魔法使いと魔の手鏡〜馬鹿にされ続けた下級魔法使いが突然超チート級上級魔法使いになった話〜

茶歩

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第4話

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   とある広い会議室。ここには、貴族バッチを付けた高貴な人間たちと、貴族ではないものの位の高いお役人や軍の上層部が数名、上級魔法使いの証である赤いマントを付けた魔法使い数名と、中級魔法使いの証である黒いマントを付けた魔法使い数名が集っていた。
   

「悪魔の勢力が強くなってきてますな」


軍司令部幹部、トニック大佐が机に広げた地図にマーカーで線を引きながらそう零した。


「‥なのに非協力的な魔法使いがまだ多くいる」

 
そう言って苦い顔をするのは、領主のドン・ロストリアだ。
ガタイが良く、髪型はオールバック。葉巻を加えて訝しげな表情を浮かべるその姿は、もはやマフィアである。


「軍に協力的な魔法使いの魔法使い優遇金を上げるのではどうでしょうか?」


とある中級魔法使いが口を開いた。


「軍に協力的な魔法使いが少ないわけじゃない。その方法では資金は足りないぞ」


ドン・ロストリアは、フーーッと煙を吐きながら言葉を続けた。


「領土の、そして国自体の存亡に関わる事態になってきてる。もう悠長なことは言ってられん。‥戦わない魔法使いの優遇金を大幅に減額し、その分協力的な魔法使いに還元しろ。そうすれば、否応無しに戦わなくてはいけなくなるからな。下級魔法使いも、積極的に軍に協力させろ」


「かしこまりました」


「‥‥‥全く戦力にならないようなクズには、もう優遇金を出すことさえやめろ。優遇金を出したところで、ミジンコほど役に立たない。領土になにも返ってこないからな。例えばほら‥あのカルマート家とかな」  


「カルマート家は国の‥そしてロストリア領のお荷物ですからなぁ」



以前、まだもっと国や各領土が平和だった時代‥
先先代ロストリア領主は、歴史や魔法使いの文化そのものをとても貴重なものとして扱う人だった。
そのため、当時の領主は歴史の古いカルマート家のことも、歴史的価値のあるものとして大事に扱ってくれていた。魔法使い優遇金も、今より多く支給されており、当時のカルマート家は今ほど苦しい生活を送っていたわけではなかった。



「‥お言葉ですが、領主様。
カルマート家は、魔法使いの家系の中でも限りある、歴史のある家系でございます。彼らは、いまの優遇金でなんとか生きているような状態‥。カルマート家を滅ぼしてしまうのは、この国の歴史に大きな損失を与えてしまいます」


そう話すのは、シルク・レガート。
エドの父親であり、優秀な中級魔法使いだ。
シルクがカルマート家の人々と関わることはほぼ無いに等しい。シルクももちろん『出来損ないのカルマート家』と思ってはいるが、彼は魔法使いの歴史研究家としての一面も持っていた。

今では数多くの魔法使いの家系が存在するが、1000年昔まで辿れば、魔法使いの家系は100程しかなかった。
1000年の間に多くの家系が滅んだり、新しい家系ができたりを繰り返して今に至っている。中には人間との結婚を繰り返していくうちに、魔力が消えた家系もある。そんな中で、当初の家系を大事に守り、1000年以上の時を繋いできたカルマート家は、本来非常に価値のある家系なのだ。


「‥魔法使いとしての力があれば、貴重だったろうな」


ドン・ロストリアは嘲笑うかのようにシルクを見た。


「文献からすれば、カルマート家は300年ほど前までは中級魔法使い‥時には多くの上級魔法使いを生み出していたそうです。カルマート家の血を残していれば、いつかまた優秀な魔法使いが生まれるかもしれません‥」


そう、シルクは、けしてアマービレやレベッカ達を守りたいわけじゃない。そのカルマート家の血を守りたいだけなのだ。


「シルクよ。
俺だって無知のまま領主をやってるわけじゃない。
言わせてもらうが‥。今うちの領土にあるのが本家カルマート家。各領土にあった数多くの分家カルマート家はその300年ほどの間に、もう消された。人間の血は入れず、純粋な魔法使いとの血を後世に伝え続けたにも関わらず、出来損ないだからだ。
300年間駄目だったものが、突然変異で急に戻るとでも?」


「‥ですが‥‥」


「そんなにカルマート家が大事なら、お前が養えばいいんじゃないか?その出来損ないたちを」


会議室に多くの笑い声が飛び交う。


「魔法使いには、魔法使いの掟がありますので‥」


魔法使いの掟というのは、それこそ古から伝わる魔法使い特有のものだ。
その掟の1つに、【魔法使い間の、家族以外への恵みは互いに同等の対価を持って】というものがある。

つまり、金銭や物を渡す際は、それ相応の価値のあるものを貰わなくてはならないのだ。

また、他にも、【祖先の品は他人に渡してはならない】という掟も存在する。


これら2つを含む数々の魔法使いの掟が、数多の魔法使いの家系を滅びさせた原因でもある。



レガート家がカルマート家に金銭などを恵んでも、カルマート家がレガート家に渡せる同等のものはないのだ。



「それなら魔法使いの掟を撤廃すればいい」


「それこそ、歴史の冒涜になってしまいます。
それに、魔法使いの掟は、守り続けることで加護を受け、破るとその命を削られる‥という言い伝えがあるのです」



頑ななシルクに、ドン・ロストリアは深いため息をついた。



「まぁなんとでも言え。
お前は所詮ただの中級魔法使いだ。
俺にとやかく言う権限はない。

魔法使い優遇金の改定をすぐに公表しろ」




悔しそうな表情を浮かべるシルク以外は、皆力強く頷いた。


ーーーそして、ちょうどその会議の日、
アマービレ達とリュウ達のあの出来事があったのであるーー
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