ジュンケツノハナヨメ

かないみのる

文字の大きさ
19 / 20

19

しおりを挟む
 定番のウェディングソングが流れ、扉が開き、新郎新婦を一部の人の大きな拍手が出迎えた。


 暗い会場で、眩し過ぎるスポットライトが二人を映し出す。


 別の出入り口から会場に入っていた私は、この瞬間を待っていたのだ。


 わたしは二人の前に駆け出した。



 目の前に現れた人物がわたしだと分かり、二人は驚きの表情を見せ。


 目を見開いて、口を半開きにして、せっかくのお色直しが台無しだね。



 わたしは友希哉の方を見た。


 わたしをまっすぐ見てくれている。


 たとえどんな状況でも、彼の瞳にわたしが映っていることが嬉しかった。


 わたしは視線を新婦の方へ移す。


 あら? 貴女が着ているそのドレス、わたしが選んだものと同じなのね。


 空を切り抜いたような水色のドレス。


 わたしに対する当てつけかしら?



 友希哉、あなたは騙されているのよ。


 わたしが目を覚まさせてあげる。


 この女の正体を、目を背けずきちんと見ていてね。



 わたしは腰にくくりつけていたナイフを二本取り出した。


 鈍色の刃がスポットライトで照らされて光る。


 恐怖で歪む花嫁の表情は、今までにないほど痛快だった。



 花婿は硬直、花嫁は逃げようとして転倒。


 わたしはドレスの裾目掛けてナイフを突き立てた。


 ナイフはドレスを貫通し床に突き刺さった。


 裾が引っかかって逃げられずにトカゲのようにもがく花嫁に馬乗りになり、もう一本のナイフを構える。


 恐怖に怯えたその表情、これ以上にないケッサクね。


 現実だけでなく、夢の中でまで苦しめてくれたわね。


 大丈夫、あなたを殺そうなんて野蛮な事、考えていないわ。


 わたしがずっと求めていたドレス。


 空のような淡めの水色、わたしにとっての恋の色。


 だけれどその水色のドレスは、あなたには全く似合わないわ。


 何度も股から血を流すことを、誇らしげに言う下卑たあなたには。


 さあ、本当のあなたを見てもらいましょう。


 わたしはナイフを突き刺した。


 ナイフが首を切り裂く痛み、溢れ出す熱い血液、聞こえてくる悲鳴。


 血飛沫が花嫁へ降り注ぐ。


 みんなの目がわたし達を捉えている。
 

 年老いた両親、若い女性たち、友人男性の集団、親戚のおじさん、いとこと思しき双子の男女。


 みんなが見ている、魔女誕生の瞬間を。


 そうだ。わたしの中の可愛い憎しみ、きちんと産んであげないとね。
 

 わたしの中で芽生えた憎悪。


 大きく大きく育ったの。


 出してあげなきゃかわいそうでしょう? 


 愛しい子どもに会うためであれば、腹を裂くなんて怖くない。


 腹部の痛み、溢れ出る液体。
 

 水色のドレスは真っ赤に染まる。


 吉川麻里奈、おめでとう。


 純潔からは程遠い、本当のあなたによく似合うのは、血でどす黒く濁ったドレスよ。


 純血の花嫁のできあがり。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

その出会い、運命につき。

あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された皇后を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...