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ツチノコの発見
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「おい、今日どこ行く?」
「決まってるだろ。いつもの場所だよ」
「あーおっけーじゃあまた4時に駅集合な」
都会で駅近の大学ならではの会話である。学食は今の時間は生徒で溢れ帰っているちょうど昼の中休みだ。
僕は、そんな混雑時は決まって、窓際の一人席を選ぶ。一番窓際の隅の席は誰も座らないのだ。それもそのはず、この席は外の入口近くで虫などがよく入ってきやすい。そして隅には蜘蛛の巣が張っているからだ。虫嫌いの並大抵の人間はここを避けるだろう。しかし僕は虫が嫌いじゃない。むしろGも手でいけるタイプだ。
しかして、やはり中央の人数席は声がでかい。学食は大勢の学生の声でガヤガヤとしているが、一番近い人数席の会話は嫌でも聞こえてくる。そんな奴らの会話はいつも決まって、恋人がどうとかどこへ遊びに行くだとか浮かれたくだらない俗話ばっかりだ。
だが、僕も少しはそいつらを少し羨ましいと思う。なんの憂いもなく、一時の感情で物事を楽しめるということが。それを共有できることが。僕にはそんな友達もいなかったからだ。
僕は、家に帰ると、もう6時でテレビには午後のニュースが流れていた。そのニュースはローカル局のニュース番組で、地元でロト6等の宝くじを当選した人へのインタビューが流れていた。
「いやぁ、今でもまだあのあった時のことを思い出して震えますよ。本当に最高です」
興奮して目を輝かせる人間を見て、僕もこんなふうになりたいなと思った。何かを手に入れたい。そして、時の人になるくらいの刺激的な日常が欲しい。でも、そうなるように僕は行動をしていなかった。いつも受け身で、ただのんべんだらりと慣れ親しんだ娯楽で、一時の快楽を得ているだけだった。僕の娯楽のルーティンは、家に帰って、ソシャゲーをするか、ニコニコ動画でアニメを見るか、YouTubeで実況動画を見るかくらいだ。あとはSNSで、界隈が共通するネット民と5ちゃんねるなどのネット掲示板で話すくらいか。完全インドア娯楽である。僕が外に出るとすれば、マニアショップ及び、アニメキャラなどのグッズがあるオタクショップに行くことくらいだ。そういえば一週間前、オタクショップで美少女フィギュアの入った四角い大きな箱を何個も抱えながら走ってきたオタクと衝突したことを思い出した。今思い出しても腹が立つ。僕がアニメグッズを漁っている時に、視界外から衝撃が伝わってきた。完全相手からぶつかって来たのにも関わらず謝りも無しで、そのまま当たり屋のように通りすぎて行ったが、倒れて落としたフィギュアを集めている姿を、顔を僕は覚えていた。僕はこういうキモイオタクが嫌いだ。僕に友達が出来るとしたらオタクの様な自分でも見下せる人間くらいだろうが、オタクには関わりたくない。今の時代、人と関わらなくてもやっていけるのである。アニメにせよ実況動画にせよ。それを見ながら独りごちて突っ込んだり、コメントしたりすればそれで満たされるから、わざわざ生身で関わる必要も無いのである。今は娯楽を簡単に享受し、そしネットで簡単に人と関わった気分になれる。その時代背景が、僕の変わりたいという行動を抑制しているに違いなかった。
ニュースは宝くじの話題から一転し、いきなりオカルトのUMA探しに移ったと思いきや、なんと今ではそれを見つけた人に多額の賞金が貰えるという宝くじ的な話題で、少し繋がりのある内容だった。
なんでも、あの都市伝説上の生き物、ツチノコを見つけたら賞金1億円。そして、その見つけるイベントが大体的に一週間、団体で行うらしい。そのある村といえば、あの世界遺産で有名な白川村だった。
「どうしたの、そんなに大声出して」
「ママ、僕これに参加するから、一週間家空ける」
僕は、退屈な日常を変えるために参加することにした。昔、白川村に住むおじいちゃんからツチノコのことはよく聞かされていた。それだけに、僕には捕まえる自信があったのだ。
2ヶ月が経ち、イベント当日になった。今僕が住んでいる家から、車移動だ。もちろん僕は免許を持っていなかったので、ママの運転でここまで来た。この村に来るのも、おじいちゃん家に遊びに行った時以来で、5年振りくらいだ。
久しいが、あんなに寂れていた村が、余所者と言ってはなんだがそのような人々で埋め尽くされ、活気づいていた。
これも、政府が用意したツチノコイベントの効果で、村を発展させる意図もあるのかもしれない。
ツチノコイベントの参加者は、4から7名程度のチームに分けられる。そして、そのチームでツチノコを一週間協力して探すのだ。
周りを見ると、他の参加者達は、どうやら有料バスで来ていたようだ。まあこれだけ辺境の地だからほかの交通手段は自力の運転で来るしかないからそうなるだろう。
チーム分けは、どうやら現地のクジで行われるらしい。くじを引く列は長蛇となっており、並ぶのにテーマパークのアトラクションレベルで時間がかかった。クジはアルファベットでSと書かれていた。Sと書かれた大きな看板のたつ場所を探して歩き、その看板の前に行くと、もうそこには数人集まっていた。僕が行った途端に、イベントの係員は、何か手に持ったバインダーに挟んだメモに記入し、号令した。
「よし、S班揃ったね。君たち6人が今日から一週間ツチノコ探しの冒険を共にする仲間たちだ!」
その言葉と共に僕は、周りを見渡した。僕を含めた年齢性別バラバラの6人が互いに見合っていた。
「キャンプの場所とツチノコの出現情報があった森へ案内する。着いてきてくれ」
言葉通りに僕らは案内された。大きな広いキャンプ上へ行くために山道を数分歩いた。その途中、山道の下を流れる大きな川など雄大な自然を味わった。
「ねえ、あなたは、なんのために参加したの?」
案内の途中、一人の見た目が清楚で落ち着いたチームメンバーの女が話しかけてきた。僕よりも少し歳上に見えた。
「なんのためにかぁ、暇つぶし?」
「そう、、私は、家族に、私を見つけてもらうため」
「どういうこと?」
「理解できないのならそれでいいの」
そう言って、前の方へ歩いていってしまった。
僕は、適当に答えすぎてしまったかと後悔した。
「ここが君たちが寝泊まりするコテージだ」
コテージという名の木の家がずらりと森の中に沢山並んでいた。普段はバーベキューなどのイベント事で使用されているらしい。
「君たちはここで自給自足で一週間過ごしてもらう。自給自足とは言っても近くに野菜などは売ってるからそれを調理するだけだけどね。じゃあ次、ツチノコの場所を案内するよ」
係員はそう言って、また森の方へ歩き始めた。
木々の匂いと生い茂った草の香りがする。山道の下には川が流れ、川の匂いもした。泥や土、砂がある場所であったり、一点草原枯れ草がある場所であったりと、様々で広大だった。
「今歩いてきた全ての場所に、ツチノコは生息している可能性がある。そこからどこを絞って探すかは君たち次第だ。健闘を祈る」
こうして、僕たちのツチノコ探しは始まった。果たして、この広大な土地の中に、本当にツチノコはいるのだろうか。
一日目は、説明で日が暮れ、夜になり、コテージで、夕食みんなで作って決起集会を行うことになっていた。
「じゃあ、この日のために集まった6人のを祝って乾杯!」
チームの係員がそう声をかけて乾杯した。そこから自己紹介をする流れになった。
「自己紹介と行こう。じゃあ君から」
そう言って指名されたのはとても見た目がチャラそうな男だった。
「はーい、俺は、C大の菊地大河です!今回のツチノコ探索に参加したきっかけはノリでーすよろしくお願いしまーす」
C大って、僕と同じ大学じゃないか。なんかどこかで見たことあるような。どこかで聞いたことあるようなないような、、思えばよく学食で見るうるさい学生だった。
「私は、山本珠莉亜よろしくねー。私は、この村への観光ついでに参加したって感じでーす!」
次に自己紹介したのは僕と同じ年齢位の女だった。彼女は中南米系のハーフだろう。そんな顔つきをしていた。
「えー私は、青野 保則だ。私も彼らと同じくほんの暇つぶし程度だ。よろしく頼む」
青野という50代くらいの男性が渋い声で自己紹介をしていた。どこか見覚えのある顔をしていたがどこで見たかは覚えていなかった。
「えっとじゃあ次は私が」
少しの沈黙の後、僕と、眼鏡をかけたオタクと、女性が譲り合ってから、謙虚に女性が話し始めた。
「私は、遠野 理瑚といいます。参加したきっかけは、皆さんと同じで気分転換の様な感じです。よろしくお願いします」
遠野という女は、僕よりも少し年上のオーラを感じさせた。とても落ち着いた声で淡々とした自己紹介だった。
「じゃあぼ、僕が次行くよ。僕は小田 国男。き、君たちとは違って僕は、本当にツチノコの生態にロマンを感じて、ツチノコが好きだから参加した迄です。よろしくお願いいたします」
僕はその自己紹介を聞いてハッとした。この人は、あの時僕とぶつかったあのオタクだった。早口で吃音なのがオタクらしい喋り方だった。
「じゃあ、最後に僕ですね。僕は萩原 一仁と言います。参加理由は、退屈な日常を紛らわすためです。よろしくお願いします」
僕の挨拶の後決起集会ということで、料理を作りながら色々な話を咲かせていた。僕とオタクの小田以外が。
ツチノコ探索の一日目はあっという間に終わった。
2日目、ほかの班たちが早速、ツチノコ探しに向かう中、僕達はコテージの中で机を囲みあっていた。
「まず!ツチノコを捕まえる作戦を立てる!そういう事だったよな?小田」
チャラ男の菊地が食い気味でオタクの小田に話しかけた。
「そ、そうさ。闇雲に探しても見つからない! ツチノコには特殊な習性があるからね」
「その習性って?」
静かな女、遠野が聞いた。
「ツチノコは、トカゲと同じ変温動物でどんな環境でも基本的には順応できる。だからどんな場所にもいるそしてとにかく動きが速くて捕まえるのは難しい。これが意味すること分かるよね?」
「つまり、見つけることも難しければ、見つけても捕まることが難しいってことか」
オヤジの青野はそうまとめると、そういうことか~!と明るい女の山本が頷いていた。
「だ、だから、作戦としては罠を仕掛けるしかないんですよ」
「おー、罠かいいじゃねえか!お前もそう思うよな?」
菊地は喋らない僕に返答を振ってきた。
「う、うん」
「じゃあ、今日は罠を仕掛ける準備日にしようぜ!」
菊地の号令で、僕達は罠をしかけることになった。小田式ツチノコ捕獲用トラップの内容はこんなものだった。
まず、ツチノコの好物と思われる野菜やフルーツ、そして虫を枯葉の上に置いておく。枯葉の下は実は落とし穴になっていて、ツチノコがそれを食べようとすると重さで落とし穴に落ちるその反動で枯葉の上に仕掛けた蓋が降りてきてツチノコ捕らえるというトラップだ。
僕達はそのトラップを、草原のゾーン、川辺のゾーン、泥のゾーン、砂利のゾーン、そして森林のゾーンに5ずつ仕掛けた。
しかし翌日なり、その仕掛けを確認してみると、
「おい、全然いねえじゃねえか!」
「え、そんな!僕の計画が!」
小田のしかけた罠は掛かるどころか、そこら周りにツチノコが通った気配すらなく、そのままの状態だった。ツチノコ探索3日目にして、急に壁にぶち当たったのである。
「はは、またやればいいじゃないか」
「なんだ爺さん、余裕そうに笑いやがって何か策でもあるのか?」
と菊地は青野に聞いたが、青野は手を振った。
「いや、私は今この瞬間が楽しいんだよ。やはり世界は金じゃない」
「はあ?何呑気なこと言ってんだ」
「金ってどういうことですか?」
僕は、何か青野が大切なことを言おうとしているのでは無いかと思い、そう聞いた。
「世の中金だという言葉があるが、あれは嘘だ。私は4ヶ月前、宝くじを当てたんだ。それも1等を。で大金を得て、色んな贅沢をした。なのに2ヶ月たって何も喜びや楽しさを感じ無くなっていた。だが君たちの姿を見てこっちも楽しくなったよありがとう」
僕はそこで、青野があのニュースに出ていた、宝くじを当てた男だということを知った。
「俺たちは金のためにやってますけどね」
「それでもいいんだ。私には君たちが純粋にツチノコ探しを楽しんでいるように見えたから」
青野はどこか達観したかのようにそう言った。確かにはたから見たら、ツチノコ探しなんて子供が描く夢のような話で、大人が本気になって探しているのなんて馬鹿な話なのかもしれない。
「君たちは私より、若いだろ。これだけは言える。馬鹿なことを大真面目にやれるやつってかっこいいんだ」
そう言った青野の目は僕達よりも輝いていて、まるで子供のような綺麗な目をしていた。
僕達はその後、話し合った結果、ツチノコが好みそうな匂いを放つするめや髪の毛の焼いた匂いで誘き寄せる改良版小田式捕獲トラップを発案し、それを設置した。
4日目、改良版小田式ツチノコ捕獲トラップはまたもや不発した。そして、またもやコテージでの会議が始まった。
「小田くん、どういう事?あなたのトラップがダメなんじゃない?」
遠野はそう、小田を問い詰めていた。
僕は気づいていた。小田式トラップには足りない部分があることを。
みんなが、手を焼く中、菊地が僕に迫ってきた。
「おい、萩原。お前、俺たちになにか隠してるだろ?」
「え?どうしたの急に」
僕はとぼけたように菊地に聞き返した。
「気づいてないとでも思ったか。お前の表情見てたらわかる。何か隠してる顔だ」
「萩原くん、教えて。他になにか方法はないの?」
「じゃあ前提として、まず、ツチノコは全長30~80cmででかいヤツもいるんだだから落とし穴じゃはみ出してしまうやつもいる。だからでかい檻のトラップじゃないと。あと、ツチノコは意外と肉食なんだって言われてる。だからネズミやカエルの声を録音した音声を流してなんでもいいから肉を餌にするべきだ」
「す、すげぇ!萩原!お前やるじゃん!」
「まあ、これはおじいちゃんの受け売り、」
「でも、なんでそれを先に早く言わねえんだよ!!」
菊地にバンと背中を叩かれて、僕の言葉は途中で止まった。
僕は菊地を勘違いしていたかもしれない。他人に気を使えず、周りが見えていない人間だと思っていたが、そのむしろ真逆だったのだ。
「菊地。意外と周り見れててリーダーに向いてるんだな」
「お前ほどじゃねえよ。お前もチームワークのために黙ってたんだろ」
「じゃあ、みんな集めて伝えてくるわ!んじゃな!」
菊地はそう言って、みんなのもとへ駆けて行ったかと思うと急に立ち止まり、そして、言った。
「あ、あとお前、俺の親友になれ!俺、親友欲しかったんだ」
五日目、僕の萩原式ツチノコ捕獲トラップを作り、設置準備を行う日となった。
「クソ、クソ、なんであいつばっかり」
小田はまだごちゃごちゃと言いながら罠を張る作業に従事していた。
「おい!小田相変わらずうるせえぞー!黙って出来ねえのか!」
と菊地が叫ぶ。
「ほんとよ。黙って出来ないの?」
と冷静に遠野が毒づく。
「ええい、うるさいっ!」
その2人の声に小田は刺されていた。
「まあまあみんな。小田も頑張ってるんだし。アンタの頑張ってる姿、素敵だと思うけどね」
そう言って山本は小田のことを庇っていた。
「別に。僕はただ指示されたままやってるだけさ。従わないと菊地になんか言われそうだし」
「それでもやってるんだから偉いじゃん」
「なんなんだよ急に、ぼ、僕は二次元にしか興味無いぞ!」
「へぇ、本当に?私は君に興味あるけどなー」
「なんなんだよ。君も喋らず手を動かしたらどうだい」
「はーい。よーし、私も頑張るぞー!」
傍目から見て、この二人、とてもいい雰囲気にしか見えなかった。それを菊地も察したようで、僕に話しかけてきた。
「おい、親友。なんかあいつらいい感じじゃね?」
「うん。特に山本さんがね」
「なんだなんだ、あいつら付き合っちゃうのか!?」
「ちょっと、僕、確かめてくる」
「ああ、おい、親友!」
そう言って僕は、山本に話しかけに行くことにした。僕が他人に話しかけることなど中々ないが、正直とても興味があった。なんであんなクソオタクに惚れているのか、生命科学的興味だ。
「山本さん、小田のどこがいいの?」
「はぁ!?あんた、なによ!!」
「ごめんなさい」
「いや、別に、、いいわよ。ホントの事だし」
怒られたかと思い、即答で謝ったが、どうやら
図星で照れ隠しに、怒った感じの言い草になったようなツンデレ感満載の反応だった。
「で、どこがいいの?」
「私、これまで、何もやるにしてもノリで周りにばっか合わせて、ずっと一歩後ろで眺めて楽しんでた。でも、小田を見て気づかされたの。本当の楽しみは、のめり込んで、熱狂して、最前線で全力を尽くすことだって。そしたらなんかかっこよく見えてきちゃって、それでね」
「ああもうわかったから、それでいい」
「何よ、ここからが本番なのに」
「でも、それってツチノコ探しにも言えることだよ」
「え?」
僕の以外な言葉に、山本は素っ頓狂な反応をした。
「視野を広げるから見つかるんじゃない。逆に視野を狭めて、それに集中するから見えてくるんだってことさ」
6日目、昨日、あれだけみんなで協力して仕掛けた罠。
それを一個ずつ確かめていった。
かかりなし、かかりなし。
草原のゾーン、川辺のゾーン、泥のゾーン、砂利のゾーンの罠は全てかかりがなかった。そして、最後のゾーン森林のゾーン、かかりなし。かかりなし。どんどんと罠の数が減っていく事に、次第にみんなの期待感が募る。今度こそは、今度の一個にはツチノコがいるんじゃないか!いてくれ!そんな声が聞こえてくるようだった。
そして、最後の罠。一個。
「これが最後か」
「これが正真正銘のラストってことだな」
「私は、いるって信じる」
「私もよ」
「私も同じ気持ちだよ」
「ぼ、僕もだ。絶対にいるだろ!」
「じゃあ、開けるよ」
そう言って、最後の檻を確認する。
そこには、僕たちが夢にまで見たあの幻のツチノコが居た!
「キャーーー!」
山本は、叫んで小田に抱きついた。
「こ、これが本当の愛ってやつか」
小田はそう言って顔を真っ赤にして倒れた。小田が初めて、愛を知った瞬間であった。
そして、7日目。結果発表と解散式の日を迎えていた。朝、とても良い目覚めだった。ツチノコを僕達は見つけたのだ。
後は、それを団体の前でお披露目してヒーローとなり大金を貰うだけだった。
「え?あれ!?」
僕は誰よりも朝早起きをして、彼に挨拶をしようと思った。しかし、彼が居ないのだ。こんな小さな籠にいれていた。見つけられないはずがない。一緒に入れた枯れ木とか小さな葉っぱで隠れているのか、それこそ土の中に潜っているのか。いいやその気配すらない。
「ツチノコが逃げた、、?」
大変だ。なんてことだ。みんなを起こさないと。
僕はみんなをすぐに起こして、ツチノコがいなくなっていることを伝えた。みんなの反応は驚きと悲しみだった。
「ごめん僕がずっと寝ずに見ていれば、、」
「いいのよ。別に。それに、他に見つけられたものがあったでしょう」
「確かにそうだね。でも君にもあったの?」
僕は遠野にそう聞いた。遠野だけはまだ発見できてなかったからだ。
「今朝、親から電話があってツチノコよく見つけたなって。迎えに来てくれるみたい」
彼女は泣いたような顔で笑って言った。
「それは良かった」
僕は、大きく頷いて笑った。みんなはツチノコが消えて悲しんでいたけど、僕は消えてよかったと思った。人間はあるものを安心する毎日を送るより、無いものを追いかける方がイキイキする。それは青野さんが教えてくれた。
僕は、仲間の絆というツチノコよりも大事なものを発見した。そしてみんなもそれぞれ目に見えない大事なものを発見した。それで良かったのだ。
「決まってるだろ。いつもの場所だよ」
「あーおっけーじゃあまた4時に駅集合な」
都会で駅近の大学ならではの会話である。学食は今の時間は生徒で溢れ帰っているちょうど昼の中休みだ。
僕は、そんな混雑時は決まって、窓際の一人席を選ぶ。一番窓際の隅の席は誰も座らないのだ。それもそのはず、この席は外の入口近くで虫などがよく入ってきやすい。そして隅には蜘蛛の巣が張っているからだ。虫嫌いの並大抵の人間はここを避けるだろう。しかし僕は虫が嫌いじゃない。むしろGも手でいけるタイプだ。
しかして、やはり中央の人数席は声がでかい。学食は大勢の学生の声でガヤガヤとしているが、一番近い人数席の会話は嫌でも聞こえてくる。そんな奴らの会話はいつも決まって、恋人がどうとかどこへ遊びに行くだとか浮かれたくだらない俗話ばっかりだ。
だが、僕も少しはそいつらを少し羨ましいと思う。なんの憂いもなく、一時の感情で物事を楽しめるということが。それを共有できることが。僕にはそんな友達もいなかったからだ。
僕は、家に帰ると、もう6時でテレビには午後のニュースが流れていた。そのニュースはローカル局のニュース番組で、地元でロト6等の宝くじを当選した人へのインタビューが流れていた。
「いやぁ、今でもまだあのあった時のことを思い出して震えますよ。本当に最高です」
興奮して目を輝かせる人間を見て、僕もこんなふうになりたいなと思った。何かを手に入れたい。そして、時の人になるくらいの刺激的な日常が欲しい。でも、そうなるように僕は行動をしていなかった。いつも受け身で、ただのんべんだらりと慣れ親しんだ娯楽で、一時の快楽を得ているだけだった。僕の娯楽のルーティンは、家に帰って、ソシャゲーをするか、ニコニコ動画でアニメを見るか、YouTubeで実況動画を見るかくらいだ。あとはSNSで、界隈が共通するネット民と5ちゃんねるなどのネット掲示板で話すくらいか。完全インドア娯楽である。僕が外に出るとすれば、マニアショップ及び、アニメキャラなどのグッズがあるオタクショップに行くことくらいだ。そういえば一週間前、オタクショップで美少女フィギュアの入った四角い大きな箱を何個も抱えながら走ってきたオタクと衝突したことを思い出した。今思い出しても腹が立つ。僕がアニメグッズを漁っている時に、視界外から衝撃が伝わってきた。完全相手からぶつかって来たのにも関わらず謝りも無しで、そのまま当たり屋のように通りすぎて行ったが、倒れて落としたフィギュアを集めている姿を、顔を僕は覚えていた。僕はこういうキモイオタクが嫌いだ。僕に友達が出来るとしたらオタクの様な自分でも見下せる人間くらいだろうが、オタクには関わりたくない。今の時代、人と関わらなくてもやっていけるのである。アニメにせよ実況動画にせよ。それを見ながら独りごちて突っ込んだり、コメントしたりすればそれで満たされるから、わざわざ生身で関わる必要も無いのである。今は娯楽を簡単に享受し、そしネットで簡単に人と関わった気分になれる。その時代背景が、僕の変わりたいという行動を抑制しているに違いなかった。
ニュースは宝くじの話題から一転し、いきなりオカルトのUMA探しに移ったと思いきや、なんと今ではそれを見つけた人に多額の賞金が貰えるという宝くじ的な話題で、少し繋がりのある内容だった。
なんでも、あの都市伝説上の生き物、ツチノコを見つけたら賞金1億円。そして、その見つけるイベントが大体的に一週間、団体で行うらしい。そのある村といえば、あの世界遺産で有名な白川村だった。
「どうしたの、そんなに大声出して」
「ママ、僕これに参加するから、一週間家空ける」
僕は、退屈な日常を変えるために参加することにした。昔、白川村に住むおじいちゃんからツチノコのことはよく聞かされていた。それだけに、僕には捕まえる自信があったのだ。
2ヶ月が経ち、イベント当日になった。今僕が住んでいる家から、車移動だ。もちろん僕は免許を持っていなかったので、ママの運転でここまで来た。この村に来るのも、おじいちゃん家に遊びに行った時以来で、5年振りくらいだ。
久しいが、あんなに寂れていた村が、余所者と言ってはなんだがそのような人々で埋め尽くされ、活気づいていた。
これも、政府が用意したツチノコイベントの効果で、村を発展させる意図もあるのかもしれない。
ツチノコイベントの参加者は、4から7名程度のチームに分けられる。そして、そのチームでツチノコを一週間協力して探すのだ。
周りを見ると、他の参加者達は、どうやら有料バスで来ていたようだ。まあこれだけ辺境の地だからほかの交通手段は自力の運転で来るしかないからそうなるだろう。
チーム分けは、どうやら現地のクジで行われるらしい。くじを引く列は長蛇となっており、並ぶのにテーマパークのアトラクションレベルで時間がかかった。クジはアルファベットでSと書かれていた。Sと書かれた大きな看板のたつ場所を探して歩き、その看板の前に行くと、もうそこには数人集まっていた。僕が行った途端に、イベントの係員は、何か手に持ったバインダーに挟んだメモに記入し、号令した。
「よし、S班揃ったね。君たち6人が今日から一週間ツチノコ探しの冒険を共にする仲間たちだ!」
その言葉と共に僕は、周りを見渡した。僕を含めた年齢性別バラバラの6人が互いに見合っていた。
「キャンプの場所とツチノコの出現情報があった森へ案内する。着いてきてくれ」
言葉通りに僕らは案内された。大きな広いキャンプ上へ行くために山道を数分歩いた。その途中、山道の下を流れる大きな川など雄大な自然を味わった。
「ねえ、あなたは、なんのために参加したの?」
案内の途中、一人の見た目が清楚で落ち着いたチームメンバーの女が話しかけてきた。僕よりも少し歳上に見えた。
「なんのためにかぁ、暇つぶし?」
「そう、、私は、家族に、私を見つけてもらうため」
「どういうこと?」
「理解できないのならそれでいいの」
そう言って、前の方へ歩いていってしまった。
僕は、適当に答えすぎてしまったかと後悔した。
「ここが君たちが寝泊まりするコテージだ」
コテージという名の木の家がずらりと森の中に沢山並んでいた。普段はバーベキューなどのイベント事で使用されているらしい。
「君たちはここで自給自足で一週間過ごしてもらう。自給自足とは言っても近くに野菜などは売ってるからそれを調理するだけだけどね。じゃあ次、ツチノコの場所を案内するよ」
係員はそう言って、また森の方へ歩き始めた。
木々の匂いと生い茂った草の香りがする。山道の下には川が流れ、川の匂いもした。泥や土、砂がある場所であったり、一点草原枯れ草がある場所であったりと、様々で広大だった。
「今歩いてきた全ての場所に、ツチノコは生息している可能性がある。そこからどこを絞って探すかは君たち次第だ。健闘を祈る」
こうして、僕たちのツチノコ探しは始まった。果たして、この広大な土地の中に、本当にツチノコはいるのだろうか。
一日目は、説明で日が暮れ、夜になり、コテージで、夕食みんなで作って決起集会を行うことになっていた。
「じゃあ、この日のために集まった6人のを祝って乾杯!」
チームの係員がそう声をかけて乾杯した。そこから自己紹介をする流れになった。
「自己紹介と行こう。じゃあ君から」
そう言って指名されたのはとても見た目がチャラそうな男だった。
「はーい、俺は、C大の菊地大河です!今回のツチノコ探索に参加したきっかけはノリでーすよろしくお願いしまーす」
C大って、僕と同じ大学じゃないか。なんかどこかで見たことあるような。どこかで聞いたことあるようなないような、、思えばよく学食で見るうるさい学生だった。
「私は、山本珠莉亜よろしくねー。私は、この村への観光ついでに参加したって感じでーす!」
次に自己紹介したのは僕と同じ年齢位の女だった。彼女は中南米系のハーフだろう。そんな顔つきをしていた。
「えー私は、青野 保則だ。私も彼らと同じくほんの暇つぶし程度だ。よろしく頼む」
青野という50代くらいの男性が渋い声で自己紹介をしていた。どこか見覚えのある顔をしていたがどこで見たかは覚えていなかった。
「えっとじゃあ次は私が」
少しの沈黙の後、僕と、眼鏡をかけたオタクと、女性が譲り合ってから、謙虚に女性が話し始めた。
「私は、遠野 理瑚といいます。参加したきっかけは、皆さんと同じで気分転換の様な感じです。よろしくお願いします」
遠野という女は、僕よりも少し年上のオーラを感じさせた。とても落ち着いた声で淡々とした自己紹介だった。
「じゃあぼ、僕が次行くよ。僕は小田 国男。き、君たちとは違って僕は、本当にツチノコの生態にロマンを感じて、ツチノコが好きだから参加した迄です。よろしくお願いいたします」
僕はその自己紹介を聞いてハッとした。この人は、あの時僕とぶつかったあのオタクだった。早口で吃音なのがオタクらしい喋り方だった。
「じゃあ、最後に僕ですね。僕は萩原 一仁と言います。参加理由は、退屈な日常を紛らわすためです。よろしくお願いします」
僕の挨拶の後決起集会ということで、料理を作りながら色々な話を咲かせていた。僕とオタクの小田以外が。
ツチノコ探索の一日目はあっという間に終わった。
2日目、ほかの班たちが早速、ツチノコ探しに向かう中、僕達はコテージの中で机を囲みあっていた。
「まず!ツチノコを捕まえる作戦を立てる!そういう事だったよな?小田」
チャラ男の菊地が食い気味でオタクの小田に話しかけた。
「そ、そうさ。闇雲に探しても見つからない! ツチノコには特殊な習性があるからね」
「その習性って?」
静かな女、遠野が聞いた。
「ツチノコは、トカゲと同じ変温動物でどんな環境でも基本的には順応できる。だからどんな場所にもいるそしてとにかく動きが速くて捕まえるのは難しい。これが意味すること分かるよね?」
「つまり、見つけることも難しければ、見つけても捕まることが難しいってことか」
オヤジの青野はそうまとめると、そういうことか~!と明るい女の山本が頷いていた。
「だ、だから、作戦としては罠を仕掛けるしかないんですよ」
「おー、罠かいいじゃねえか!お前もそう思うよな?」
菊地は喋らない僕に返答を振ってきた。
「う、うん」
「じゃあ、今日は罠を仕掛ける準備日にしようぜ!」
菊地の号令で、僕達は罠をしかけることになった。小田式ツチノコ捕獲用トラップの内容はこんなものだった。
まず、ツチノコの好物と思われる野菜やフルーツ、そして虫を枯葉の上に置いておく。枯葉の下は実は落とし穴になっていて、ツチノコがそれを食べようとすると重さで落とし穴に落ちるその反動で枯葉の上に仕掛けた蓋が降りてきてツチノコ捕らえるというトラップだ。
僕達はそのトラップを、草原のゾーン、川辺のゾーン、泥のゾーン、砂利のゾーン、そして森林のゾーンに5ずつ仕掛けた。
しかし翌日なり、その仕掛けを確認してみると、
「おい、全然いねえじゃねえか!」
「え、そんな!僕の計画が!」
小田のしかけた罠は掛かるどころか、そこら周りにツチノコが通った気配すらなく、そのままの状態だった。ツチノコ探索3日目にして、急に壁にぶち当たったのである。
「はは、またやればいいじゃないか」
「なんだ爺さん、余裕そうに笑いやがって何か策でもあるのか?」
と菊地は青野に聞いたが、青野は手を振った。
「いや、私は今この瞬間が楽しいんだよ。やはり世界は金じゃない」
「はあ?何呑気なこと言ってんだ」
「金ってどういうことですか?」
僕は、何か青野が大切なことを言おうとしているのでは無いかと思い、そう聞いた。
「世の中金だという言葉があるが、あれは嘘だ。私は4ヶ月前、宝くじを当てたんだ。それも1等を。で大金を得て、色んな贅沢をした。なのに2ヶ月たって何も喜びや楽しさを感じ無くなっていた。だが君たちの姿を見てこっちも楽しくなったよありがとう」
僕はそこで、青野があのニュースに出ていた、宝くじを当てた男だということを知った。
「俺たちは金のためにやってますけどね」
「それでもいいんだ。私には君たちが純粋にツチノコ探しを楽しんでいるように見えたから」
青野はどこか達観したかのようにそう言った。確かにはたから見たら、ツチノコ探しなんて子供が描く夢のような話で、大人が本気になって探しているのなんて馬鹿な話なのかもしれない。
「君たちは私より、若いだろ。これだけは言える。馬鹿なことを大真面目にやれるやつってかっこいいんだ」
そう言った青野の目は僕達よりも輝いていて、まるで子供のような綺麗な目をしていた。
僕達はその後、話し合った結果、ツチノコが好みそうな匂いを放つするめや髪の毛の焼いた匂いで誘き寄せる改良版小田式捕獲トラップを発案し、それを設置した。
4日目、改良版小田式ツチノコ捕獲トラップはまたもや不発した。そして、またもやコテージでの会議が始まった。
「小田くん、どういう事?あなたのトラップがダメなんじゃない?」
遠野はそう、小田を問い詰めていた。
僕は気づいていた。小田式トラップには足りない部分があることを。
みんなが、手を焼く中、菊地が僕に迫ってきた。
「おい、萩原。お前、俺たちになにか隠してるだろ?」
「え?どうしたの急に」
僕はとぼけたように菊地に聞き返した。
「気づいてないとでも思ったか。お前の表情見てたらわかる。何か隠してる顔だ」
「萩原くん、教えて。他になにか方法はないの?」
「じゃあ前提として、まず、ツチノコは全長30~80cmででかいヤツもいるんだだから落とし穴じゃはみ出してしまうやつもいる。だからでかい檻のトラップじゃないと。あと、ツチノコは意外と肉食なんだって言われてる。だからネズミやカエルの声を録音した音声を流してなんでもいいから肉を餌にするべきだ」
「す、すげぇ!萩原!お前やるじゃん!」
「まあ、これはおじいちゃんの受け売り、」
「でも、なんでそれを先に早く言わねえんだよ!!」
菊地にバンと背中を叩かれて、僕の言葉は途中で止まった。
僕は菊地を勘違いしていたかもしれない。他人に気を使えず、周りが見えていない人間だと思っていたが、そのむしろ真逆だったのだ。
「菊地。意外と周り見れててリーダーに向いてるんだな」
「お前ほどじゃねえよ。お前もチームワークのために黙ってたんだろ」
「じゃあ、みんな集めて伝えてくるわ!んじゃな!」
菊地はそう言って、みんなのもとへ駆けて行ったかと思うと急に立ち止まり、そして、言った。
「あ、あとお前、俺の親友になれ!俺、親友欲しかったんだ」
五日目、僕の萩原式ツチノコ捕獲トラップを作り、設置準備を行う日となった。
「クソ、クソ、なんであいつばっかり」
小田はまだごちゃごちゃと言いながら罠を張る作業に従事していた。
「おい!小田相変わらずうるせえぞー!黙って出来ねえのか!」
と菊地が叫ぶ。
「ほんとよ。黙って出来ないの?」
と冷静に遠野が毒づく。
「ええい、うるさいっ!」
その2人の声に小田は刺されていた。
「まあまあみんな。小田も頑張ってるんだし。アンタの頑張ってる姿、素敵だと思うけどね」
そう言って山本は小田のことを庇っていた。
「別に。僕はただ指示されたままやってるだけさ。従わないと菊地になんか言われそうだし」
「それでもやってるんだから偉いじゃん」
「なんなんだよ急に、ぼ、僕は二次元にしか興味無いぞ!」
「へぇ、本当に?私は君に興味あるけどなー」
「なんなんだよ。君も喋らず手を動かしたらどうだい」
「はーい。よーし、私も頑張るぞー!」
傍目から見て、この二人、とてもいい雰囲気にしか見えなかった。それを菊地も察したようで、僕に話しかけてきた。
「おい、親友。なんかあいつらいい感じじゃね?」
「うん。特に山本さんがね」
「なんだなんだ、あいつら付き合っちゃうのか!?」
「ちょっと、僕、確かめてくる」
「ああ、おい、親友!」
そう言って僕は、山本に話しかけに行くことにした。僕が他人に話しかけることなど中々ないが、正直とても興味があった。なんであんなクソオタクに惚れているのか、生命科学的興味だ。
「山本さん、小田のどこがいいの?」
「はぁ!?あんた、なによ!!」
「ごめんなさい」
「いや、別に、、いいわよ。ホントの事だし」
怒られたかと思い、即答で謝ったが、どうやら
図星で照れ隠しに、怒った感じの言い草になったようなツンデレ感満載の反応だった。
「で、どこがいいの?」
「私、これまで、何もやるにしてもノリで周りにばっか合わせて、ずっと一歩後ろで眺めて楽しんでた。でも、小田を見て気づかされたの。本当の楽しみは、のめり込んで、熱狂して、最前線で全力を尽くすことだって。そしたらなんかかっこよく見えてきちゃって、それでね」
「ああもうわかったから、それでいい」
「何よ、ここからが本番なのに」
「でも、それってツチノコ探しにも言えることだよ」
「え?」
僕の以外な言葉に、山本は素っ頓狂な反応をした。
「視野を広げるから見つかるんじゃない。逆に視野を狭めて、それに集中するから見えてくるんだってことさ」
6日目、昨日、あれだけみんなで協力して仕掛けた罠。
それを一個ずつ確かめていった。
かかりなし、かかりなし。
草原のゾーン、川辺のゾーン、泥のゾーン、砂利のゾーンの罠は全てかかりがなかった。そして、最後のゾーン森林のゾーン、かかりなし。かかりなし。どんどんと罠の数が減っていく事に、次第にみんなの期待感が募る。今度こそは、今度の一個にはツチノコがいるんじゃないか!いてくれ!そんな声が聞こえてくるようだった。
そして、最後の罠。一個。
「これが最後か」
「これが正真正銘のラストってことだな」
「私は、いるって信じる」
「私もよ」
「私も同じ気持ちだよ」
「ぼ、僕もだ。絶対にいるだろ!」
「じゃあ、開けるよ」
そう言って、最後の檻を確認する。
そこには、僕たちが夢にまで見たあの幻のツチノコが居た!
「キャーーー!」
山本は、叫んで小田に抱きついた。
「こ、これが本当の愛ってやつか」
小田はそう言って顔を真っ赤にして倒れた。小田が初めて、愛を知った瞬間であった。
そして、7日目。結果発表と解散式の日を迎えていた。朝、とても良い目覚めだった。ツチノコを僕達は見つけたのだ。
後は、それを団体の前でお披露目してヒーローとなり大金を貰うだけだった。
「え?あれ!?」
僕は誰よりも朝早起きをして、彼に挨拶をしようと思った。しかし、彼が居ないのだ。こんな小さな籠にいれていた。見つけられないはずがない。一緒に入れた枯れ木とか小さな葉っぱで隠れているのか、それこそ土の中に潜っているのか。いいやその気配すらない。
「ツチノコが逃げた、、?」
大変だ。なんてことだ。みんなを起こさないと。
僕はみんなをすぐに起こして、ツチノコがいなくなっていることを伝えた。みんなの反応は驚きと悲しみだった。
「ごめん僕がずっと寝ずに見ていれば、、」
「いいのよ。別に。それに、他に見つけられたものがあったでしょう」
「確かにそうだね。でも君にもあったの?」
僕は遠野にそう聞いた。遠野だけはまだ発見できてなかったからだ。
「今朝、親から電話があってツチノコよく見つけたなって。迎えに来てくれるみたい」
彼女は泣いたような顔で笑って言った。
「それは良かった」
僕は、大きく頷いて笑った。みんなはツチノコが消えて悲しんでいたけど、僕は消えてよかったと思った。人間はあるものを安心する毎日を送るより、無いものを追いかける方がイキイキする。それは青野さんが教えてくれた。
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