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狐の嫁入り
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男は、この世の俗世から離れた生活を送っていた。大工の家庭に生まれ、父親の跡を継いだ。男は、大雑把な父親とは違い、緻密で真面目な男だった。そんな男は、大工としての仕事と勉強に自分の人生の時間を費やし、誰からも慕われる一人前の大工になった。その男の名は、片倉 慎之助。大工仲間からは之助と呼ばれていた。
之助は、給料日も、誕生日も、どんな祝い事があろうとなかろうと、飲み屋にはほとんど行かなかった。大工仲間が女遊びにかまけている間、之助は一人仕事のことばかり考えていた。之助も人間で、一人の男であるから、そのような俗な事に興味が無いわけではなかった。しかし、周りからの信頼と客のことを考えると、やらねばならぬという責任感が彼を仕事に掻き立てていた。
ある時、之助は古い神社の修繕に当たることになった。その神社は、稲荷神社であり、赤い鳥居をくぐり抜けると、狐の石像が待ち受けていた。その石像を手入れしながら、神社の神主である依頼人は之助達大工に忠告した。
「お稲荷さんは、好き嫌いがありまして、嫌われた方は具合が悪くなるので、もしそうなられた方は私に言ってください。だからと言って怖がるとそれもまたお嫌いになられますので注意してください」
大工たちがざわざわとしていたが、私はそれよりも仕事の内容が気になり質問した。
「結構、老朽化が進んでますね。ここは古いんですか?」
「ええもうだいぶになります、狐の里の伝承を知っておられますか?その時からあるのです」
「なるほど。それで、依頼の本社の屋根の穴は?」
「ああ、こちらです」
狐の里の伝承か。それは、この地方に住んでいる者なら誰でも知っている。狐たちが人のように生活している里で、そこに迷い込んでしまったものは帰ってこない。狐隠しに遭うというものだ。そもそも存在しているのかも分からない。地図上に里など存在しないというものもいれば、霧や雨風が吹き荒れる時にだけ現れるというもの。様々だ。「狐だけには絶対に近づいてはならぬ」と母がよく言っていたな。母は昔、よく狐の話をした。母の話で特に印象的だったのは、狐隠しにあったものは、男ばかりであるという話だ。狐は女にしか化けれないという言い伝えがあり、絶世の美女に化け、人間の男を誘惑する。そして、里へ招き入れられ、狐隠しに遭う。そして、惚れさせた男だけを狐は同じ狐として化かすことが出来るらしい。狐になった男は一生狐として生きていかなければならないという恐ろしい話だ。
「之助!おい!之助!トンカチ取ってくれ!」
「ああ、悪い」
「おいどうした、お前らしくないな。具合でも悪いのか?」
「いや別になんでもない!」
之助は、話を思い出して少し手を止めていたが、いつも通り集中して仕事をするモードに入った。そうなると之助を止められる者は誰一人としていなかった。とてつもない集中力で修繕していく。ほとんどの仕事を彼一人が賄っているかのような仕事量だった。夕暮れの神社、同僚達が仕事を終えて帰る中、之助だけは居残りで修繕作業に当たっていた。自分が頑張らなければ、作業は予定通り進まないと思ったからだ。手が疲れてきて少し作業をとめた時、神社の奥の茂みが揺れる音がした。何事かと思いそちらを見つめると、その茂みから現れたのは、一匹の真っ白な狐だった。その狐は此方へのそのそと近づいてくる。之助は思わず、その狐と目を合してしまった。狐の方も之助の方をじっと見ていた。その時、之助の頭の中で母の声が呼び起こされれた。「狐には絶対に近づいてはならぬ」之助ははっとして、後退しようとしたが、それを辞めて逆に狐の方へ近づいた。之助はあることに気づいたのである。白い狐の左後ろ足に切り傷があり、血を流していた。それに気づいた之助は母の忠告など気にせず、身体が勝手に動いていた。之助は、大工道具入れの中から、綺麗なバンダナを取りだしそれを狐の足に巻きつけてやった。狐は満足したかのように、こちらを見つめながら踵を返して、茂みへ戻っていった。之助はこれまでの大工仕事で依頼人の無理難題な要求に出来るだけ応えてきた。だから困っているものは狐だろうがなんだろうが放ってはおけなかった。これまで仕事で培ってきた滅私奉公の精神の賜物だったろう。
数日経ち、神社での仕事を終えた之助の身体に、異変が起きていた。どうも熱っぽく身体がだるい。仕事に全てを捧げてきた男は、徹底した体調管理で40年間、これまで一度も身体を壊した事がなかった。そんな之助が仕事にいけないほどに体調を崩していたのである。これまでの仕事での疲れが祟ったのだろうか、それともなにか他に理由があるのだろうか。之助は考えたが、分からず、とりあえず病院にかかることにした。
「先生、どうなんです?ただの風邪ですよね?」
「はっきり申し上げますと、、癌ですね。それも末期の」
「そんな!」
「持って後、1ヶ月って所でしょう」
之助はその場で項垂れた。あと一ヶ月で人生が終わる。仕事のこともそうだが、他にやりたい事も色々あるかもしれない。それなのにあと一ヶ月だなんて。
之助は、体調が治ると、その病を隠しながら働いた。まだまだ未熟な同僚達に仕事を任せるのは不安であったし、彼らからの信頼も感じていての事だった。そうして、あっという間に1ヶ月が過ぎようとしていた。之助は残りの日々を贅沢に過ごしたかったので、出来るだけ豪勢な料理を食べるようになった。高級料理店へ出かけた。
そんなある日、高級料理店でいつも通り食事をしていると、カウンターの隣の席に若い女が座った。女は寿司をいくつか注文した後、之助に話しかけた。
「こういう店よく来るんですか?」
「えぇ、最近は」
「そうなんですね」
之助は、若い女と話す機会なんてこれまでほとんど無かったのでどう話していいのか分からなかった。しかも、女の顔を見ると、たまげたもんで、生まれてこの方お目にかかったこともないような絶世の美女だった。会話はそこで途切れ、お互いに黙ったまま食事をしていた。之助の食事が終わろうとする頃、また女の方から話しかけてきた。
「あの、あなたどこか悪いんですか?」
「えぇ。もう余命もわずかなんで、こういう高い店で飲んでるんです」
「そうだったんですね」
之助は、顔色が相当悪くなっていたし、以前より食が細くなり、痩せてきていた。赤の他人から見ても具合が悪そうな見た目になっていることは自覚していたので、彼女が病気に気づくことも不思議ではなかったし、之助は正直に答えた。
「私、いい医者知ってるんです。その人なら治してくれるかも」
「いや、もう末期で手の施しようがないんですよ」
「そうなんですか、、でも、」
女は食い下がらない感じで言い淀む。
「なにか?」
「じゃあ、私の家に来ませんか?」
「え?」
女は少し照れたようにそう言う。之助は少し迷ってから、彼女について行くことにした。もう人生が終わる。之助だって最後くらい楽しい思いをしたかった。
席たって、一緒に店を出ると、彼女のスタイルの良さが際立つ。和服を着ていて、足が長く見えた。首筋と足首から垣間見える肌は雪のように白く、透き通るようにきめ細やかだった。
「そのバンダナ、綺麗ですね」
「ああこれ。最近ある人から貰ったんです」
彼女は、足にバンダナを巻いていた。そのバンダナは、着物とは不釣り合いな模様で目立っていた。之助は、そのバンダナがあの狐に渡した物と似ているなと思った。
彼女について行くと、急に山道に入り、登っては下りを繰り返していく。真夜中の山道を行灯の光一つでずんずんと進んでいく。その足取りに迷いは無かった。
「こんな森の奥深くに家があるんですか?」
「ええ、もう少しです!」
彼女は振り向かずにそう答えた。その通りに少し山道を下ったあと、綺麗な明かりに照らされた村があった。里とも言うべきか、その里の一際大きな民家を彼女は指さした。
「あれが私の家なんです」
之助は家に向かいれられ、口を開けた。
「でもなぜ、私を招き入れてくれたんですか?」
「えっとそれは恥ずかしくて言えません」
女は照れながら首を振った。その仕草がとても愛らしかった。
「私に気があるんですか?」
つい私はそう直接的に問うてしまった。
「えっと、あの、はい。そうです、、あなたの事が気になっていて。良ければ私とここで暮らして欲しいなと思ったので」
彼女は恥じらいながらそう言った。だが、私にはひとつの疑念や思い残したこともあった。
「気持ちはとても嬉しいです。ですが残りの人生、故郷で暮らしたいと思っています」
「そんなっ、、!」
彼女は言葉を失って、本当に心底落ち込んだ顔をして俯いた。そんな彼女にどう言葉をかけていいのか悩んだ末に之助はこう言った。
「あなたが、私の家で暮らすことは出来ませんか?」
彼女はそれを快く快諾した。之助も彼女の表情や仕草を見る度に愛らしさを感じ、彼女の事が好きになっていった。
之助はそう言えば名前を聞いていないなと思い、後に自己紹介をした。彼女は洋子という名前らしい。之助は慎之助と名乗り、之助と呼んで欲しいと言った。
之助は洋子と暮らし始めて、これまで一度も味わったことの無い幸福感を得た。之助は病で体調が優れない日が続いたが、洋子は優しく、之助のために尽くしてくれた。この幸せな日々は、仕事では味わえない充実感だった。
そしてある日、平凡で、何事もない一日に之助は告白した。
「洋子、私と結婚してくれないか」
「はい。もちろんです。之助さん」
こうして、之助と洋子は、結婚した。幸せの絶頂だった。そして之助は結婚式を開かないかと洋子に言った。大工仲間たちも集めて盛大にやりたかった。死ぬ間際の些細な夢だった。しかし、洋子はそれを拒否した。
「どうして結婚式に出たくないの?」
「ごめんなさい、どうしても結婚式には出たくないの」
「そうか、なら仕方ないね。君が嫌だということは私もしたくない」
あの之助が結婚したという噂は、瞬く間に広まっていった。もちろん噂になるのは相手がどんな女かである。しかし洋子はあまり表に顔を出さず、毎日家にいることが多かった。それもそのはず。毎日之助を看病しなければならなかったからだ。
そんなある時事件が起こった。
洋子は、外に出るタイミングがある。それは洗濯物を外に干す時であった。その時に、之助の大工仲間の奥さんである野次馬の美津子おばさんが洋子の姿を被写体に収めようとカメラのフラッシュを炊いた。そこに映ったのは、真っ白な狐であったのだ。
「ぎゃー!!」
「何事だ!」
之助は昼寝をしていたが、大声で家から出てきた。
そこには尻もちを着いた美津子おばさんが真っ白な狐を指さしていた。
「あの狐、女に化けていたのよ!!」
その声とともに、真っ白な狐は、その場から立ち去ろうと素早く逃げようとする。
「待て!洋子!」
その狐に向かって之助は叫び、呼び止めた、
「私は、君が薄々そうなんじゃないかと思っていた。でも、それでもいいと思っていた!君が何者でも私は君を愛している!」
そう之助が言うと、真っ白な狐の姿をした洋子は、人間の姿に化けて戻った。はだけかけた着物を直し、目には涙を貯めていた。
「之助さん、、、本当?」
「本当だ」
之助はそう強く行ってから、洋子の元へ近づき、抱擁した。
「良かった、、、ありがとう...」
「そんな、、之助あんた!その狐に騙されてるわよ!!!」
と美津子おばさんが叫ぶ。
「彼女は、騙したりなんかしない!」
それを之助は制した。之助は誰に何を言われようとも、洋子を庇った。
しかし、瞬く間にその噂は広がり、之助を見る周りの目は変わっていった。病気でおかしくなった可哀想な人という扱いで、狐と一緒に村から追い出せという意見が村の総意となっていった。そうじゃない者もいたが、狐の怖さは誰もが知っていて、誰もが恐れていたので口出しはできなかった。
「之助さん、ごめんなさい私のせいで」
洋子は之助にずっと謝っていた。
「いいんだ。洋子といられればそれで十分だから」
しかし彼女は、少し不満げな顔をした。そして、言いずらそうに間を開けてから、口を開いた。
「之助さん、私は洋子って名乗ってたけどそれは里で決められた人を騙すときの作られた偽名なの。だから私は本当の名前が欲しい。あなたに新しい名前を名付けてもらいたい!」
それは、切実な人としての、願いだった。人になれば誰しもが欲しいと思う自分の名前。そして一生その名前を背負っていく。そんな名前という物。之助はそんな重大なものを自分が決めていいものかと思ったが、すぐにこれというものが思いついた。それは、彼女と初めてであった時の印象から連想した名前だった。彼女の肌の毛並みの輝くような白さから。
「白輝、、君のその輝くような白さから考えたんだけど、どうかな?」
「白輝、、、いい名前。ありがとう」
彼女はその言葉を、深く味わうように、そして胸に刻むように何度も言い重ねた。その姿だけで心底喜んでいることが伝わった。
之助と白輝は、村を後にして、狐の里へ到着した。里に着くや否や、ある狐に呼び出され、狐の里でいちばん大きな宮殿のような場所に行った。そこには、尻尾が9本に分かれた九尾と呼ばれる大きな狐が、王座に君臨していた。そして、狐の姿のまま、人語を発した。
「御主が之助か。おい娘、何故まだ人間の姿なんじゃ。早く狐の姿にせんか」
「主様、ごめんなさい。之助さんを狐にすることはできません」
「なんだと?お前、私に逆らう気か。それがどうなることを意味するか分かっておるな?」
「ええ、承知の上でございます」
「フッ、お前にしてはよく覚悟が決まってるじゃあないか、よし、ならば望み通り」
「ちょっと待ってくれ!!!」
之助はそこで、大声で割り込んだ。
「ああ?」
「白輝!私を、狐にしてくれ」
「え!?」
白輝は、驚いたように口を開けた。
「いいん、、ですか?」
「ああ、そうすれば病も治るんだろ」
之助は里に来る前に、白輝に本来の目的、あの日、何故之助に声をかけたかの真意を聞いてきた。
之助と出会ったのはあの境内での出来事であり、それは間違いない。そこで、之助に手当され白輝は目をつけた。狐が求める陽の因子を持ったポジティブで強い男だと確信したからである。しかし、助けられた思いと、之助の生い立ちや現状を知り、好意が芽生えてしまう。本来なら、一度、里へ連れてきた時に、その病を直せる医者がいるという口実を作って、狐にするつもりだった。しかし惚れてしまった白輝にそんな騙すような真似は出来なかったのだ。実際問題、狐になれば、全ての人間の病は治るのである。その代わり、人間には一生戻ることは出来ない。
「でも、一生戻れないのですよ!」
「それでもいいよ。君といられるならそれでいい」
「、、わかりました」
之助は、覚悟を決めて、目をゆっくりと閉じた。それが人として瞼を閉じる最後の瞬間だった。
之助は人ではなくなった。そして、狐として一生を生きていくこととなった。
今頃、元いた村では私が狐隠しに遭い、狐にされ、哀れまれたり、悲しまれたりしているかもしれないと之助は思った。これまでも、そのような狐隠しにあったものはいて、不幸になった者もいるだろう。しかし、之助は幸福であった。なぜなら、本当に愛してくれる白輝という存在に出逢えたからである。それだけで、之助は満足だった。男は最後に愛を知れたのである。
狐の里の宮殿では瞬く間に白輝と之助の噂が広まっていて、女狐達の話題はそれに尽きなかった。
「結局、あの生真面目そうな人間の男も私たちの仲間になったのねー」
「でもあの子に人を騙す才能があったなんてね!いやはや私達も狐だけど狐は怖いわ!」
そう言っている女狐達にもう一匹の女狐が会話に加わった。
「何言ってるのあなた達。あの子の目をちゃんと見た?」
「どういうことよ?」
「私は人に化けたことも多いし、人の世で何年も暮らしてきたから分かるけど、あの子の目、本当に人間の女のような目をしていた」
「ってことは騙したんじゃなくて、本当にあの子はっ、、、!」
「そうよ。だって、あの目の輝きは、私たち狐には出来ないものだもの」
之助と暮らす白輝の目は、真珠のように毎日輝きを放っていた。白輝は毎日が楽しくて幸せだった。狐もまた、狐が知ることの出来ぬ、人間の愛を知ることが出来たのである。
之助は、給料日も、誕生日も、どんな祝い事があろうとなかろうと、飲み屋にはほとんど行かなかった。大工仲間が女遊びにかまけている間、之助は一人仕事のことばかり考えていた。之助も人間で、一人の男であるから、そのような俗な事に興味が無いわけではなかった。しかし、周りからの信頼と客のことを考えると、やらねばならぬという責任感が彼を仕事に掻き立てていた。
ある時、之助は古い神社の修繕に当たることになった。その神社は、稲荷神社であり、赤い鳥居をくぐり抜けると、狐の石像が待ち受けていた。その石像を手入れしながら、神社の神主である依頼人は之助達大工に忠告した。
「お稲荷さんは、好き嫌いがありまして、嫌われた方は具合が悪くなるので、もしそうなられた方は私に言ってください。だからと言って怖がるとそれもまたお嫌いになられますので注意してください」
大工たちがざわざわとしていたが、私はそれよりも仕事の内容が気になり質問した。
「結構、老朽化が進んでますね。ここは古いんですか?」
「ええもうだいぶになります、狐の里の伝承を知っておられますか?その時からあるのです」
「なるほど。それで、依頼の本社の屋根の穴は?」
「ああ、こちらです」
狐の里の伝承か。それは、この地方に住んでいる者なら誰でも知っている。狐たちが人のように生活している里で、そこに迷い込んでしまったものは帰ってこない。狐隠しに遭うというものだ。そもそも存在しているのかも分からない。地図上に里など存在しないというものもいれば、霧や雨風が吹き荒れる時にだけ現れるというもの。様々だ。「狐だけには絶対に近づいてはならぬ」と母がよく言っていたな。母は昔、よく狐の話をした。母の話で特に印象的だったのは、狐隠しにあったものは、男ばかりであるという話だ。狐は女にしか化けれないという言い伝えがあり、絶世の美女に化け、人間の男を誘惑する。そして、里へ招き入れられ、狐隠しに遭う。そして、惚れさせた男だけを狐は同じ狐として化かすことが出来るらしい。狐になった男は一生狐として生きていかなければならないという恐ろしい話だ。
「之助!おい!之助!トンカチ取ってくれ!」
「ああ、悪い」
「おいどうした、お前らしくないな。具合でも悪いのか?」
「いや別になんでもない!」
之助は、話を思い出して少し手を止めていたが、いつも通り集中して仕事をするモードに入った。そうなると之助を止められる者は誰一人としていなかった。とてつもない集中力で修繕していく。ほとんどの仕事を彼一人が賄っているかのような仕事量だった。夕暮れの神社、同僚達が仕事を終えて帰る中、之助だけは居残りで修繕作業に当たっていた。自分が頑張らなければ、作業は予定通り進まないと思ったからだ。手が疲れてきて少し作業をとめた時、神社の奥の茂みが揺れる音がした。何事かと思いそちらを見つめると、その茂みから現れたのは、一匹の真っ白な狐だった。その狐は此方へのそのそと近づいてくる。之助は思わず、その狐と目を合してしまった。狐の方も之助の方をじっと見ていた。その時、之助の頭の中で母の声が呼び起こされれた。「狐には絶対に近づいてはならぬ」之助ははっとして、後退しようとしたが、それを辞めて逆に狐の方へ近づいた。之助はあることに気づいたのである。白い狐の左後ろ足に切り傷があり、血を流していた。それに気づいた之助は母の忠告など気にせず、身体が勝手に動いていた。之助は、大工道具入れの中から、綺麗なバンダナを取りだしそれを狐の足に巻きつけてやった。狐は満足したかのように、こちらを見つめながら踵を返して、茂みへ戻っていった。之助はこれまでの大工仕事で依頼人の無理難題な要求に出来るだけ応えてきた。だから困っているものは狐だろうがなんだろうが放ってはおけなかった。これまで仕事で培ってきた滅私奉公の精神の賜物だったろう。
数日経ち、神社での仕事を終えた之助の身体に、異変が起きていた。どうも熱っぽく身体がだるい。仕事に全てを捧げてきた男は、徹底した体調管理で40年間、これまで一度も身体を壊した事がなかった。そんな之助が仕事にいけないほどに体調を崩していたのである。これまでの仕事での疲れが祟ったのだろうか、それともなにか他に理由があるのだろうか。之助は考えたが、分からず、とりあえず病院にかかることにした。
「先生、どうなんです?ただの風邪ですよね?」
「はっきり申し上げますと、、癌ですね。それも末期の」
「そんな!」
「持って後、1ヶ月って所でしょう」
之助はその場で項垂れた。あと一ヶ月で人生が終わる。仕事のこともそうだが、他にやりたい事も色々あるかもしれない。それなのにあと一ヶ月だなんて。
之助は、体調が治ると、その病を隠しながら働いた。まだまだ未熟な同僚達に仕事を任せるのは不安であったし、彼らからの信頼も感じていての事だった。そうして、あっという間に1ヶ月が過ぎようとしていた。之助は残りの日々を贅沢に過ごしたかったので、出来るだけ豪勢な料理を食べるようになった。高級料理店へ出かけた。
そんなある日、高級料理店でいつも通り食事をしていると、カウンターの隣の席に若い女が座った。女は寿司をいくつか注文した後、之助に話しかけた。
「こういう店よく来るんですか?」
「えぇ、最近は」
「そうなんですね」
之助は、若い女と話す機会なんてこれまでほとんど無かったのでどう話していいのか分からなかった。しかも、女の顔を見ると、たまげたもんで、生まれてこの方お目にかかったこともないような絶世の美女だった。会話はそこで途切れ、お互いに黙ったまま食事をしていた。之助の食事が終わろうとする頃、また女の方から話しかけてきた。
「あの、あなたどこか悪いんですか?」
「えぇ。もう余命もわずかなんで、こういう高い店で飲んでるんです」
「そうだったんですね」
之助は、顔色が相当悪くなっていたし、以前より食が細くなり、痩せてきていた。赤の他人から見ても具合が悪そうな見た目になっていることは自覚していたので、彼女が病気に気づくことも不思議ではなかったし、之助は正直に答えた。
「私、いい医者知ってるんです。その人なら治してくれるかも」
「いや、もう末期で手の施しようがないんですよ」
「そうなんですか、、でも、」
女は食い下がらない感じで言い淀む。
「なにか?」
「じゃあ、私の家に来ませんか?」
「え?」
女は少し照れたようにそう言う。之助は少し迷ってから、彼女について行くことにした。もう人生が終わる。之助だって最後くらい楽しい思いをしたかった。
席たって、一緒に店を出ると、彼女のスタイルの良さが際立つ。和服を着ていて、足が長く見えた。首筋と足首から垣間見える肌は雪のように白く、透き通るようにきめ細やかだった。
「そのバンダナ、綺麗ですね」
「ああこれ。最近ある人から貰ったんです」
彼女は、足にバンダナを巻いていた。そのバンダナは、着物とは不釣り合いな模様で目立っていた。之助は、そのバンダナがあの狐に渡した物と似ているなと思った。
彼女について行くと、急に山道に入り、登っては下りを繰り返していく。真夜中の山道を行灯の光一つでずんずんと進んでいく。その足取りに迷いは無かった。
「こんな森の奥深くに家があるんですか?」
「ええ、もう少しです!」
彼女は振り向かずにそう答えた。その通りに少し山道を下ったあと、綺麗な明かりに照らされた村があった。里とも言うべきか、その里の一際大きな民家を彼女は指さした。
「あれが私の家なんです」
之助は家に向かいれられ、口を開けた。
「でもなぜ、私を招き入れてくれたんですか?」
「えっとそれは恥ずかしくて言えません」
女は照れながら首を振った。その仕草がとても愛らしかった。
「私に気があるんですか?」
つい私はそう直接的に問うてしまった。
「えっと、あの、はい。そうです、、あなたの事が気になっていて。良ければ私とここで暮らして欲しいなと思ったので」
彼女は恥じらいながらそう言った。だが、私にはひとつの疑念や思い残したこともあった。
「気持ちはとても嬉しいです。ですが残りの人生、故郷で暮らしたいと思っています」
「そんなっ、、!」
彼女は言葉を失って、本当に心底落ち込んだ顔をして俯いた。そんな彼女にどう言葉をかけていいのか悩んだ末に之助はこう言った。
「あなたが、私の家で暮らすことは出来ませんか?」
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「洋子、私と結婚してくれないか」
「はい。もちろんです。之助さん」
こうして、之助と洋子は、結婚した。幸せの絶頂だった。そして之助は結婚式を開かないかと洋子に言った。大工仲間たちも集めて盛大にやりたかった。死ぬ間際の些細な夢だった。しかし、洋子はそれを拒否した。
「どうして結婚式に出たくないの?」
「ごめんなさい、どうしても結婚式には出たくないの」
「そうか、なら仕方ないね。君が嫌だということは私もしたくない」
あの之助が結婚したという噂は、瞬く間に広まっていった。もちろん噂になるのは相手がどんな女かである。しかし洋子はあまり表に顔を出さず、毎日家にいることが多かった。それもそのはず。毎日之助を看病しなければならなかったからだ。
そんなある時事件が起こった。
洋子は、外に出るタイミングがある。それは洗濯物を外に干す時であった。その時に、之助の大工仲間の奥さんである野次馬の美津子おばさんが洋子の姿を被写体に収めようとカメラのフラッシュを炊いた。そこに映ったのは、真っ白な狐であったのだ。
「ぎゃー!!」
「何事だ!」
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「あの狐、女に化けていたのよ!!」
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その狐に向かって之助は叫び、呼び止めた、
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「之助さん、、、本当?」
「本当だ」
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「良かった、、、ありがとう...」
「そんな、、之助あんた!その狐に騙されてるわよ!!!」
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しかし、瞬く間にその噂は広がり、之助を見る周りの目は変わっていった。病気でおかしくなった可哀想な人という扱いで、狐と一緒に村から追い出せという意見が村の総意となっていった。そうじゃない者もいたが、狐の怖さは誰もが知っていて、誰もが恐れていたので口出しはできなかった。
「之助さん、ごめんなさい私のせいで」
洋子は之助にずっと謝っていた。
「いいんだ。洋子といられればそれで十分だから」
しかし彼女は、少し不満げな顔をした。そして、言いずらそうに間を開けてから、口を開いた。
「之助さん、私は洋子って名乗ってたけどそれは里で決められた人を騙すときの作られた偽名なの。だから私は本当の名前が欲しい。あなたに新しい名前を名付けてもらいたい!」
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「白輝、、君のその輝くような白さから考えたんだけど、どうかな?」
「白輝、、、いい名前。ありがとう」
彼女はその言葉を、深く味わうように、そして胸に刻むように何度も言い重ねた。その姿だけで心底喜んでいることが伝わった。
之助と白輝は、村を後にして、狐の里へ到着した。里に着くや否や、ある狐に呼び出され、狐の里でいちばん大きな宮殿のような場所に行った。そこには、尻尾が9本に分かれた九尾と呼ばれる大きな狐が、王座に君臨していた。そして、狐の姿のまま、人語を発した。
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「ええ、承知の上でございます」
「フッ、お前にしてはよく覚悟が決まってるじゃあないか、よし、ならば望み通り」
「ちょっと待ってくれ!!!」
之助はそこで、大声で割り込んだ。
「ああ?」
「白輝!私を、狐にしてくれ」
「え!?」
白輝は、驚いたように口を開けた。
「いいん、、ですか?」
「ああ、そうすれば病も治るんだろ」
之助は里に来る前に、白輝に本来の目的、あの日、何故之助に声をかけたかの真意を聞いてきた。
之助と出会ったのはあの境内での出来事であり、それは間違いない。そこで、之助に手当され白輝は目をつけた。狐が求める陽の因子を持ったポジティブで強い男だと確信したからである。しかし、助けられた思いと、之助の生い立ちや現状を知り、好意が芽生えてしまう。本来なら、一度、里へ連れてきた時に、その病を直せる医者がいるという口実を作って、狐にするつもりだった。しかし惚れてしまった白輝にそんな騙すような真似は出来なかったのだ。実際問題、狐になれば、全ての人間の病は治るのである。その代わり、人間には一生戻ることは出来ない。
「でも、一生戻れないのですよ!」
「それでもいいよ。君といられるならそれでいい」
「、、わかりました」
之助は、覚悟を決めて、目をゆっくりと閉じた。それが人として瞼を閉じる最後の瞬間だった。
之助は人ではなくなった。そして、狐として一生を生きていくこととなった。
今頃、元いた村では私が狐隠しに遭い、狐にされ、哀れまれたり、悲しまれたりしているかもしれないと之助は思った。これまでも、そのような狐隠しにあったものはいて、不幸になった者もいるだろう。しかし、之助は幸福であった。なぜなら、本当に愛してくれる白輝という存在に出逢えたからである。それだけで、之助は満足だった。男は最後に愛を知れたのである。
狐の里の宮殿では瞬く間に白輝と之助の噂が広まっていて、女狐達の話題はそれに尽きなかった。
「結局、あの生真面目そうな人間の男も私たちの仲間になったのねー」
「でもあの子に人を騙す才能があったなんてね!いやはや私達も狐だけど狐は怖いわ!」
そう言っている女狐達にもう一匹の女狐が会話に加わった。
「何言ってるのあなた達。あの子の目をちゃんと見た?」
「どういうことよ?」
「私は人に化けたことも多いし、人の世で何年も暮らしてきたから分かるけど、あの子の目、本当に人間の女のような目をしていた」
「ってことは騙したんじゃなくて、本当にあの子はっ、、、!」
「そうよ。だって、あの目の輝きは、私たち狐には出来ないものだもの」
之助と暮らす白輝の目は、真珠のように毎日輝きを放っていた。白輝は毎日が楽しくて幸せだった。狐もまた、狐が知ることの出来ぬ、人間の愛を知ることが出来たのである。
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