“ダメージはゼロだ”追放された最強タンクによる勇者育成記

あけちともあき

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第28話 戦況について相談してたら使者が来た。そろそろ魔王も降りてくる

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「モンスターに指揮されたモンスターの軍隊か……。つまり、ナンポー帝国は既に彼らの手に落ちたと……?」

「間違いないだろう。エクセレンがゲットした帝国の弓だが、ちゃんと帝国の紋章が描かれている。これをモンスターが装備していたんだ」

「はいどうぞ!」

 エクセレンから弓を受け取って、ボーハイムはこれをじっと眺めた。
 難しい顔をする。
 すぐに頭の良さそうなのもやって来て、これを手にとってじっと眺めた。
 難しい顔をする。

「閣下。これは間違いありません。ナンポー帝国の紋章であり、弓は正規の品です。しかも最近作られたものです」

「なんと……」

「よく手入れされています。奪ったものではなく、軍人が自らのものとして帝国から下賜されたものと考えて間違いないでしょう。つまり彼らの言うことは真実だということになります」

「なんということだ。どうやら世界は大きく動いていき……君の言うとおりになっているようだ」

 ボーハイムがエクセレンに語りかける。

「やっぱり魔王ですね!」

「ああ。認めたくはないが、全世界で起こっていると聞く異変の数々。王国内でも、遺跡のスタンピードに幽霊船、そしてリューダー家の長女がモンスターとなった事件……。全てが同時期に起きている」

 ここでお茶が出た。
 俺とエクセレンとジュウザで並んで、お茶をいただく。
 暖かくてホッとする。

「偶然ではないだろう。いや、偶然も三つ重なれば必然だ。これに黒騎士の存在と、彼が支配する帝国がモンスターの帝国になっていることを合わせれば、世界は今まさに、モンスターの王たる魔王が現れようとしていると考えたほうが自然だ。敵も撤退したことだし、こちらも機を見て軍を退かせねば」

 決断がさぞや難しかろう。
 そう思っていたら、外がうるさくなってきた。

 ここはボーハイムの陣で、大きなテントの中だ。
 そこに慌てた様子の兵士が駆け込んでくる。

「た、大変です閣下!」

「どうした!?」

「て……帝国から使者が! その、人間では無いのですが」

「なんだと!」

 ボーハイムが外に出たので、俺たちも後を追って外に出る。

「大事になって参ったな」

「ああ。世界の一大事って感じがするぜ」

「ちょっとワクワクしますね」

 当然のごとく、俺たちに緊張感などない。
 ふと思い返すが、さっきボーハイムが挙げた件、どれも俺とエクセレンが関わってなかったか?

『王国へ停戦を申し入れる!』

 使者と名乗ったのは、背中に翼が生えた兵士だった。
 兜を突き破って角が生えてるのだが、あれなら兜はかぶらなくてもいいのではないか。

『ナンポー帝国は各地に派遣していた軍を引く! 諸君が攻めてくるならば自由! だがわきまえよ! 今より帝国に、偉大なる魔王が降臨なさる! 畏れを知らぬ愚か者は、魔王の威光によってたちまちのうちに滅ぼされることだろう! これは諸君への警告でもある! 繰り返す! ナンポー帝国は各地に派遣していた軍を引く!』

 さっきの撤退は、俺たちが将軍を倒したせいではなかったのか。
 どうやら魔王が本格的にやって来るらしい。

「来るってどこから来るんだ?」

 使者に尋ねてみた。
 いきなり俺が発言したので、ボーハイム以外のその場にいた者たちがギョッとしたようである。

 使者は俺を見て、『質問に対する返答も持ってきている! むしろよく質問してくれた!』
 ちょっと嬉しそうだな。
 きっと、俺たちが聞いてびっくりするような話なんだろう。

 自分から話すのはちょっとかっこわるいもんな。
 気持ちは分かる。

『空より! 世界の外より、魔王陛下は降臨なされる! 見よ! あの赤き星こそが、魔王様のおわす玉座!』

 使者が空を指差した。
 そこには……青い空に一点だけ。
 赤い染みがある。

 あれが星か?
 星が降ってくるのか。

『世界の終わりである! だが、少しでも命を永らえたいものは、攻め込むなどという愚を冒さず家にこもって震えているがよい! わーっはっはっは!』

 おお、得意げに使者が笑っている。

「ていっ」

 そこにエクセレンが棍棒を投げつけた。

『ウグワーッ!?』

 棍棒はピカピカ光っていたので、当たった使者が消滅した。

「あっ、消えてしまった」

「当たった! なんかずーっと止まってるから、当たるかなーって思ってたんですよね」

「見事に当ててしまったな」

「エクセレンの力がああして物を投げても発揮できるということは、強い力になるだろう」

 俺とジュウザでエクセレンを褒める。
 俺たちは褒めて伸ばす方針なのだ。

 何故周囲は、恐ろしいものを見るような目を向けてくるのだ。
 気にしないでいいぞ。

 しかし、それはそれとして、星が降ってくるのか。
 それは一大事ではないか。




『ようこそ、ティターン殿』

『おう、世話になるぜ』

 帝国の城は半壊した状態である。
 黒騎士が攻め入り、その権能を振るって破壊した時のままの姿だ。

 玉座は瓦礫の下であり、黒騎士はあえて、城を壊れた姿のままで残している。
 自らの力を、魔王の威光を示すためだ。

『魔王様はお早い到着でしたな』

『ああ。隣の王国でな。魔王様が直接声を掛けた魔将が二体、現地の魔将が一体立て続けに滅ぼされたらしくてな』

『なんと……!? 現代の人類にそこまでの力が……?』

『まあまあ強い人間はいたぜ? 王国の魔将どもが弱かっただけだろう。冒険者とか言う連中のトップクラスになら、倒されるかもな』

 魔将ティターンは豪快に笑うと、瓦礫にどっかりと腰掛けた。

『で、魔王様は到着を早めたってわけだ。百年掛けてのんびり来るおつもりだったらしくてよ。おいおい、そいつはのんびりし過ぎだって思ったが、そうしたら急に、あと一週間で到着するって言うじゃねえか』

『実に急なお越しですな。だが私も、この身を魔将まで引き上げて下さった魔王様に直接お目通りできるのが、楽しみでならない』

『そうかそうか。まあ、あのお方は他人を驚かせるのが趣味みたいなところはあるからよ』

『ティターン殿は魔王様直属の?』

『おう。随伴の魔将だ。道すがら魔王様が星を一つ滅ぼしてな。そこが俺の故郷だった。俺もまた、お前と同じ魔王様に力を与えられた存在というわけだ、黒騎士』

『同志ですな。そしてこの城を目掛けて、各地に生まれた新たなる同志が集まりつつある』

『世界征服の始まりだな! 待ち遠しいぜ』

 瓦礫の城に立つ二人の魔将が、空を見上げる。

 蒼穹に生まれた赤い染みは、どんどん大きくなってきているのであった。
 
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