてくる。
震える手を子猫に向けて、必死に念じた。
お願い、お願い、お願い‥!元気になって‥!
「‥‥みゃう‥」
細々とした声が響いた。先程までただ浅い呼吸を繰り返していただけだったのに‥!
男たちの表情も、心なしかフワリと明るくなった。
リュウと呼ばれていた貴族の男が、子猫に顔を近付け、なんとも愛おしそうに頬ずりした。
「‥‥これに免じて許してやるよ‥。
病院までは頑張ってくれそうだ。じゃあな、カルマート」
男たちがぞろぞろとその場を去っていった。
‥よかった。助かった‥。
その場に立ち竦むレベッカの腕を取る。
「帰ろ、レベッカ」
「触んないでっ!」
「‥‥」
そっと手を離すと、レベッカは家の方向にスタスタと歩き出した。大人しく家に帰ってくれるみたいだ。良かった‥。
レベッカのさっきの行動は、カルマート家を破滅に追い込む一歩だった。でも、カルマート家自体がコンプレックスで、嫌で嫌で仕方がないレベッカの気持ちを考えると、わからなくもない。
社会から叩かれてる私たち。レベッカからしたら、その社会の中の貴族だとかお偉いさんだとか、そんなの知るもんかっていう感じなんだろう。
「‥レベッカ、もうあんなこと言っちゃダメだよ。
中指を立てるのもダメ」
「‥あの猫あと数分で死ぬよ」
「‥‥え?」
「やっぱりわかってなかったの?」
「‥‥」
「死相が出てた。あそこまでいってたら、中級魔法使いだって治せない。お姉ちゃんがしたのは、もがき苦しんでた猫がやっと楽になれるていう寸前に、もう一度もがき苦しむ時間を与えだけ。‥‥残酷だよ」
頭が真っ白になった。
なんとか言葉を出そうと思うけど、何も口から出てきてくれない。私の脳内は、言われてる言葉をなんとか理解しようとして、ただただレベッカの言葉が反復しているだけだった。
レベッカの言葉、
湧き上がる罪悪感、
でも、正直それ以上に脳内を占拠してるもの‥それは、驚きだ。
「レ、レベッカ‥
死相‥見えたの初めて?」
魔法使いの中でも、稀に特異体質として特殊な能力を持って生まれてくる人たちがいる。
死相が見えるのは、紛れもなくその特殊能力だ。
「え‥‥前から見えてたよ
虫とか鳥とかだけど」
「そ、それ‥特殊能力じゃん‥
レベッカすごいよ‥!」
「え?そうなの?
知らなかった」
レベッカは全く興味がなさそうだ。
特殊能力を持つ魔法使いは、その魔法使いとしての価値がグンと上がる。
まぁ私たちは、魔法使いとしての価値がまず無いから‥特殊能力があったところであまり意味がないかもしれないけど。
「‥私は子猫にも、
あの貴族の人にも悪いことしたんだね」
はぁ、とため息を吐く。
なんとか少しでも症状を回復させることができて嬉しかったのに。
「‥‥あの貴族の周りにいた男たちに、散々絡まれて本当嫌になってたときにあの貴族が来たの」
「そうだったんだ」
だからレベッカは、尚のことフラストレーションが溜まってたのかもしれない。まぁそれでも、使う言葉も態度も悪すぎたけど。
「あの貴族の男、領主の息子だって」
「え?!そうなの?!
‥‥許してもらえて本当よかった‥」
「はぁ?
お姉ちゃんって本当馬鹿だよね」
「え?!」
「子猫は結局、病院に辿り着く前に死ぬの!
許してもらえるかわからないじゃん」
「‥‥‥それ君が言う?」
元はと言えば!!という話だ。
でも、私は家族にものすごく甘い。この世界での唯一の味方だから。まぁ、エドも含まれるけど。
強く言えない駄目な姉なのだ。
まぁ、それよりも、今はそれどころじゃない。
「早く帰ろう!
お父さんお母さんに話さないと!!」
見合わせて、互いに頷き合う。
そしてただ黙々と、家路を急いだ。
だって、レベッカが‥
貴族に対して暴言を吐いた上に中指を‥
「‥‥お前」
貴族の男がプルプルと震えている。
そりゃあそうだろう。男はただ、瀕死の子猫を救ってくれと頭を下げただけなのだから。
レベッカの頭を左手で上から無理矢理押し込んで、必死に頭を下げた。どうか許してください、どうか‥。目をぎゅっと瞑って、ただただ謝り倒す。
「ご、ごめんなさいっ!!本当にごめんなさい!!」
貴族の男の隣にいた小太りの男が口を開いた。
「おい、リュウ。こいつらカルマート家のやつじゃねぇか?」
その言葉が聞こえた途端、私とレベッカは微かにピクリと反応した。
「魔法使いのくせに、こんなにオンボロな黒装束だぜ?
カルマート家のやつなら魔法が使えなくて当然だよ」
恐る恐る顔を上げる。男たちの冷たく突き刺さるような瞳。まるでドブネズミを嘲笑うかのような表情だ。
「‥あのカルマート家?
はーん、じゃあ俺は、そんなカルマート家のガキに死ねと言われて、中指まで立てられたわけだ」
レベッカが、また言い返しそうな表情な顔をしている。
私は、レベッカをキッと睨みつけて牽制してから、また貴族の男に頭を下げた。
「ほ、本当にごめんなさい‥‥
治りはしないと思いますが、本当に少しなら、元気にさせてあげれるかもしれません」
男たちの目は、冷たいままだ。
私の言葉に返事をすることもなく、やれるもんならやってみろ、という圧だけを掛けてくる。
震える手を子猫に向けて、必死に念じた。
お願い、お願い、お願い‥!元気になって‥!
「‥‥みゃう‥」
細々とした声が響いた。先程までただ浅い呼吸を繰り返していただけだったのに‥!
男たちの表情も、心なしかフワリと明るくなった。
リュウと呼ばれていた貴族の男が、子猫に顔を近付け、なんとも愛おしそうに頬ずりした。
「‥‥これに免じて許してやるよ‥。
病院までは頑張ってくれそうだ。じゃあな、カルマート」
男たちがぞろぞろとその場を去っていった。
‥よかった。助かった‥。
その場に立ち竦むレベッカの腕を取る。
「帰ろ、レベッカ」
「触んないでっ!」
「‥‥」
そっと手を離すと、レベッカは家の方向にスタスタと歩き出した。大人しく家に帰ってくれるみたいだ。良かった‥。
レベッカのさっきの行動は、カルマート家を破滅に追い込む一歩だった。でも、カルマート家自体がコンプレックスで、嫌で嫌で仕方がないレベッカの気持ちを考えると、わからなくもない。
社会から叩かれてる私たち。レベッカからしたら、その社会の中の貴族だとかお偉いさんだとか、そんなの知るもんかっていう感じなんだろう。
「‥レベッカ、もうあんなこと言っちゃダメだよ。
中指を立てるのもダメ」
「‥あの猫あと数分で死ぬよ」
「‥‥え?」
「やっぱりわかってなかったの?」
「‥‥」
「死相が出てた。あそこまでいってたら、中級魔法使いだって治せない。お姉ちゃんがしたのは、もがき苦しんでた猫がやっと楽になれるていう寸前に、もう一度もがき苦しむ時間を与えだけ。‥‥残酷だよ」
頭が真っ白になった。
なんとか言葉を出そうと思うけど、何も口から出てきてくれない。私の脳内は、言われてる言葉をなんとか理解しようとして、ただただレベッカの言葉が反復しているだけだった。
レベッカの言葉、
湧き上がる罪悪感、
でも、正直それ以上に脳内を占拠してるもの‥それは、驚きだ。
「レ、レベッカ‥
死相‥見えたの初めて?」
魔法使いの中でも、稀に特異体質として特殊な能力を持って生まれてくる人たちがいる。
死相が見えるのは、紛れもなくその特殊能力だ。
「え‥‥前から見えてたよ
虫とか鳥とかだけど」
「そ、それ‥特殊能力じゃん‥
レベッカすごいよ‥!」
「え?そうなの?
知らなかった」
レベッカは全く興味がなさそうだ。
特殊能力を持つ魔法使いは、その魔法使いとしての価値がグンと上がる。
まぁ私たちは、魔法使いとしての価値がまず無いから‥特殊能力があったところであまり意味がないかもしれないけど。
「‥私は子猫にも、
あの貴族の人にも悪いことしたんだね」
はぁ、とため息を吐く。
なんとか少しでも症状を回復させることができて嬉しかったのに。
「‥‥あの貴族の周りにいた男たちに、散々絡まれて本当嫌になってたときにあの貴族が来たの」
「そうだったんだ」
だからレベッカは、尚のことフラストレーションが溜まってたのかもしれない。まぁそれでも、使う言葉も態度も悪すぎたけど。
「あの貴族の男、領主の息子だって」
「え?!そうなの?!
‥‥許してもらえて本当よかった‥」
「はぁ?
お姉ちゃんって本当馬鹿だよね」
「え?!」
「子猫は結局、病院に辿り着く前に死ぬの!
許してもらえるかわからないじゃん」
「‥‥‥それ君が言う?」
元はと言えば!!という話だ。
でも、私は家族にものすごく甘い。この世界での唯一の味方だから。まぁ、エドも含まれるけど。
強く言えない駄目な姉なのだ。
まぁ、それよりも、今はそれどころじゃない。
「早く帰ろう!
お父さんお母さんに話さないと!!」
見合わせて、互いに頷き合う。
そしてただ黙々と、家路を急いだ。
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