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プロンプト一行分のミステリ――ChatGPTに「ミステリ小説を書いて」と言っただけの小説
第8話 読者という容疑者
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桐生先生から「少し話をしたい」とメールが届いたのは、
ワードファイルを開いた翌日の朝だった。
放課後、図書室に来てもらえるか。
例のレポートのことも含めて、
いくつか確認したいことがある。
件名は相変わらず素っ気ない「相談の件」。
十年前と同じ文体で、少しだけ胸がざわつく。
「先生からですか」
昼休み、LINEで事情を説明すると、
由利はすぐに既読をつけてきた。
行きましょう。
“読者という容疑者”の話をするタイミングかもしれません。
妙にサブタイトルみたいなことを言う。
放課後の図書室は、
午前中の静けさとも、昼休みのざわつきとも違う空気をまとっていた。
自習をする生徒が数人。
窓際でうつ伏せになって寝ている子もいる。
十年前の自分も、きっと似たような風景の中に混ざっていたのだろう。
「こっちだ」
桐生先生は、
僕たちを見るなり奥の小さな打ち合わせスペースへ手招きした。
丸いテーブルの上には、
例のワードファイルを印刷した紙束と、
さらに何枚かのコピーが置かれている。
「昨日送ったレポート、全部読んだ?」
「はい」
僕が答えると、
先生は「そうか」と頷き、
紙束の一番上を指で押さえた。
「正直、改めて読み直してみて、
かなりショックを受けたよ」
「ショック、ですか」
由利が問い返す。
「当時も“ちょっと危ういな”とは思っていた。
でもそれは、文学的な意味での“危うさ”だと思っていたんだ。
現実に直結するとは、あまり考えていなかった」
先生は、ゆっくりと言葉を選んでいる。
「『図書室から消えるなら、物理的じゃなく物語として』なんて、
高校生が書くには鋭すぎる視点だと思った。
でも、授業のレポートとしては優等生な範囲に収まっているから、
あまり踏み込んで話をしなかった」
「もしあのとき、もっと踏み込んで話していたら、
何か変わっていたと思いますか」
由利の質問は、
司書というよりカウンセラーみたいだった。
桐生先生は、少しだけ苦笑する。
「それは、十年間に何度も自分に問い続けたことだよ。
答えは、分からない。
ただ一つ言えるのは――
僕は彼女の“物語としての失踪願望”に気づいていながら、
それを“創作の才能”としてしか評価しなかった、ということだ」
「先生のせいじゃないですよ」
僕は、とっさに口を挟んでいた。
自分でも驚くほどの速さだった。
「たぶん、誰が見ても“ちょっと尖った文章書く子だな”くらいにしか思わなかったはずだし。
十年前に“これは実際の失踪計画だ”なんて見抜ける人間がいたら、
そいつの方が怖いです」
先生は、少しだけ目を細める。
「君がそう言ってくれるのはありがたいが、
教師というのはどうしても“見抜けなかった側”の責任を抱えがちでね」
その言い方には、
十年分の重さが滲んでいた。
「ところで」
先生は、紙束をめくりながら話題を変える。
「このレポートの後半、
“図書室から消える話”のアイデアが出てくるあたりから、
君たちが見つけたノートの内容とほとんど同じだろう?」
「はい」
由利が答える。
「“十年後、市立図書館の貸出記録に名前が一度だけ残る”っていうアイデアも、
ノートと同じように書かれていました」
「その部分を当時読んだとき、
僕は“まあ、よくできたプロットだな”くらいにしか思わなかった」
先生は、悔しそうに笑う。
「『犯人はまだ登場していない』という一文も、
“メタ的な言い回しが好きなんだな”としか」
「先生は、その“犯人”が、
十年後の誰かを指していたかもしれないとは思わなかったんですか」
僕が尋ねると、
先生は少しだけ首をかしげた。
「正直に言うと――
そこまで深読みはしなかった。
ただ、あの子が自分の人生を“物語”として捉えようとしていることには、
薄々気づいていた」
「“人生の主人公を降りたい”というやつですね」
「そう。
あの言い方は、やっぱり単なる比喩ではなかったんだろうな」
先生は一呼吸おいてから、
僕たちをじっと見る。
「君たちは、どう考えている?」
「どう、とは」
「この“十年後のラストショット”が、
実際に市立図書館のシステム上に現れたことについてだよ」
先生は、
ゆっくりと言葉をつなぐ。
「それを“ただの偶然”と見るか、
“如月さんの計画の一部が実行された”と見るか。
あるいは、全く別の何かと捉えるか」
由利と目を合わせる。
ここで“全部話すかどうか”を一瞬迷ったが、
結局、僕は観念した。
「先生。
あの貸出記録は、おそらく意図的に作られたものです」
「意図的に?」
僕らは、
図書館で調べたログのこと、
SYSTEMユーザーのこと、
ホワイトボードのパスワードの件――
今のところ分かっている事実を、
できるだけ冷静に説明した。
先生は、腕を組んだまま黙って聞いていたが、
SYSTEMユーザーの話に差しかかったところで、
眉間に皺を寄せた。
「そんな杜撰な管理がされていたのか」
「去年の夏から秋にかけての話らしいです。
先生がここで働いているあいだにも、
市立図書館とのやり取りはありましたよね?」
由利が慎重に尋ねる。
「資料のやり取りやイベントの打ち合わせで、
何度か行ったことはある。
館長室にも入った」
「そのとき、ホワイトボードに何か書いてあるのを見た記憶は?」
「……正直、覚えていない」
先生は、少しだけ目線を落とした。
「授業計画だのイベント日程だの、
いろいろ書いてあったことはあるけど。
アルファベットと数字の羅列もあったかもしれない。
ただ、それを“パスワードだ”と意識したことはなかった」
「もし、それがSYSTEMユーザーのパスワードだと知っていたら、
先生はどうしていたと思いますか」
由利の質問は、
半分は確認で、半分は試しているようにも聞こえた。
桐生先生は、少し考えてから答える。
「たぶん、館長に注意しただろうな。
“こんなところにパスワードを書いたら危ないですよ”って」
「自分でメモしておこうとは?」
「思わないな」
先生は、はっきり首を振った。
「僕はそういう“裏口”を使うタイプじゃない。
少なくとも、自分ではそう思っている」
「“自分では”ですか」
気づけば、僕は妙な聞き返し方をしていた。
先生は、苦笑する。
「君はちゃんとミステリ研の教えを守っているようだね。
まず身内を疑え、というやつ」
「先生のことを疑っているわけじゃ――」
「いいんだ」
先生は手を上げて制した。
「疑ってくれて構わない。
君たちが今やっているのは、
十年前の事件と、その“続き”についての本格的な調査なんだろう。
そこに遠慮は要らない」
そう言うと、
先生は少しだけ姿勢を正した。
「少なくとも、
2025年2月3日の夜に、
僕が市立図書館に行ってSYSTEMユーザーでログインした事実はない。
その日はたしかに残業していたが、
校内で会議をしていた。
記録も残っているはずだ」
「分かりました」
由利が頷く。
「すみません、失礼を承知でお聞きしました」
「謝らなくていい。
君たちは今、“読者としての容疑者”にもなっているんだ」
「読者としての、ですか」
先生の言葉に、
僕は少し身を乗り出す。
「如月さんのノートやレポートを読んで、
“続きを書く役目”を与えられている人間たち、という意味だよ」
先生は、ワードファイルのあるページを開く。
『もしもこの話に犯人がいるとしたら、
それは“私を物語の主人公から降ろした人”じゃなくて、
“私に続きを書かせようとした人”だと思う。』
「この一文を、
十年前の僕は“かっこつけた言い回しだな”としか思わなかった」
先生は、少し苦い笑みを浮かべる。
「でも、今読むと、
君たちに向けられた挑戦状のようにも見える」
「僕たちに?」
「ミステリ研の先輩と後輩、
そして当時の顧問。
この三者は、彼女の“物語”に最も近い読者だった」
先生は指を折って数える。
「ノートを預かったのは僕だ。
ブログの存在にいち早く気づいたのは黒川さんだ。
そして今、AIに続きを書かせながら現実の事件も追っているのが成瀬くんだ」
「……三人とも、見事に容疑者ですね」
由利が、疲れたような笑い方をする。
「もちろん、
十年前の時点で“十年後のラストショット”を実行できる立場になるとは、
彼女も具体的には想像していなかっただろう。
でも、こうして現実に“読者たちが動いている”のを見ると、
彼女の狙いは、半分以上成功しているのかもしれない」
先生の言葉は、
少しだけ悔しさと、
どこか誇らしさが混じっていた。
「だからこそ、
誰がSYSTEMユーザーでログインしたかだけに囚われてしまうと、
大事なものを見失うかもしれない」
「大事なもの?」
「この物語が、
“誰のものとして続いていくのか”という問いだよ」
先生は、ゆっくりと僕を見る。
「AIに続きを書かせるのも、
如月さんの望んだ展開の一つかもしれない。
でも同時に、
君自身が、自分の言葉で何かを書かない限り、
この話はいつまでも“他人任せの物語”のままだ」
それは、
ミステリの講義というより、
創作論の説教に近かった。
「先生」
僕は、思わず口を開いていた。
「じゃあ、先生はどうなんですか」
「どう、とは」
「十年間、ノートを預かった“読者”として。
先生は、この物語に何か続きを書こうとしたことはありましたか」
少し意地悪な問いだと思った。
でも、聞かずにはいられなかった。
桐生先生は、
しばらく黙ってから、小さく息を吐く。
「正直に言おう。
僕は、怖かったんだ」
「怖かった?」
「如月さんの物語に、
自分が手を加えることが」
先生は、ノートの表紙をそっと撫でる。
「もしもここに、
“十年後に図書館の貸出記録に自分の名前を残す”とまで書いてあったとしても、
その計画を現実に動かすことは、
僕にはできなかったと思う」
「それは、“犯人になりたくなかった”からですか」
由利の問いに、
先生は静かに頷く。
「そうだろうね。
おそらく僕は、
“読者でいる責任”からも、
“書き手として関わる責任”からも逃げていたんだ」
「じゃあ、
先生は少なくとも“ラストショットの実行犯”ではない、
ということでいいですか」
僕が意地悪半分、本気半分で確認すると、
先生は苦笑しながら言った。
「そう思ってもらって構わない。
もちろん、ミステリ的には“ここで自白した犯人”というパターンもあるが」
「それ、いちばん安っぽいやつです」
由利がすかさず突っ込む。
先生は、そのやり取りに少しだけ安心したような顔をした。
「前任のシステム担当の方のこと、
もう少し詳しく教えてもらえますか」
図書室を出る前に、
由利が尋ねた。
「例のOBの人だよ」
先生は、廊下を歩きながら説明する。
「名字は真鍋。
僕の一つ下の代の卒業生で、
昔から“機械に強い変わり者”として有名だった」
「如月の失踪事件のことも知っていたんですか」
「知っていたはずだ。
当時、同窓会のMLで話題になったこともあったし、
何より、彼は――」
先生は、少し言いよどんでから続ける。
「ミステリ研のOBでもあった」
「……出ましたね」
由利が、わざとらしく肩を落とす。
「ミステリ研OBで、
市立図書館のシステム担当をしていて、
高校図書室との連携で何度も顔を出していて、
しかも館長室のパスワードも知りうる立場」
「犯人セットとしては完璧すぎますね」
僕も苦笑する。
「ただし、僕は彼を“そんなことをするやつだ”とは思いたくない」
先生は、少し真面目な顔に戻る。
「彼は確かに変わり者だが、
根は真面目で、図書館システムに誇りを持っていた。
十年前の事件の話をしたときも、
“記録が残らないというのは腹立たしいですね”と真剣に怒っていたよ」
「その人、今はどこにいるんですか」
「市役所の情報政策課。
ただ、図書館システムの外部委託が決まってからは、
現場に出てくることは減ったらしい」
「名前と部署が分かれば、
私は市立図書館の仕事として問い合わせできます」
由利が淡々と言う。
「“システムログの件で確認したいことがある”って言えば、
不自然じゃないですし」
「そこまでやるのかい」
先生の声には、
心配と期待が半々に混ざっているように聞こえた。
「ここまで来たら、
やらない方が不自然じゃないですか」
僕が代わりに答える。
「十年前、如月が“犯人はまだ登場していない”って書いた物語に、
今ようやく“登場人物が揃い始めてる”感じなんで」
「そうだな」
先生は、少しだけ笑った。
「君たちは本当に、
ミステリ研らしいやり方で現実と付き合おうとする」
「褒め言葉として受け取っておきます」
そう言って頭を下げると、
先生は「気をつけろよ」とだけ言った。
「犯人捜しをしていると、
時々、自分が犯人になってしまうこともあるからね」
図書室を出たあとの帰り道、
由利と二人で駅に向かいながら、
僕はさっきの言葉を反芻していた。
犯人捜しをしていると、
時々、自分が犯人になってしまうこともある。
「先生、いいこと言いますね」
由利がぼそっと言う。
「ミステリ研顧問、伊達じゃない」
「でも、実際問題として」
僕は歩調を合わせながら続ける。
「今のところの容疑者リストって、
かなり狭まってきてるよな」
「そうですね」
由利は指を折って数えた。
「1. 市立図書館の館長
2. 前任のシステム担当・真鍋さん
3. ミステリ研OB兼高校教員・桐生先生
4. 図書館司書でありブログ読者でありSYSTEMログにアクセスできる自分
5. ミステリ研元部長でありAIのユーザーであり十年前の事件の“読者”である先輩」
「最後の二人、
急に自己申告感が強くなったな」
「でもフェアプレイのためには、
自分たちもちゃんとリストに入れとかないと」
由利は、真顔で言う。
「“視点人物だから犯人じゃない”ってルールも、
別に絶対じゃないですし」
「やめろ、そのメタな反則技をさらっと口にするの」
歩道橋の上で立ち止まり、
線路を見下ろす。
夕方の電車が、
轟音を立てて通り過ぎていく。
十年前、同じ場所から何度も見送った電車よりも、
少しだけ車体が新しくなっているように見えた。
「ねえ、先輩」
「ん?」
「もし、この話が“犯人を一人に決めないエンド”だったら、
先輩は納得できますか」
「どういう意味だ」
「SYSTEMユーザーで貸出処理した“実行犯”は誰か、
ってレベルでは一応答えが出るとしても……」
由利は、
夕焼けの空を見上げながら言う。
「十年前の失踪、
十年後のラストショット、
AIを巻き込んだ続編作り――
その全部に関わっている“犯人”って、
一人じゃない気がするんですよね」
「“共同正犯”ってやつか」
「法律的な話じゃなくて、
物語的な意味で」
由利の表情は、
どこか寂しそうでもあり、
少しだけ楽しそうでもあった。
「如月先輩が種を蒔いて、
先生がノートを預かって、
真鍋さんがシステムを作って、
館長がパスワード管理をサボって、
私がログに気づいて、
先輩がAIに続きを書かせた」
ひとつひとつ挙げていく。
「どれが欠けても、
“2025年のこの物語”は生まれてなかったと思うんです」
「それはまあ、そうだろうな」
「だから、
誰か一人を指さして“こいつが犯人です”って終わらせるより、
“私たち全員が、この物語の共犯者でした”って方が、
綺麗な終わり方かもしれない」
「ミステリとしては読者に怒られそうだけどな」
「ですね」
由利は苦笑する。
「でも、如月先輩がノートに書いてたじゃないですか。
“犯人を雑に決めないでください”って」
「だからって“雑に決めない”を突き詰めた結果、
“全員犯人です”はさすがにやり過ぎだろ」
「そのへんのバランスを考えるのが、
“続きを書く読者”の仕事なんでしょうね」
由利は、そう言って小さく肩をすくめた。
家に帰ると、
メールの受信箱に見慣れない送信者名が増えていた。
差出人:真鍋 俊
件名:市立図書館システムログの件
本文を開くと、
思っていたよりもずっと短い文が並んでいた。
市立図書館司書・黒川様
筑星高校の桐生先生から、
図書館システムのログについて問い合わせがあったと伺いました。
2月3日の19:42の記録の件ですね。
あの記録については、
実は私も以前から奇妙に思っておりました。
もしよろしければ、
直接お会いしてお話ししたいことがあります。
来週火曜の夜、
市役所近くの喫茶店でいかがでしょうか。
お二人(黒川様と、桐生先生の元教え子の方)で来ていただいて構いません。
どうか、
この件を“ただのシステム不具合”で片付けないでください。
真鍋 俊
「……なんか、“真打ち登場”って感じね」
由利から転送されてきたメールを読みながら、
僕は思わずつぶやく。
十年前の失踪。
十年後のラストショット。
ログの密室。
AIに残響するブログの声。
そのすべてに、
何らかの形で関わっているかもしれない人物からの、
呼び出し。
これで、第八章の終わりにしては、
出来過ぎなくらいの引きだと思った。
“犯人はまだ登場していない”
十年前に如月遥がそう書いた物語に、
ようやく“最後の容疑者”が顔を出そうとしている。
読者としての僕たちが、
その招待にどう応えるか。
その選択が、
このミステリの結末を決めることになるのだろう。
選択されていません選択されていません
ChatGPT の回答
ワードファイルを開いた翌日の朝だった。
放課後、図書室に来てもらえるか。
例のレポートのことも含めて、
いくつか確認したいことがある。
件名は相変わらず素っ気ない「相談の件」。
十年前と同じ文体で、少しだけ胸がざわつく。
「先生からですか」
昼休み、LINEで事情を説明すると、
由利はすぐに既読をつけてきた。
行きましょう。
“読者という容疑者”の話をするタイミングかもしれません。
妙にサブタイトルみたいなことを言う。
放課後の図書室は、
午前中の静けさとも、昼休みのざわつきとも違う空気をまとっていた。
自習をする生徒が数人。
窓際でうつ伏せになって寝ている子もいる。
十年前の自分も、きっと似たような風景の中に混ざっていたのだろう。
「こっちだ」
桐生先生は、
僕たちを見るなり奥の小さな打ち合わせスペースへ手招きした。
丸いテーブルの上には、
例のワードファイルを印刷した紙束と、
さらに何枚かのコピーが置かれている。
「昨日送ったレポート、全部読んだ?」
「はい」
僕が答えると、
先生は「そうか」と頷き、
紙束の一番上を指で押さえた。
「正直、改めて読み直してみて、
かなりショックを受けたよ」
「ショック、ですか」
由利が問い返す。
「当時も“ちょっと危ういな”とは思っていた。
でもそれは、文学的な意味での“危うさ”だと思っていたんだ。
現実に直結するとは、あまり考えていなかった」
先生は、ゆっくりと言葉を選んでいる。
「『図書室から消えるなら、物理的じゃなく物語として』なんて、
高校生が書くには鋭すぎる視点だと思った。
でも、授業のレポートとしては優等生な範囲に収まっているから、
あまり踏み込んで話をしなかった」
「もしあのとき、もっと踏み込んで話していたら、
何か変わっていたと思いますか」
由利の質問は、
司書というよりカウンセラーみたいだった。
桐生先生は、少しだけ苦笑する。
「それは、十年間に何度も自分に問い続けたことだよ。
答えは、分からない。
ただ一つ言えるのは――
僕は彼女の“物語としての失踪願望”に気づいていながら、
それを“創作の才能”としてしか評価しなかった、ということだ」
「先生のせいじゃないですよ」
僕は、とっさに口を挟んでいた。
自分でも驚くほどの速さだった。
「たぶん、誰が見ても“ちょっと尖った文章書く子だな”くらいにしか思わなかったはずだし。
十年前に“これは実際の失踪計画だ”なんて見抜ける人間がいたら、
そいつの方が怖いです」
先生は、少しだけ目を細める。
「君がそう言ってくれるのはありがたいが、
教師というのはどうしても“見抜けなかった側”の責任を抱えがちでね」
その言い方には、
十年分の重さが滲んでいた。
「ところで」
先生は、紙束をめくりながら話題を変える。
「このレポートの後半、
“図書室から消える話”のアイデアが出てくるあたりから、
君たちが見つけたノートの内容とほとんど同じだろう?」
「はい」
由利が答える。
「“十年後、市立図書館の貸出記録に名前が一度だけ残る”っていうアイデアも、
ノートと同じように書かれていました」
「その部分を当時読んだとき、
僕は“まあ、よくできたプロットだな”くらいにしか思わなかった」
先生は、悔しそうに笑う。
「『犯人はまだ登場していない』という一文も、
“メタ的な言い回しが好きなんだな”としか」
「先生は、その“犯人”が、
十年後の誰かを指していたかもしれないとは思わなかったんですか」
僕が尋ねると、
先生は少しだけ首をかしげた。
「正直に言うと――
そこまで深読みはしなかった。
ただ、あの子が自分の人生を“物語”として捉えようとしていることには、
薄々気づいていた」
「“人生の主人公を降りたい”というやつですね」
「そう。
あの言い方は、やっぱり単なる比喩ではなかったんだろうな」
先生は一呼吸おいてから、
僕たちをじっと見る。
「君たちは、どう考えている?」
「どう、とは」
「この“十年後のラストショット”が、
実際に市立図書館のシステム上に現れたことについてだよ」
先生は、
ゆっくりと言葉をつなぐ。
「それを“ただの偶然”と見るか、
“如月さんの計画の一部が実行された”と見るか。
あるいは、全く別の何かと捉えるか」
由利と目を合わせる。
ここで“全部話すかどうか”を一瞬迷ったが、
結局、僕は観念した。
「先生。
あの貸出記録は、おそらく意図的に作られたものです」
「意図的に?」
僕らは、
図書館で調べたログのこと、
SYSTEMユーザーのこと、
ホワイトボードのパスワードの件――
今のところ分かっている事実を、
できるだけ冷静に説明した。
先生は、腕を組んだまま黙って聞いていたが、
SYSTEMユーザーの話に差しかかったところで、
眉間に皺を寄せた。
「そんな杜撰な管理がされていたのか」
「去年の夏から秋にかけての話らしいです。
先生がここで働いているあいだにも、
市立図書館とのやり取りはありましたよね?」
由利が慎重に尋ねる。
「資料のやり取りやイベントの打ち合わせで、
何度か行ったことはある。
館長室にも入った」
「そのとき、ホワイトボードに何か書いてあるのを見た記憶は?」
「……正直、覚えていない」
先生は、少しだけ目線を落とした。
「授業計画だのイベント日程だの、
いろいろ書いてあったことはあるけど。
アルファベットと数字の羅列もあったかもしれない。
ただ、それを“パスワードだ”と意識したことはなかった」
「もし、それがSYSTEMユーザーのパスワードだと知っていたら、
先生はどうしていたと思いますか」
由利の質問は、
半分は確認で、半分は試しているようにも聞こえた。
桐生先生は、少し考えてから答える。
「たぶん、館長に注意しただろうな。
“こんなところにパスワードを書いたら危ないですよ”って」
「自分でメモしておこうとは?」
「思わないな」
先生は、はっきり首を振った。
「僕はそういう“裏口”を使うタイプじゃない。
少なくとも、自分ではそう思っている」
「“自分では”ですか」
気づけば、僕は妙な聞き返し方をしていた。
先生は、苦笑する。
「君はちゃんとミステリ研の教えを守っているようだね。
まず身内を疑え、というやつ」
「先生のことを疑っているわけじゃ――」
「いいんだ」
先生は手を上げて制した。
「疑ってくれて構わない。
君たちが今やっているのは、
十年前の事件と、その“続き”についての本格的な調査なんだろう。
そこに遠慮は要らない」
そう言うと、
先生は少しだけ姿勢を正した。
「少なくとも、
2025年2月3日の夜に、
僕が市立図書館に行ってSYSTEMユーザーでログインした事実はない。
その日はたしかに残業していたが、
校内で会議をしていた。
記録も残っているはずだ」
「分かりました」
由利が頷く。
「すみません、失礼を承知でお聞きしました」
「謝らなくていい。
君たちは今、“読者としての容疑者”にもなっているんだ」
「読者としての、ですか」
先生の言葉に、
僕は少し身を乗り出す。
「如月さんのノートやレポートを読んで、
“続きを書く役目”を与えられている人間たち、という意味だよ」
先生は、ワードファイルのあるページを開く。
『もしもこの話に犯人がいるとしたら、
それは“私を物語の主人公から降ろした人”じゃなくて、
“私に続きを書かせようとした人”だと思う。』
「この一文を、
十年前の僕は“かっこつけた言い回しだな”としか思わなかった」
先生は、少し苦い笑みを浮かべる。
「でも、今読むと、
君たちに向けられた挑戦状のようにも見える」
「僕たちに?」
「ミステリ研の先輩と後輩、
そして当時の顧問。
この三者は、彼女の“物語”に最も近い読者だった」
先生は指を折って数える。
「ノートを預かったのは僕だ。
ブログの存在にいち早く気づいたのは黒川さんだ。
そして今、AIに続きを書かせながら現実の事件も追っているのが成瀬くんだ」
「……三人とも、見事に容疑者ですね」
由利が、疲れたような笑い方をする。
「もちろん、
十年前の時点で“十年後のラストショット”を実行できる立場になるとは、
彼女も具体的には想像していなかっただろう。
でも、こうして現実に“読者たちが動いている”のを見ると、
彼女の狙いは、半分以上成功しているのかもしれない」
先生の言葉は、
少しだけ悔しさと、
どこか誇らしさが混じっていた。
「だからこそ、
誰がSYSTEMユーザーでログインしたかだけに囚われてしまうと、
大事なものを見失うかもしれない」
「大事なもの?」
「この物語が、
“誰のものとして続いていくのか”という問いだよ」
先生は、ゆっくりと僕を見る。
「AIに続きを書かせるのも、
如月さんの望んだ展開の一つかもしれない。
でも同時に、
君自身が、自分の言葉で何かを書かない限り、
この話はいつまでも“他人任せの物語”のままだ」
それは、
ミステリの講義というより、
創作論の説教に近かった。
「先生」
僕は、思わず口を開いていた。
「じゃあ、先生はどうなんですか」
「どう、とは」
「十年間、ノートを預かった“読者”として。
先生は、この物語に何か続きを書こうとしたことはありましたか」
少し意地悪な問いだと思った。
でも、聞かずにはいられなかった。
桐生先生は、
しばらく黙ってから、小さく息を吐く。
「正直に言おう。
僕は、怖かったんだ」
「怖かった?」
「如月さんの物語に、
自分が手を加えることが」
先生は、ノートの表紙をそっと撫でる。
「もしもここに、
“十年後に図書館の貸出記録に自分の名前を残す”とまで書いてあったとしても、
その計画を現実に動かすことは、
僕にはできなかったと思う」
「それは、“犯人になりたくなかった”からですか」
由利の問いに、
先生は静かに頷く。
「そうだろうね。
おそらく僕は、
“読者でいる責任”からも、
“書き手として関わる責任”からも逃げていたんだ」
「じゃあ、
先生は少なくとも“ラストショットの実行犯”ではない、
ということでいいですか」
僕が意地悪半分、本気半分で確認すると、
先生は苦笑しながら言った。
「そう思ってもらって構わない。
もちろん、ミステリ的には“ここで自白した犯人”というパターンもあるが」
「それ、いちばん安っぽいやつです」
由利がすかさず突っ込む。
先生は、そのやり取りに少しだけ安心したような顔をした。
「前任のシステム担当の方のこと、
もう少し詳しく教えてもらえますか」
図書室を出る前に、
由利が尋ねた。
「例のOBの人だよ」
先生は、廊下を歩きながら説明する。
「名字は真鍋。
僕の一つ下の代の卒業生で、
昔から“機械に強い変わり者”として有名だった」
「如月の失踪事件のことも知っていたんですか」
「知っていたはずだ。
当時、同窓会のMLで話題になったこともあったし、
何より、彼は――」
先生は、少し言いよどんでから続ける。
「ミステリ研のOBでもあった」
「……出ましたね」
由利が、わざとらしく肩を落とす。
「ミステリ研OBで、
市立図書館のシステム担当をしていて、
高校図書室との連携で何度も顔を出していて、
しかも館長室のパスワードも知りうる立場」
「犯人セットとしては完璧すぎますね」
僕も苦笑する。
「ただし、僕は彼を“そんなことをするやつだ”とは思いたくない」
先生は、少し真面目な顔に戻る。
「彼は確かに変わり者だが、
根は真面目で、図書館システムに誇りを持っていた。
十年前の事件の話をしたときも、
“記録が残らないというのは腹立たしいですね”と真剣に怒っていたよ」
「その人、今はどこにいるんですか」
「市役所の情報政策課。
ただ、図書館システムの外部委託が決まってからは、
現場に出てくることは減ったらしい」
「名前と部署が分かれば、
私は市立図書館の仕事として問い合わせできます」
由利が淡々と言う。
「“システムログの件で確認したいことがある”って言えば、
不自然じゃないですし」
「そこまでやるのかい」
先生の声には、
心配と期待が半々に混ざっているように聞こえた。
「ここまで来たら、
やらない方が不自然じゃないですか」
僕が代わりに答える。
「十年前、如月が“犯人はまだ登場していない”って書いた物語に、
今ようやく“登場人物が揃い始めてる”感じなんで」
「そうだな」
先生は、少しだけ笑った。
「君たちは本当に、
ミステリ研らしいやり方で現実と付き合おうとする」
「褒め言葉として受け取っておきます」
そう言って頭を下げると、
先生は「気をつけろよ」とだけ言った。
「犯人捜しをしていると、
時々、自分が犯人になってしまうこともあるからね」
図書室を出たあとの帰り道、
由利と二人で駅に向かいながら、
僕はさっきの言葉を反芻していた。
犯人捜しをしていると、
時々、自分が犯人になってしまうこともある。
「先生、いいこと言いますね」
由利がぼそっと言う。
「ミステリ研顧問、伊達じゃない」
「でも、実際問題として」
僕は歩調を合わせながら続ける。
「今のところの容疑者リストって、
かなり狭まってきてるよな」
「そうですね」
由利は指を折って数えた。
「1. 市立図書館の館長
2. 前任のシステム担当・真鍋さん
3. ミステリ研OB兼高校教員・桐生先生
4. 図書館司書でありブログ読者でありSYSTEMログにアクセスできる自分
5. ミステリ研元部長でありAIのユーザーであり十年前の事件の“読者”である先輩」
「最後の二人、
急に自己申告感が強くなったな」
「でもフェアプレイのためには、
自分たちもちゃんとリストに入れとかないと」
由利は、真顔で言う。
「“視点人物だから犯人じゃない”ってルールも、
別に絶対じゃないですし」
「やめろ、そのメタな反則技をさらっと口にするの」
歩道橋の上で立ち止まり、
線路を見下ろす。
夕方の電車が、
轟音を立てて通り過ぎていく。
十年前、同じ場所から何度も見送った電車よりも、
少しだけ車体が新しくなっているように見えた。
「ねえ、先輩」
「ん?」
「もし、この話が“犯人を一人に決めないエンド”だったら、
先輩は納得できますか」
「どういう意味だ」
「SYSTEMユーザーで貸出処理した“実行犯”は誰か、
ってレベルでは一応答えが出るとしても……」
由利は、
夕焼けの空を見上げながら言う。
「十年前の失踪、
十年後のラストショット、
AIを巻き込んだ続編作り――
その全部に関わっている“犯人”って、
一人じゃない気がするんですよね」
「“共同正犯”ってやつか」
「法律的な話じゃなくて、
物語的な意味で」
由利の表情は、
どこか寂しそうでもあり、
少しだけ楽しそうでもあった。
「如月先輩が種を蒔いて、
先生がノートを預かって、
真鍋さんがシステムを作って、
館長がパスワード管理をサボって、
私がログに気づいて、
先輩がAIに続きを書かせた」
ひとつひとつ挙げていく。
「どれが欠けても、
“2025年のこの物語”は生まれてなかったと思うんです」
「それはまあ、そうだろうな」
「だから、
誰か一人を指さして“こいつが犯人です”って終わらせるより、
“私たち全員が、この物語の共犯者でした”って方が、
綺麗な終わり方かもしれない」
「ミステリとしては読者に怒られそうだけどな」
「ですね」
由利は苦笑する。
「でも、如月先輩がノートに書いてたじゃないですか。
“犯人を雑に決めないでください”って」
「だからって“雑に決めない”を突き詰めた結果、
“全員犯人です”はさすがにやり過ぎだろ」
「そのへんのバランスを考えるのが、
“続きを書く読者”の仕事なんでしょうね」
由利は、そう言って小さく肩をすくめた。
家に帰ると、
メールの受信箱に見慣れない送信者名が増えていた。
差出人:真鍋 俊
件名:市立図書館システムログの件
本文を開くと、
思っていたよりもずっと短い文が並んでいた。
市立図書館司書・黒川様
筑星高校の桐生先生から、
図書館システムのログについて問い合わせがあったと伺いました。
2月3日の19:42の記録の件ですね。
あの記録については、
実は私も以前から奇妙に思っておりました。
もしよろしければ、
直接お会いしてお話ししたいことがあります。
来週火曜の夜、
市役所近くの喫茶店でいかがでしょうか。
お二人(黒川様と、桐生先生の元教え子の方)で来ていただいて構いません。
どうか、
この件を“ただのシステム不具合”で片付けないでください。
真鍋 俊
「……なんか、“真打ち登場”って感じね」
由利から転送されてきたメールを読みながら、
僕は思わずつぶやく。
十年前の失踪。
十年後のラストショット。
ログの密室。
AIに残響するブログの声。
そのすべてに、
何らかの形で関わっているかもしれない人物からの、
呼び出し。
これで、第八章の終わりにしては、
出来過ぎなくらいの引きだと思った。
“犯人はまだ登場していない”
十年前に如月遥がそう書いた物語に、
ようやく“最後の容疑者”が顔を出そうとしている。
読者としての僕たちが、
その招待にどう応えるか。
その選択が、
このミステリの結末を決めることになるのだろう。
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