日本列島各地の旨いもの巡りの旅

黒蓬

文字の大きさ
4 / 20

第4話 宮城の海と杜の都の恵み

しおりを挟む
東北地方を巡る旅の第四の舞台は、宮城県。新幹線で仙台駅に降り立った早瀬真希を迎えたのは、温暖な冬の空気と「杜の都」と呼ばれる穏やかな景色だった。街路樹のケヤキ並木が夕陽に照らされ、黄金色に輝いている。

「仙台か。美味しいものがたくさんありそうね。」

真希は旅への期待を胸に、最初の目的地である松島へ向かった。松島湾に浮かぶ無数の島々が作り出す絶景は、日本三景の一つに数えられている。

松島に到着した真希は、まず名物の「牡蠣小屋」を訪れることにした。冬の松島は牡蠣のシーズン真っ只中で、新鮮な牡蠣が地元の名物として知られている。

「いらっしゃいませ!牡蠣食べ放題はいかがですか?」

店員の元気な声に誘われ、真希はテーブルに案内された。目の前には焼き牡蠣、蒸し牡蠣、生牡蠣がずらりと並び、その香ばしい香りが食欲をそそる。

「これが松島の牡蠣か…いただきます!」

焼き牡蠣を一つ手に取り、殻を慎重に開けると、中からふっくらとした身が顔を出した。一口食べれば、口の中いっぱいに広がる海の旨味とジューシーな食感に驚かされる。

「新鮮だからこその味ですね。クリーミーで濃厚…まさに絶品!」

隣の席に座っていた地元の漁師が、笑顔で話しかけてきた。

「松島の牡蠣は、湾の穏やかな水流のおかげでこんなに美味しくなるんですよ。養殖だけど、自然の恵みをたっぷり吸ってるんだ。」

真希は漁師の話を聞きながら、牡蠣の魅力をメモに記した。

次に訪れたのは、瑞巌寺《ずいがんじ》。千年以上の歴史を持つこの禅寺は、松島の象徴的な観光地の一つだ。静かな境内を歩きながら、真希は心が洗われるような気持ちになった。

「こういう場所で過ごすと、時間がゆっくり流れている気がする。」

案内してくれた僧侶が、寺の歴史や地域との関わりについて語ってくれた。

「この地域の人々は、自然とともに生きてきました。松島の美しい景色も、寺の静けさも、全てが調和しているんです。」

真希はその言葉に深く共感した。

仙台市内に戻った真希は、地元名物の牛たんを堪能するため、老舗の「たん政」という店を訪れた。宮城の牛たんは、他県のものとは一線を画す厚みとジューシーさで知られている。

「いらっしゃいませ。初めてのご来店ですか?」

店員の勧めで、定番の牛たん焼き定食を注文することにした。ご飯、テールスープ、漬物とともに運ばれてきた牛たんは、見るからに香ばしく焼き上げられている。

「これは…見るからに美味しそう。」

真希は一口頬張り、柔らかくジューシーな牛たんの食感と、絶妙に効いた塩加減に驚いた。

「噛むたびに旨味が出てくる…これが仙台の牛たんなんですね!」

「そうなんです。この厚みと焼き方がこだわりなんですよ。」

店員の説明に耳を傾けながら、真希はこの料理の完成度に感動していた。

最後に訪れたのは、定義如来《じょうぎにょらい》の参道にある「三角あぶらげ」の店だ。この三角形の揚げ豆腐は、地元の人々に長く愛されてきた一品で、その香ばしさとふっくらとした食感が特徴だ。

「これが有名な三角あぶらげですか?」

「はい、出来たてなのでそのままでも美味しいですし、お醤油を少しつけても最高ですよ。」

一口食べた真希は、その香ばしさとふんわりした食感に驚いた。

「揚げ物なのに全然重たくない。大豆の甘さもしっかり感じられるんですね。」

地元の店員との会話を楽しみながら、真希は宮城の味覚の豊かさを再確認した。

宿に戻った真希は、ノートを広げて記事を書き始めた。松島の牡蠣、仙台の牛たん、そして三角あぶらげ。それぞれの料理が持つ魅力と、地域の歴史や人々の思いが織り交ざったエピソードを丁寧に綴った。

「次は秋田…どんな出会いが待っているんだろう。」

期待を胸に、真希は明日の旅に思いを馳せながら眠りについた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...