魔法使いと魔の手鏡〜馬鹿にされ続けた下級魔法使いが突然超チート級上級魔法使いになった話〜

茶歩

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第7話

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月明かりに照らされた、裏庭の木のベンチ。
心地よい夜風を浴びながら、いつも通りエドとお喋りをする。


「へー、悪魔って黒いんだぁ」


「うん。大きかったり、小柄だったり様々だけど。ボヤッとしてるんだよね」


エド曰く、悪魔は黒くてボヤッとした人型をした生物なんだそうだ。よくよくエドを見れば、手のひらに包帯を巻いている。ケロッと悪魔との戦いについて話してくれるけど、その闘いはやはり厳しいものなのだろうと思い知らされる。


それから、他愛もない会話を挟みながら私は今日の出来事を話した。
エドのお父さんは領主とも関わりを持つような人だから、エドもリュウという男について知っていたみたいだった。


「‥それであの反応だったんだ」


夕方うちへ来た時の、私たちの様子を思い返しながらエドがそう話す。
役立たずな税金泥棒と人間たちから嫌われ、出来損ないだと魔法使いたちから蔑まれる私たち。
生き延びるためには、これ以上波風を立てないよう、ひっそりと暮らすことが重要だった。何かが起こった時にまず切られるのは私たちだから。


「うん。エドだったからみんなホッとしたの。
それで、私たちを心配してくれたエドを見て、お父さんとお母さんが、エドが跡取りじゃなければなぁーって話してたよ」


くすくす、とその時の様子を思い出しながら伝えると、エドは黙ったまま私をじっと見つめた。
エドのビー玉のような綺麗な青い瞳は、夜の闇に溶け込むように、今は暗い色をしている。
レガート家の一人息子、中級魔法使いの父と母、そして若くして中級魔法使いのエド。エリート中のエリートであり、容姿も端正で、性格もいい。

きっとエドは、同じくらいの上流階級のお嬢さんをお嫁に貰って、エリートな家系を率いていくんだ。



「‥魔法使いの家系を繋いでいくためにある、魔法使い売買制度のこと、マレは知ってる?」


唐突に、エドがそう言った。


「知ってるよ?
カルマート家も、もう少し金銭的にゆとりがあった時代には、その制度使ったことあるって聞いたことある」


その家を後世に繋いでいくためにある、魔法使い売買制度。
国の機関を通じて孤児の魔法使いや、お金の為に売られた魔法使いを、必要な魔法使い家庭に迎え入れる制度のことで、子どもに恵まれなかった魔法使い家庭などが利用することが多い。
でも、カルマート家のように、結婚相手がどうしても見つからない家系などが、お金で魔法使いを買い、嫁や婿にするという場合にも、この制度は使われる。

もちろん、魔法使いとしてのレベルが高い方が高値で売れ、レベルが低ければその金額も低い。

‥低いとは言っても、簡単に購入できるような金額ではないのだけれど。



「‥で、売買制度がどうしたの?」


「レガート家は、中級が3人いて、金銭的な余裕がある」


魔法使い優遇金はもちろんのこと、その他に功績によって支払われる対価もある。要は、魔法使い優遇金という定期的に支払われる国からの給料の他に、歩合制で稼ぐことができるということ。

レガート家は、3人ともみんな活躍しているから、お金は有り余るほどあるだろう。



「それは知ってるよ。レガート家はお金持ちよね」


でも、レガート家はお金持ちになる為に働いてるわけじゃない。
魔法使いとして国の為に働いているだけだ。
高価な物を必要以上に買ったり、自慢したりしない。そんな人たちだ。


「‥もし俺がレガート家を離れても、跡継ぎを用意することができるってことだよ」


「え?」


「‥‥‥」


エドの頬が、面白いくらいに赤くなっていく。夜でもわかるくらいに、赤い。
唇をぎゅっと噛み、何かを言いたそうだ。


「おーい、エドくーーん」


エドは、大きなため息と同時にがっくりと頭を下げ、両手を顔に当てて項垂れている。


一体どうしたんだ。


「‥‥なんでもない」


「えぇ?」


「なんでもないなんでもないなんでもない!」



珍しくエドが乱れている。
エドがレガート家を離れても、レガート家は金銭的に余裕があるから魔法使いを買える、そう言ってたよね。
あれ?その前って確か今日の日中の話をしていて‥‥ああ、そっか。お父さんとお母さんが言ってたことを話したんだった。


つまり、エドはカルマート家のお婿さんになれるよと言ってくれたのか。本当エドってば、優しいなぁ。
そしてこんなに恥ずかしがってるなんて、なんだか可愛い。



「ありがとう、エド。
でもそんなこと絶対にエドのお父さんとお母さんは許さないよ」


「‥‥」


自慢の息子が、カルマート家の一員になるなんて。
絶対に許すわけがない。


「エドは本当優しいね」


「‥マレってさ‥‥」


「ん?」


「鈍いよね‥」


「えぇ?!なに急に!」


「いや、うん‥もういいんだ。
あ、ほら呼んでるよ」


二階にある私の部屋の窓からカタカタカタと音がする。
上を見上げると、白い猫のぬいぐるみがこちらを見下ろしていた。


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