捨てられ聖女は、王太子殿下の契約花嫁。彼の呪いを解けるのは、わたしだけでした。

鷹凪きら

文字の大きさ
39 / 68
4章

39 お友達

しおりを挟む

「さすがにあそこに乗り込むのは失礼よ、セレナ」
「でもスーリア、こんな機会はめったにないじゃない?」
「そうだけど……ってちょっとっ!」

 声のした方を見ると、シェラたちのいるガゼボへと歩いてくる、二人の女性の姿が見えた。
 それは、見覚えのある――

「王太子殿下、妃殿下、ごきげんよう。お二人でお楽しみのところ申し訳ありませんが、少しお時間をいただけませんか?」

 そう言って、淡い色の長い金髪の女性が、きれいなカーテシーをした。
 彼女は第三王子の妃である、セレナ。
 そしてその隣に並んだのは、第二王子の妃であるスーリアだ。タークブラウンの髪をさらりと揺らしながら、こちらもきれいな挨拶をする。

 二人ともほとんど話したことはなかったが、何度か顔を合わせたことはある。
 そんな王子妃たちが突然話しかけてくるなど、いったいどんな用があるというのか。もしかしたら王太子であるルディオに、何か言いたいことがあるのかもしれない。

 疑問符を浮かべていると、一歩前へ出たセレナが、シェラを見て言った。

「シェラ様、どうか私と……お友達になってください!」
「…………は、い?」

 思わず疑問形で答える。
 状況がのみ込めていないシェラの心情を表すように、その場が静まり返った。

「――ちょっとセレナ!? さすがにそれは直球すぎるわよ!」
「だって、あなたが回りくどい言い方はやめてって言ったんじゃいない、スーリア」
「それは、私のときはやたらと前振りが長かったからよ! 極端すぎるわ」

 なにやら言い合いを始めた二人を茫然と見守る。
 仲がいいのか悪いのか、いやこれは間違いなく仲が良いのだろう。気兼ねなく言い合える間柄というものが、少し羨ましく感じた。

 隣で状況を見守っていたルディオが、くすくすと笑いながら二人に声をかける。

「二人とも、シェラが困っているから喧嘩はその辺にしてもらえないか?」
「すっすみません!」
「謝る必要はない。言いたいことは分かったから、あとはシェラとゆっくり話してくれ」

 そういって、ルディオは立ち上がる。

「私は先に戻るから、あとは……がんばれ」
「え……」

 彼は苦笑しながらシェラの肩をぽんっと叩いて、ガゼボの外へと歩いて行った。

 何をどう頑張るというのか。
 言われた内容は理解できるが、なぜそういう話になったのかが全くわからない。

 一人残されたシェラのもとに二人はやってきて、近くの椅子に腰を下ろした。

「あの、どういうことでしょうか……?」

 素直に疑問を投げかけると、金髪の女性が口を開く。

「突然すみませんでした。私がハスール国から嫁いできたのは、シェラ様もご存じかと思います。他国から身一つで来たゆえ、お友達と呼べる方が少なくて……」
「それで、私にも突然声をかけてきたのよね。あの時は驚いたわ……今じゃいい思い出だけど」

 苦笑しながらスーリアが言った。

「声をかけたのは突然だけど、私はずっとあなたを気にしていたのよ、スーリア。よく庭園で見かけていたから」
「そうだったの?……って今は私たちのことはいいのよ、セレナ」
「そうだったわ……それで、私はもっとお友達がほしくて。せっかく同じ王城で生活しているのだし、シェラ様ともお友達になりたいと思いまして、声をお掛けいたしました」

 状況は理解できた。
 シェラもセレナとは似たような状況であるし、二人が友達になってくれるのであれば、それは願ってもないことだ。

「わたくしも友達と呼べる方がおりませんので、お二人の申し出はとてもありがたいです。こちらこそ、よろしくお願い致します」

 小さくお辞儀をしながら言うと、セレナはとても嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「よかったわ! それじゃあ、今度三人でお茶会をしましょう! もちろん、王妃様たちには内緒で」
「そうね、王妃様お二人がいると、ゆっくり話せないもの」

 現在の第一王妃と第二王妃はとても仲が良く、二人が主催するお茶会を頻繁に開催しているらしい。シェラはまだ参加したことはないが、きっとこの二人は何度もお呼ばれしているのだろう。

「わかりました、楽しみにしています」

 笑顔で返すと、スーリアがパンッと手を叩いて言う。

「もうお友達になったのだから、敬語はなしね。名前も呼び捨てで」
「そうね。よろしく、シェラ」

 スーリアの言葉に続くように、セレナが笑いかけた。
 同年代の女性の――というより、友達という存在自体がほぼ初めてできたシェラは、少し戸惑いを感じた。

 しかし、せっかくの機会だ。
 思いきって、ぎこちなく返事をする。

「よろしく。セレナ、スーリア」

 シェラの言葉に、二人は笑顔で返してくれた。

 それから昼食の時間まで他愛ない話をした。
 こんな幸せな時間が、いつまでも続けばいいと思った。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ
恋愛
 公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。  ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。 ※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?

すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。 人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。 これでは領民が冬を越せない!! 善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。 『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』 と……。 そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

処理中です...