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■9.お前でいいや

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アランくんの前で喋ったり、視界に入るとギロリと睨まれるので、なるべく気配を消しながらバイトを続けた。

気を使ってしんどかった~(泣)



お昼のバタバタが過ぎ去って、ようやく私たちの休憩タイム。



「るあちゃん。
皆にお昼何がいいか聞いてきて~!」

「ハーイ!」

厨房のおばちゃんに言われ、バイトメンバーにお昼の賄いを聞きに行こうとすると


「アランとジェイにも聞いてきて~」


えええ​────!?
アランくんのところ行きたくない………(泣)
めっちゃ嫌われてるし怖いんだもん。


しかし、聞きに行かない訳にはいかず…。
仕方なくビクビクしながらアランくんの元へと向かう。



「あー?またお前かよ。」


ビーチパラソルの下で、大樹先輩やバイトの皆と楽しそうに話していたのに、私が現れた途端、アランくんは不快そうな険しい顔になった。


やっぱり尋常じゃなく嫌われてるし。



「なんの用だよ。」


「あ、お昼何にしますかー?」


「お昼?」


目を細めて近づき、私に視線を飛ばすアランくん。

暫く上から鋭い目つきで睨まれ、それからアランくんは口を開いた……




「………じゃあ、お前でいいや。」



そう言って、皆のいる前で唇にチュッとキスしてきた!




は​─────ッ!?
どーゆー事ォ​─────!?



今まで投げかけられた言葉と相反した行動に、頭が混乱した。



周りが『え​─────ッ!?』
って空気の中、アランくんはニコリとも笑わない。

私は バッと離れ、何も言い返せず後ろに後退した。



「コイツ、反応つまんねーw」


アランくんは冷笑しながら周りにそう言った。



……はぁ!?
………『つまんねー』じゃないよッ!!



からかわれてキスされて凄く惨め。
気になる拓真くんもその場にいたし。
なんでこんな事するの??


「アラン、チャラーい!!」


ドレッドヘアーのジェイさんが、女子っぽくそう言うと笑いが起こった。


「マジ、チャラーいwww」


チャラいで済んじゃうんだ。
キスされたのに。

これ初キスだったらどうすんのよ。
イケメンだったら何してもいいの?
酷いよ、こんなの。



「何するんですか!
人をからかうのやめて下さい!!」


唇を拭って、アランくんに向って不服を申し立てる。


アランくんはそんな私を完全無視。



なにこの人……!


恥ずかしさより完全にからかわれてる事が、悔しくて、見えないところで泣きたかった。


だけど、そんな態度をとったら男に慣れてない事バレバレで、ダサい気がしてそれ以上取り乱さずに、バイト仲間にお昼ごはんを聞きに回った。
(ガキながら変な意地張る。)


キスなんて挨拶みたいなもんだ。
小、中学生じゃあるまいし。
騒ぎ立てるもんじゃない。
と、自分に言い聞かせる。


アランくんと関わるのは避けよう。
私の事、目の敵にしててムカつくし、
何やり出すか読めないし。
キスで済まないような事されたら嫌だし。



それより、最近気になるMr.K高の拓真くんにアランくんとのキスを見られた事が嫌で仕方なかった。

拓真くん何も言わなかったけれど、どう思ったかな。
私に好意をもってくれてるって知って
嬉しかったのに。
今日の事でギクシャクしちゃったら嫌だな。


最悪だ……。
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