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■34.出てこいよ

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8月28日。
楽しかった夏休みも 残り僅かとなった。


9月になって学校が始まれば、また真っ白もやし軍団との勉強漬けの日々に戻る……。


ハァ…。考えただけで憂鬱になる。
もう少しだけ、夏を味わいたいよ。


拓真くん……
次はいつ逢えるのかな……?



RRRR…………
19時過ぎ、家の電話が鳴った。



夏休み明けに学校でパソコン検定を受ける為、リビングでタイピング練習をしていた私は、中断して面倒くさそうに電話を取った。



「ハイ、鈴木です。」





「……もしもし。黒川と申しますが
るあさん御在宅でしょうか?」




え!?
黒川???




聞き覚えのある、ちょっと早口な流れるように滑舌の良い、ドキッ とするクールな男子の声。



まさか!?


「私ですけど……?」


「は?お前かよ。ビビらせんなよ。」





星吾​─────!!?

どうして家電に電話かけてきたの!?




コードレス電話を持ち直し、私はソファーに腰を下ろした。



「何で家電にかけてきたの!?」


「なんでってお前携帯持ってねーだろ?早く買えよ!」


「う…。そのうち買うもん!
てか、どうしたの?なんの用??」


「あっそ。いい加減買えよな。
今、詠太ん家に泊まりに来てんだよね。」


「……ウン。それで?」


「で、今、お前んちの前にいる。」


「は!?」


「お前んちの前にいるから、外出て来いよ。」


「……………はぁ!?」



星吾の突然の訪問!!


どうしてキミはいつも、こんなに唐突で強引なのッ!?


時計は19時半。
夏だけど外は薄い暗い。


「こんな時間に出れないよ。」


「理由つけて出て来いよ。
外でちょっと話そうぜ。」


「嫌だ嫌だ。近所迷惑だから帰ってよ。
なーに?詠太も一緒なの?」


「いねーよ。俺ひとり。」


星吾ひとり………?////
も~!何で家まで来ちゃうの~(焦)



私は外に出る気がなく、肩に電話を挟み、電話しながらパソコン検定の練習の続きを始めた。


カタカタカタカタ
スッターン(ENTER笑)
カタカタ…



「カタカタカタカタうるせぇな。
お前、PCイジってんだろ?
人が電話してんのにホント失礼だな。」


やばっw
ソッコーバレた(汗)


「だって検定あるんだもん。」

「そんなのいつだって練習できんだろ?折角来てるんだから、外出て来いよ。」

「もうお風呂入ろうと思ってて……。」

「いいから出て来いよ。
出て来ないと玄関前でお前の名前叫ぶぞ?」

「え!それはやめて!!
お父さんにマジギレされる(汗)」

「じゃあ出て来いよ。
1分以内に出てこなかったら叫ぶからな?
いーち…にーい…」

「待って!すぐ行くから!!」

「はじめからそう言えよw」


ラフな肩出しTシャツに、ショートパンツ姿の部屋着で慌てて家を飛び出した。
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