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第三部:セントロー王国の冒険 4
第106話 こんにちは赤ちゃん その3
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「センセエ見つけました! センセエのにおいがするので追ってきたですよー!」
「しまった! ゼロ族は鼻が効くんだった……! いや、そこまで嗅覚が鋭くはないはずだが」
神殿に隠れていたのをあっという間に発見されてしまった。
クルミの頭の上では、ローズが鼻をふんふん言わせている。
これは、ローズが幸運を操ってここに導いたな?
「それに、ブランのしっぽが出てたからすぐわかったですよー」
「し、しまったー!」
それ以前の問題だった。
ブランはニコニコしてるような顔で、『わふん?』と首を傾げるだけだ。
分かっててやったな?
まあ仕方ない。
逃げた俺が悪いので、ここは観念してクルミに捕縛されるとしよう。
戻る道すがら、クルミが尋ねてくる。
「センセエは、クルミのおむこさんになるのやですか?」
「いやじゃない」
「よかったです!」
クルミはホッとした笑顔を見せた。
ああ、不安に思わせてしまったかも知れない。
そして彼女はそれ以上は聞いてこない。
ゼロ族は目の前の問題が解決されると、それ以外の重要度が低い問題は無視する傾向があるそうだ。
つまり、どうして逃げたかは重要ではなく、それによって俺がクルミのことを嫌いなのではないか、という疑惑こそが最重要だったというわけだ。
これが晴らされ、クルミは一安心と。
「なんというか……。俺はもうちょっと冒険したいんだよな」
「冒険したいですか」
「そうそう。この国も見て回りたいし、困っている人がいたら助けたい。幸い、お金はたっぷりあるし趣味で旅することができる。それに、クルミはあとちょっと待ってくれるんだろ?」
「ちょっぴりだけですよ! クルミたちは、センセエにくらべたら大いそぎで生きてるですからねえ」
そうだ、彼女たちゼロ族は人よりも寿命が短いのだった。
うむ、これも運の尽きか。
いやいや、短時間で大成功を収められ、濃密な冒険者としての生き方ができたわけだから、まずまずよしとしておこう。
俺は頭の中で、これからの道筋を立て始めた。
人生の道筋だ。
この通り行くとは思わないが、それにしたって方向性を定めておかねばな。
男爵の屋敷の前まで戻ってくると、領民がわいわいと集まってきているところだった。
酒や料理が用意されてきているので、どうやら屋敷の前で、彼らはお祭り騒ぎをするつもりのようだった。
一仕事終えた顔の男爵がいる。
「ビブリオス男爵、お疲れさまです」
「やあオース。お陰様で、無事に子どもも生まれたよ。女の子だった。髪の色は私、肌の色はナオ、それぞれの特徴を持って生まれてくるものだな。名をミコトとした。遠い国の言葉で、命という意味だ」
「おめでとうございます」
「ありがとう。これから私にとって未経験の日々が始まる。毎日が勉強の連続であろうな。これはこれで実学だ。楽しみにしている」
「楽しみなんですか」
「それはそうさ」
ビブリオス男爵は当たり前だろう、という顔をした。
「知識としてはある。だが体験としては無い。未知に出会い、体験してそれが既知になる喜びは最高の娯楽だよ」
凄い男だな。
状況の変化を、拒むのではなく楽しみの材料として受け止める。
確かに、考え方をそうやって変えていけばどんなことも楽しくなっていくのかも知れない。
「うーむ……俺はこだわり過ぎていたのか。ショーナウンのところから解放されて、自由を満喫するつもりでいたが……自由に縛られていたのかもしれない」
「どうしたのかね? 自由という概念はよく使われているが、実際はそんなものありはしない。何をやってもいいという状況に、人は耐えられないからだ。やるべき事が見えているなら、それをこなせばいい。そのうちに次にすべき事が見えてくる。これをこなし、また見えてきた事をこなす。生きるとはその繰り返しだよ。……もっとも、興味深い事が目の前で起きた時だけはその範疇ではない」
なるほど。
ビブリオス男爵の言葉は、妙に俺に刺さる。
同じような生き方をしてきた人なのかも知れないな。
「ありがとうございます。なんとかやっていってみますよ」
「そうするといい。決めることは君にしかできないのだからな」
そうこうしているうちに、領民が押し寄せてきて、男爵にお祝いを述べ始めた。
大人気だな、この人。
ここまで慕われる貴族は見たことがない。
というか、よく考えたら護衛の一人もいないで領民と直に触れ合う貴族とか。
だからこそ、こうしてフレンドリーに話ができるわけだが。
かくして、男爵令嬢の誕生に沸いたビブリオス男爵領。
人々は大いに盛り上がり、連日連夜のお祭り騒ぎとなるのだった。
このお祭りが凄い。
日々、どこからか新しい参加者が増えていく。
ダークドワーフとリザードマンが参加し、次には隣の領地から来たというロネス男爵と夫人がお伴を連れて参加した。
翌日から、現地の者は農作業のために戻っていったのだが、それでも祭りの参加者が減る気配はない。
人望だなあ……!
それも、明らかに癖の強そうな連中が集まってくる。
俺達の中で、一番お祭りを楽しんでいたのはカイルだろう。
あちこちから人が集まる中、貴人を護衛する戦士も集まる。
一つ、俺たちの中で一番腕が立つ奴を決めようじゃないかという話になり、カイルはこれに飛び入り参加したのだった。
「センセエ、カイルはつよいです?」
「うん。普段はブランとか、俺の作戦の陰に隠れてるから目立たないけど……槍の腕だけでAランク冒険者になるっていうのは並大抵ではないよ」
正面切って戦えば、俺より強いだろう。
「オースさん、見てて下さいよ。俺が大活躍しますからね!」
カイルはそう言いながらも、遠く離れた誰かに拳を挙げてみせた。
おや?
執政官のアスタキシアがそれを見て笑っている。
そんなこんなで、男爵領の腕試し大会が始まるのだった。
「しまった! ゼロ族は鼻が効くんだった……! いや、そこまで嗅覚が鋭くはないはずだが」
神殿に隠れていたのをあっという間に発見されてしまった。
クルミの頭の上では、ローズが鼻をふんふん言わせている。
これは、ローズが幸運を操ってここに導いたな?
「それに、ブランのしっぽが出てたからすぐわかったですよー」
「し、しまったー!」
それ以前の問題だった。
ブランはニコニコしてるような顔で、『わふん?』と首を傾げるだけだ。
分かっててやったな?
まあ仕方ない。
逃げた俺が悪いので、ここは観念してクルミに捕縛されるとしよう。
戻る道すがら、クルミが尋ねてくる。
「センセエは、クルミのおむこさんになるのやですか?」
「いやじゃない」
「よかったです!」
クルミはホッとした笑顔を見せた。
ああ、不安に思わせてしまったかも知れない。
そして彼女はそれ以上は聞いてこない。
ゼロ族は目の前の問題が解決されると、それ以外の重要度が低い問題は無視する傾向があるそうだ。
つまり、どうして逃げたかは重要ではなく、それによって俺がクルミのことを嫌いなのではないか、という疑惑こそが最重要だったというわけだ。
これが晴らされ、クルミは一安心と。
「なんというか……。俺はもうちょっと冒険したいんだよな」
「冒険したいですか」
「そうそう。この国も見て回りたいし、困っている人がいたら助けたい。幸い、お金はたっぷりあるし趣味で旅することができる。それに、クルミはあとちょっと待ってくれるんだろ?」
「ちょっぴりだけですよ! クルミたちは、センセエにくらべたら大いそぎで生きてるですからねえ」
そうだ、彼女たちゼロ族は人よりも寿命が短いのだった。
うむ、これも運の尽きか。
いやいや、短時間で大成功を収められ、濃密な冒険者としての生き方ができたわけだから、まずまずよしとしておこう。
俺は頭の中で、これからの道筋を立て始めた。
人生の道筋だ。
この通り行くとは思わないが、それにしたって方向性を定めておかねばな。
男爵の屋敷の前まで戻ってくると、領民がわいわいと集まってきているところだった。
酒や料理が用意されてきているので、どうやら屋敷の前で、彼らはお祭り騒ぎをするつもりのようだった。
一仕事終えた顔の男爵がいる。
「ビブリオス男爵、お疲れさまです」
「やあオース。お陰様で、無事に子どもも生まれたよ。女の子だった。髪の色は私、肌の色はナオ、それぞれの特徴を持って生まれてくるものだな。名をミコトとした。遠い国の言葉で、命という意味だ」
「おめでとうございます」
「ありがとう。これから私にとって未経験の日々が始まる。毎日が勉強の連続であろうな。これはこれで実学だ。楽しみにしている」
「楽しみなんですか」
「それはそうさ」
ビブリオス男爵は当たり前だろう、という顔をした。
「知識としてはある。だが体験としては無い。未知に出会い、体験してそれが既知になる喜びは最高の娯楽だよ」
凄い男だな。
状況の変化を、拒むのではなく楽しみの材料として受け止める。
確かに、考え方をそうやって変えていけばどんなことも楽しくなっていくのかも知れない。
「うーむ……俺はこだわり過ぎていたのか。ショーナウンのところから解放されて、自由を満喫するつもりでいたが……自由に縛られていたのかもしれない」
「どうしたのかね? 自由という概念はよく使われているが、実際はそんなものありはしない。何をやってもいいという状況に、人は耐えられないからだ。やるべき事が見えているなら、それをこなせばいい。そのうちに次にすべき事が見えてくる。これをこなし、また見えてきた事をこなす。生きるとはその繰り返しだよ。……もっとも、興味深い事が目の前で起きた時だけはその範疇ではない」
なるほど。
ビブリオス男爵の言葉は、妙に俺に刺さる。
同じような生き方をしてきた人なのかも知れないな。
「ありがとうございます。なんとかやっていってみますよ」
「そうするといい。決めることは君にしかできないのだからな」
そうこうしているうちに、領民が押し寄せてきて、男爵にお祝いを述べ始めた。
大人気だな、この人。
ここまで慕われる貴族は見たことがない。
というか、よく考えたら護衛の一人もいないで領民と直に触れ合う貴族とか。
だからこそ、こうしてフレンドリーに話ができるわけだが。
かくして、男爵令嬢の誕生に沸いたビブリオス男爵領。
人々は大いに盛り上がり、連日連夜のお祭り騒ぎとなるのだった。
このお祭りが凄い。
日々、どこからか新しい参加者が増えていく。
ダークドワーフとリザードマンが参加し、次には隣の領地から来たというロネス男爵と夫人がお伴を連れて参加した。
翌日から、現地の者は農作業のために戻っていったのだが、それでも祭りの参加者が減る気配はない。
人望だなあ……!
それも、明らかに癖の強そうな連中が集まってくる。
俺達の中で、一番お祭りを楽しんでいたのはカイルだろう。
あちこちから人が集まる中、貴人を護衛する戦士も集まる。
一つ、俺たちの中で一番腕が立つ奴を決めようじゃないかという話になり、カイルはこれに飛び入り参加したのだった。
「センセエ、カイルはつよいです?」
「うん。普段はブランとか、俺の作戦の陰に隠れてるから目立たないけど……槍の腕だけでAランク冒険者になるっていうのは並大抵ではないよ」
正面切って戦えば、俺より強いだろう。
「オースさん、見てて下さいよ。俺が大活躍しますからね!」
カイルはそう言いながらも、遠く離れた誰かに拳を挙げてみせた。
おや?
執政官のアスタキシアがそれを見て笑っている。
そんなこんなで、男爵領の腕試し大会が始まるのだった。
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