“ダメージはゼロだ”追放された最強タンクによる勇者育成記

あけちともあき

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第7話 遺跡警備は楽な仕事……!?

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「今までは楽な仕事だったんだがな」

「この間仕事にあたった、Dランクパーティが一つ全滅したらしい」

 ひそひそ話があちこちで聞こえる。
 遺跡警備は楽な仕事だと聞いていたが、やはり冒険者の仕事。
 そんな甘い話は無いらしい。

「頑張りましょう、マイティ!」

「おう! 俺たちは俺たちの仕事をするだけだな!」

 俺たちエクセレンスマイティの割り当ては東地区。
 遺跡には三箇所の入り口があり、西、中央、そしてここ東と分かれているのだ。

 面白いのは、遺跡は山を削って作られた形をしており、凹型をしている。
 つまり入り口は全て、中央のスペースを向いているわけだな。

 たまに遺跡では、スタンピードというモンスターたちの大発生が起こるらしい。
 そうなると、入り口からとんでもない量のモンスターが溢れ出て、周辺地域にも甚大な被害をもたらす。

 俺たち遺跡警備は、この予兆を調べるための業務でもあるってわけだ。

「お弁当食べましょうマイティ」

「よし、そうするか」

 エクセレント差し向かい、パンにハムを挟んでからしバターをたっぷり塗ったやつを食う。
 美味い。

 ポットからちょっとぬるい茶を、直で飲む。
 美味い。

 そんな俺たちを、他の冒険者は何やら指差してぺちゃくちゃ言っているようだ。

「二人で何ができるんだよ」

「時代遅れのタンクとみすぼらしい装備のガキじゃないか」

 だが、俺たちはそんな事は気にしない。
 食事を取って英気を養っておかねば、仕事に差し支えがあるからな。

 そうこうしていたら、すぐに仕事がやって来た。

『ウオオオオオオ!!』

 叫び声が響き渡る。
 遺跡の中から駆け出してくる何者か。
 それは、牛のような頭をし、巨大な斧を振り回すミノタウロスだった。

『オオオオオオ!!』

「ふんっ!」

 俺はこいつを入り口で食い止める。
 ミノタウロスは、自分の勢いをまるごと殺され、反動で遺跡の中にぶっ飛んでいった。
 自分を吹き飛ばすとは、すげえパワーだな。

「大きいですね!!」

「また来るぞ。エクセレン、仕留め方を考えておかなくちゃな」

「はい! ええと、大きいけど、確か牛は角の付け根の頭蓋骨が硬いから、その後ろ辺りを筋肉の筋に沿う感じで……」

「いいぞいいぞ。今のうちに素振りだ」

「はい!」

 エクセレンが、鉄のナイフを何かにあてがい、棍棒でぶっ叩く練習を始めた。
 ちなみにそんな俺たちを見て、他の冒険者が唖然としている。

「嘘だろ……? ミノタウロスなんて深層の主じゃないか」

「なんでいきなりそんな奴が出てくるんだよ」

 遺跡に住んでるんだから出てきてもおかしくはなかろう。
 そおら、また来たぞ。

『ウオオオオオオオッ!!』

 目を血走らせ、駆け寄りざま、全力で斧を振り下ろしてくる。

「ふんっ!!」

 俺はこいつを受け止めた。
 またもミノタウロスが、自分の勢いでふっ飛ばされる。
 だが、敵も学習したようだ。

 踏ん張り、地面に片膝をついてこらえた。
 いい姿勢だ。
 ちょうどエクセレンが首筋に駆け上がりやすい。

「いきます!!」

 ミノタウロスの後頭部でそんな声がした。

『!?』

 ミノタウロスは目を見開く。
 いつの間に、という心持ちであろう。
 首筋に登った何者かを振り落とそうと、身構え……。

「敵は俺だあっ!! こっちを見ろ!!」

 俺は吠え、奴の懐に踏み込んだ。

『!?』

 ミノタウロスの注意が再びこちらを向く。
 頭の方向は正面。
 首の筋もまっすぐ。

「そーいっ!!」

 エクセレンが飛び上がり、首筋に突き立てた鉄のナイフを、思いっきりぶっ叩いた。

『ウオオオオオ!!』

 ミノタウロスが血の泡を吹く。
 慌てて、首筋の何者かを振り落とそうと暴れる……。

「敵はここだぞっ!! 俺は無視できまい!!」

『ウオオオ!!』

 ミノタウロスの攻撃衝動は、まるごと俺に向けられた。
 斧がめちゃくちゃに振り回され、俺の盾を叩く。
 よしよし。

「あ、あのタンク、ミノタウロスの攻撃を受けても、さっきから一歩も下がってねえ……!」

「押し込んでる! ミノタウロスを押し込んでるぜ!」

「Aランクモンスターを子ども扱いかよ! 化け物……!」

 タンクとして長年鍛えてきた技量の賜物だ。
 ミノタウロスなんか、フェイクが一対一で倒せる程度のモンスターだぞ。
 そんなに強くはないのだろう。

 そうこうしている間に、今度は鉄の手斧がミノタウロスの首筋に打ち込まれた。
 ついにモンスターは白目を剥き、鼻から、耳から血を吹き出しながら倒れた。

「フイーッ! やりました!」

「やったなエクセレン! しかし素晴らしい創意工夫だった」

「はい! 凄く肌が硬かったんで、マジックミサイルでちょっと穴を開けてからそこにナイフを固定したんです。それで、ジャンプして全力で後ろを叩くのを何回もやりました!」

「どんなに硬い装甲や皮膚も、同じ箇所を連続で攻めれば破れるからな。いい着眼点だと思う」

「ありがとう! マイティが足止めしてくれたお陰だよー! お陰でまた強くなれた気がします!」

 むんっ、とガッツポーズをするエクセレン。

「それに、この大きい斧……!! わっとと、重いけど、なんか振り回せそう」

「本当か? 案外エクセレンは、怪力のスキルを持っているのかもしれないな!」

 とりあえずの一仕事終了に、盛り上がる俺たち。
 これを見て、他の冒険者もやる気になったらしい。

「よ、よし、俺たちもやるか」

「おう! あいつらがあれだけやれるんだ。俺たちだって!」

 


 遺跡の奥深くで、それは目覚めていた。

『千年前に滅ぼされしあのお方の、遺志を継ぐ偉大なる存在が降臨される……。この魔将ノーライフキング、御身の元へ参じましょうぞ……! まずはこの遺跡より災害を引き起こし、近隣の人間どもを蹂躙してくれよう……!!』

 強大な力を持つ太古の魔術師。
 それが、魔王と契約することで不死の魔物となり果てた、最悪のアンデッド。

 彼の行使する魔法は、遺跡に住むモンスターたちを恐慌状態に陥れた。
 モンスターは我先に、遺跡の外へと駆け出そうとする。


 スタンピードが始まる。
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