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ないものねだり
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私はあの人が羨ましい。私が欲しかったものを全部持っているから。
私はあの人が妬ましい。私に無いものを持っているから。
私はあの人が恨めしい。私のものを全部奪っていったから。
私は、全てを手に入れたかった。完璧でありたかったの。だからないものねだりをした。
「でも、聡美さんには、優しそうな旦那さんと、可愛いお子さんがいるじゃないですか」
「何言ってるの。夫は家事の手伝いなんて一切しないし、あの子も自分のおもちゃすら片付けられないし、勉強しろって言ってもちっともやらないし」
私はそう、彼女に呆れたトーンで話す。
「まぁ色々ありますよね」
苦笑い浮かべながら、彼女はそう言った。
色々、、、か。
そりゃ、あるかもしれないけど、私よりはずっといい生活を彼女はしているのだろう。話し方にそんな余裕を感じる。
なんでも、夫は、有名企業に働くエリートで、子供も学生トップ。キラキラのブランド物のバッグを引っさげながら、親子仲良く授業参観に来る始末。普段からフランス料理を食べているような見た目だ。
「あーもうこんな時間、そろそろ夕食の準備をしないと」
彼女は慌てたように、スーパーマーケットにある時計を見て、そう言った。
「あら、そう、じゃあまたね」
「はい、失礼しますねー」
「じゃあ悠くん、またねーばいばい」
彼女が子供と共に去っていった。
遠ざかる彼女の後ろ姿を見ながら、彼女になりたいと思った。
「こら、崇!また残したの!!!好き嫌いはダメって言ってるでしょう!!!!何度言ったらわかるの!!!!!」
あなたのために、家に帰り、急いで、せっかく作った夕食なのに、と感情的になってしまう。
私の悪い癖だ。いつものように怒鳴ってしまった。あの人なら、もっと落ち着いて注意するのだろうか。
「あなた、少しは家事を手伝ってよ。テレビ見て暇なんでしょ?どうして手伝わないのよ!!!?こんなにも私が苦労してるのに!!!」
なんで優しく頼めないんだろう。あの人ならもっと落ち着いて頼んで、あの人の旦那さんもやってくれるはずだ。
なのに、、、私は、、、、、私は、、、、、
ガチャン、バタン。
「たかし~おかえり~」
まったくあの子は、ただいまもなし、またゲームかしら。
そう思いチラリと、子供部屋のドアの少し開け、除く。
崇は真顔で窓の外を見つめていた。すると、こちらに気づいた崇が声をかけてきた。
「どうしたの?母さん」
「え?いや、、崇、ちょっといいからリビングに来なさい」
「え、、、なんで?」
と言って、少し困り顔の息子の手を取り、無理やり引っ張り込んで、リビングに連れてきた。でもそうしなければならなかった。
「崇、隠さなくていいからね」
普段通り、いつも通りの崇。顔も声のトーンもあまり変わっていない。私以外の人間が見たらそう思うだろう。でも、私には分かっていた。
「崇、学校で嫌なことあったんだよね。お母さんには、隠さなくていいからね、話していいよ」
「あの、、あのね、、、僕ね、、うう、うわあああああん」
崇は、それまでの平然とした表情から打って変わって、泣き始めてしまった。ポロポロと大粒の涙を流しながら、私の胸に飛び込んできた。そんな崇の頭を優しく撫でながら、私はゆっくりと崇の話を聞いてあげた。
「崇、、崇は崇のいい所があるんだから、他人と比べなくてもいいの。それは私が保証するし、心配しなくていい。完璧な人間はいないんだから。誰しもいい所と悪い所があって、たまたまそういう状況になっちゃっただけよ。お母さんは崇のいい所いっぱい知ってるよ。だから大丈夫」
そう言って私は、崇を宥め聞かせていたのに、何故か私の頬からは涙が伝っていた。
「崇!そんなことがあったのか!でも気にしなくていいぞー!、お父さんも昔、よく泣かされていたからなぁ!」
「それは、貴方が喧嘩っ早い性格だからでしょ!同じにしないでよね。もう。崇は違うわよねー」
「あはははは、お父さんもそうだったの!?僕とは違うなぁ!」
家族団欒の時、こんなにも楽しかったっけとふと思う。
私は、私で、他人は他人。私の家族は唯一無二なんだ。
「母さん、今まで好き嫌いしてごめん。これからはちゃんと食べるようにするよ」
崇はそう行って、嫌いなピーマンを少し齧って食べていた。全部までとはいかなかったけど。
そんな息子を見て、私は泣きそうになった。
「聡美、今日は俺なんか手伝おうか。そのー、皿洗い、、とか?」
夫がモジモジとしながら、頭をかき、目を逸らしてそう言ってきた。
「こりゃ、明日、雨が降るわね」
私は照れ隠しでそう呟いた。
雨の降る街の中で、私は1人、傘をさしながら歩き、彼女のことを考えていた。暖かい家庭。なんでも話し合える関係。穏やかで健やかな時間。普通と言える一般的で幸せな日常。彼女は私に無いものを持っている。羨ましかった。
「私も、、、聡美さんみたいに、なりたいな、、、、」
私はあの人が妬ましい。私に無いものを持っているから。
私はあの人が恨めしい。私のものを全部奪っていったから。
私は、全てを手に入れたかった。完璧でありたかったの。だからないものねだりをした。
「でも、聡美さんには、優しそうな旦那さんと、可愛いお子さんがいるじゃないですか」
「何言ってるの。夫は家事の手伝いなんて一切しないし、あの子も自分のおもちゃすら片付けられないし、勉強しろって言ってもちっともやらないし」
私はそう、彼女に呆れたトーンで話す。
「まぁ色々ありますよね」
苦笑い浮かべながら、彼女はそう言った。
色々、、、か。
そりゃ、あるかもしれないけど、私よりはずっといい生活を彼女はしているのだろう。話し方にそんな余裕を感じる。
なんでも、夫は、有名企業に働くエリートで、子供も学生トップ。キラキラのブランド物のバッグを引っさげながら、親子仲良く授業参観に来る始末。普段からフランス料理を食べているような見た目だ。
「あーもうこんな時間、そろそろ夕食の準備をしないと」
彼女は慌てたように、スーパーマーケットにある時計を見て、そう言った。
「あら、そう、じゃあまたね」
「はい、失礼しますねー」
「じゃあ悠くん、またねーばいばい」
彼女が子供と共に去っていった。
遠ざかる彼女の後ろ姿を見ながら、彼女になりたいと思った。
「こら、崇!また残したの!!!好き嫌いはダメって言ってるでしょう!!!!何度言ったらわかるの!!!!!」
あなたのために、家に帰り、急いで、せっかく作った夕食なのに、と感情的になってしまう。
私の悪い癖だ。いつものように怒鳴ってしまった。あの人なら、もっと落ち着いて注意するのだろうか。
「あなた、少しは家事を手伝ってよ。テレビ見て暇なんでしょ?どうして手伝わないのよ!!!?こんなにも私が苦労してるのに!!!」
なんで優しく頼めないんだろう。あの人ならもっと落ち着いて頼んで、あの人の旦那さんもやってくれるはずだ。
なのに、、、私は、、、、、私は、、、、、
ガチャン、バタン。
「たかし~おかえり~」
まったくあの子は、ただいまもなし、またゲームかしら。
そう思いチラリと、子供部屋のドアの少し開け、除く。
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と言って、少し困り顔の息子の手を取り、無理やり引っ張り込んで、リビングに連れてきた。でもそうしなければならなかった。
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普段通り、いつも通りの崇。顔も声のトーンもあまり変わっていない。私以外の人間が見たらそう思うだろう。でも、私には分かっていた。
「崇、学校で嫌なことあったんだよね。お母さんには、隠さなくていいからね、話していいよ」
「あの、、あのね、、、僕ね、、うう、うわあああああん」
崇は、それまでの平然とした表情から打って変わって、泣き始めてしまった。ポロポロと大粒の涙を流しながら、私の胸に飛び込んできた。そんな崇の頭を優しく撫でながら、私はゆっくりと崇の話を聞いてあげた。
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そう言って私は、崇を宥め聞かせていたのに、何故か私の頬からは涙が伝っていた。
「崇!そんなことがあったのか!でも気にしなくていいぞー!、お父さんも昔、よく泣かされていたからなぁ!」
「それは、貴方が喧嘩っ早い性格だからでしょ!同じにしないでよね。もう。崇は違うわよねー」
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「聡美、今日は俺なんか手伝おうか。そのー、皿洗い、、とか?」
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「こりゃ、明日、雨が降るわね」
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