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洒落た喫茶店で、俺は少女と向かい合っていた。
恥ずかしそうに、大きな目を伏せて、ミルクティーを口に運んでいる。
俺はブレンドコーヒーを啜る。
彼女のどんな仕草も見逃さないように、彼女を見つめた。
BGMのジャズが緩やかに流れる。
「ねえ、菅野さん。あたし、夢があるんだ」
もじもじと言いづらそうに打ち明けた。
夢を語ると、場合によって否定されたり馬鹿にされたりするから打ち明けづらいのだろう。
その純粋さが良い。頭
が悪く、コロリと簡単に騙されそうだ。
抱くならそういう頭が弱い女に限る。
「どんな夢?笑わないから言ってみて」
俺はテーブルに肘をつき、手を組み合わせた。
どんなことでも真剣に聞いているという包容力をアピールする。
「アイドルになりたいの」
恥ずかしいのか小声だが、真っ直ぐに俺の目を見て言った。
俺は意外な答えに驚いたが、どうやら真剣らしい。
少女の無垢な瞳が俺を写す。
「アイドル?」
「うん……わかってるよ、そんな簡単じゃないってこと。でも、なりたいんだ」
「応援するよ」
正直なところ、できればアイドルなんかより、歌手となって美しい歌姫として脚光を浴びてくれたほうが俺の好みに合うのだが、まあおいおい方向を変えさせていけばいいだろう。
「ありがとう! でもあたし、肌も綺麗じゃないし、服だってイマイチ。ボイスレッスンやダンスレッスンもしたいけど、お金がなくて……」
「そんなもの、おじさんが出してあげるよ」
コーヒーを啜りながら俺は言った。
アイドルなんて興味ないため何が必要かなんて知らないが、話を聞く限り相当の金がいるのだろう。
俺には金のツテがある。
「本当!?」
「ああ、もちろんだ。君が世界一のアイドルになるためだったら、いくらでも出そう」
いろんな女と会ってきたが、やはり少女は初々しさと眩しさが男心をくすぐる。
自分が成長させている、自分色に染めているという感覚になるから少女には積極的に援助をするようにしている。
歳をとった女は身体の関係で十分だが、少女とはこの心の結びつきがたまらないのだ。
たとえ最初は金目的だとしても、経験の少ない馬鹿な小娘は簡単に落ちる。
金さえあれば簡単に関係を構築できるのだ。
もちろん、親心のような温かい心で施しをしているわけではない。
ベッドの上でいろいろやるにはそういう心の結びつきが良いスパイスになる。
一度心を許した小娘は愛の言葉を少し囁くだけで夢中になる。
頭を空っぽにして俺を求めてくるのは最高だ。
「ありがとう! 大好き!」
少女は満面の笑みを浮かべた。
アイドルを目指す様な世間知らずのお嬢様はチョロいもんだ。
*******
「どうでしたか?」
興信所の応接室で、目の前に座る女性は僕に問いかけた。
まだ若かったが、旦那さんに不倫されたらしく、不倫相手の素行を調査して欲しいと依頼してきた。
疲れているのか目の隈がひどい。
「結論から申しますと、彼女は複数の男性と関係を持っていました」
興信所の調査員になって初めての仕事だったが、しっかりと成果を出すことができ、僕は胸を撫で下ろしていた。
この女性のご主人の不倫相手は、女性と同年代で、IT企業の営業をしている。
真昼間から会社をサボってホテルに行くのが日課のような女で、調査を始めてすぐに現場を抑えることができた。
わざわざ金を払わなくても、自分で張り込んでも簡単に証拠を掴めただろう。
それくらい不用心な女だった。
「やっぱりですか」
依頼人はわざとらしく溜息を吐いた。
「こちらが写真になります。多い時では一日に四人の男性と立て続けにコトに及んでいました」
僕は調査の結果を示す写真を彼女に見せた。
女性は疲れた顔で満足そうに笑っていた。
「ありがとうございます。バッチリですね」
ターゲットの素行を軽く説明しただけで、彼女は早々に費用の話に移った。
どうやら証拠の写真だけで十分だったようだ。
「では費用はこちらの口座に振り込んでおいてください」
僕は女性に請求書を手渡した。
これで僕は調査員として仕事を成し遂げた。
達成感がある一方で、不気味な笑みを浮かべる女性に恐怖を感じた。
恥ずかしそうに、大きな目を伏せて、ミルクティーを口に運んでいる。
俺はブレンドコーヒーを啜る。
彼女のどんな仕草も見逃さないように、彼女を見つめた。
BGMのジャズが緩やかに流れる。
「ねえ、菅野さん。あたし、夢があるんだ」
もじもじと言いづらそうに打ち明けた。
夢を語ると、場合によって否定されたり馬鹿にされたりするから打ち明けづらいのだろう。
その純粋さが良い。頭
が悪く、コロリと簡単に騙されそうだ。
抱くならそういう頭が弱い女に限る。
「どんな夢?笑わないから言ってみて」
俺はテーブルに肘をつき、手を組み合わせた。
どんなことでも真剣に聞いているという包容力をアピールする。
「アイドルになりたいの」
恥ずかしいのか小声だが、真っ直ぐに俺の目を見て言った。
俺は意外な答えに驚いたが、どうやら真剣らしい。
少女の無垢な瞳が俺を写す。
「アイドル?」
「うん……わかってるよ、そんな簡単じゃないってこと。でも、なりたいんだ」
「応援するよ」
正直なところ、できればアイドルなんかより、歌手となって美しい歌姫として脚光を浴びてくれたほうが俺の好みに合うのだが、まあおいおい方向を変えさせていけばいいだろう。
「ありがとう! でもあたし、肌も綺麗じゃないし、服だってイマイチ。ボイスレッスンやダンスレッスンもしたいけど、お金がなくて……」
「そんなもの、おじさんが出してあげるよ」
コーヒーを啜りながら俺は言った。
アイドルなんて興味ないため何が必要かなんて知らないが、話を聞く限り相当の金がいるのだろう。
俺には金のツテがある。
「本当!?」
「ああ、もちろんだ。君が世界一のアイドルになるためだったら、いくらでも出そう」
いろんな女と会ってきたが、やはり少女は初々しさと眩しさが男心をくすぐる。
自分が成長させている、自分色に染めているという感覚になるから少女には積極的に援助をするようにしている。
歳をとった女は身体の関係で十分だが、少女とはこの心の結びつきがたまらないのだ。
たとえ最初は金目的だとしても、経験の少ない馬鹿な小娘は簡単に落ちる。
金さえあれば簡単に関係を構築できるのだ。
もちろん、親心のような温かい心で施しをしているわけではない。
ベッドの上でいろいろやるにはそういう心の結びつきが良いスパイスになる。
一度心を許した小娘は愛の言葉を少し囁くだけで夢中になる。
頭を空っぽにして俺を求めてくるのは最高だ。
「ありがとう! 大好き!」
少女は満面の笑みを浮かべた。
アイドルを目指す様な世間知らずのお嬢様はチョロいもんだ。
*******
「どうでしたか?」
興信所の応接室で、目の前に座る女性は僕に問いかけた。
まだ若かったが、旦那さんに不倫されたらしく、不倫相手の素行を調査して欲しいと依頼してきた。
疲れているのか目の隈がひどい。
「結論から申しますと、彼女は複数の男性と関係を持っていました」
興信所の調査員になって初めての仕事だったが、しっかりと成果を出すことができ、僕は胸を撫で下ろしていた。
この女性のご主人の不倫相手は、女性と同年代で、IT企業の営業をしている。
真昼間から会社をサボってホテルに行くのが日課のような女で、調査を始めてすぐに現場を抑えることができた。
わざわざ金を払わなくても、自分で張り込んでも簡単に証拠を掴めただろう。
それくらい不用心な女だった。
「やっぱりですか」
依頼人はわざとらしく溜息を吐いた。
「こちらが写真になります。多い時では一日に四人の男性と立て続けにコトに及んでいました」
僕は調査の結果を示す写真を彼女に見せた。
女性は疲れた顔で満足そうに笑っていた。
「ありがとうございます。バッチリですね」
ターゲットの素行を軽く説明しただけで、彼女は早々に費用の話に移った。
どうやら証拠の写真だけで十分だったようだ。
「では費用はこちらの口座に振り込んでおいてください」
僕は女性に請求書を手渡した。
これで僕は調査員として仕事を成し遂げた。
達成感がある一方で、不気味な笑みを浮かべる女性に恐怖を感じた。
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