転生魔王のマニュアル無双~絶滅寸前の魔王軍をコツコツ立て直します~

あけちともあき

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盗賊王を討て

性能テストと秘密の地図作り

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「まさか現実だったとは……」

『この谷で、君が眠ったことで、我輩が君の夢に干渉できたのだ。本来ならば黒瞳王は我ら魔族の上位。例え魔神に近い眷族たる我輩でも、どうこう出来るものではない。だが、夢の中で君は、我輩の信頼を得た。そしてここに、君と我輩の契約が結ばれたのだ。これ即ち、封印の解除である』

「そうだったのか。この世界ディオコスモでは何が現実で何が夢か分からないから、気を抜けないな。恥ずかしいことを吐露してしまった……!」

『なに、君と我輩の仲ではないか』

 ルーザックと、単眼鬼サイクロプスの目玉が親しげに会話している。
 これを見て、ゴブリンロードたちは戦慄。ゴブリンの末姫は感激した。

「まさか、伝説の単眼鬼さえこうも#容易_たやす__#く手懐てなずけるなんて……」

「これがルーザックサマの力なのね。私たちの常識がどんどん書き換えられていくわねえ」

「黒瞳王サマすごい!」

 ゴブリンたちも、ギール、ギールと騒ぐ。
 とりあえず、ジュギィの反応を見て、どうやら黒瞳王が何か凄いことをやったらしいと理解したら、ギールと発するのだ。
 勝ち戦を経た後、始めに仲間だったゴブリン十二匹と、救われた一匹は、ジュギィとの強い信頼関係が生まれている。
 さらに、彼らにとって、望外の勝利をもたらした黒瞳王とは、いわば絶対的な存在だった。本能的にクイーンに従う彼らだが、ルーザックに対して抱く感情は、もはやこれに勝る。
 そして、熱狂は伝播でんぱし、他のゴブリンたちも黒瞳王が凄いのだと認識するのである。

「では、ちょうどいいから性能テストをしよう」

『性能テストとな? 我輩の魔眼光を見たいのかね』

「それもあるが、どれだけ強いのかを知りたい。そうしないと、これからの戦術にどう組み込むかも決められないからな。カーギィ、本来封印があるべき場所が向こうにあるな?」

「あるわね。小さな砦と、兵舎が作られているわ」

「そいつを標的に。単眼鬼」

『呼び辛かろう。我輩のことは、縮めてサイクと呼ぶがいい。無論、君だけだぞ』

 じろりと、周辺のゴブリン達に睨みを利かせる単眼鬼ことサイク。
 ゴブリン達は皆、蛇に射竦いすくめられた蛙のように、身動きができなくなった。

『動いてよし』

 サイクがそう言うと、彼らの束縛も解けたようだ。
 ゴブリンたちはドッと汗を掻きながら動き出す。

「いやー、この目玉、強いんだねー。これは期待できそう?」

 ちなみにアリーシャには、サイクの眼力が通じていない。

『うーん。なんだこれ』

「私の先輩だ。先代黒瞳王の」

『こんなに小さかったのか』

「諸事情があって小さい」

『なるほど。我輩の力が及ばないものが他にもいるというのは意外だった。……さて』

 ぐるり、と巨大な目玉が、砦があるらしい方向を見た。
 谷底は湾曲した道を描いており、ここから砦を直視することは出来ない。
 だが、サイクにはしっかりと見えているようだ。
 彼の目は、少なくともカーギィの魔法のメガネと同じ力は持っているのだ。

『行くぞ。魔眼光オプティックブラスト……!』

 目玉の虹彩が輝いた。
 そこから放たれるのは、一条の太い光線だ。
 これが谷に炸裂すると、岩肌を抉り取りながら直進する。

「昼間だから眩しい程度で済むが、これが夜だった目が眩くらんでいることだろうな」

 平然とした様子で、ルーザックとアリーシャは佇む。
 だが、ゴブリンたちはそうも行かない。
 目の前にもう一つの太陽が生まれたかのような明るさに、とても目を開けていられない。
 魔眼光の照射は、ほんの一瞬だった。
 光が止み、少し後から音がやって来た。
 耳をつんざくような高音。
 やがて、谷の彼方で爆発が起こった。
 ガラガラと、周囲の岩壁が崩れ落ちていく。
 たちまちのうちに、谷の半ばまでが瓦礫に埋まってしまった。

「これは凄いな……」

『しかし、この身では全力で一発撃てば、半日は使えなくなるのだ。使いどころをよく考えよ、友よ』

「ああ、承知した。戦術に組み込んでいくとしよう」

 ルーザックはすぐに、この強大な戦力をどう活用するべきか考え始めたようだ。
 それを見て、アリーシャがむむむ、と唸る。

「どうしたアリーシャ」

「いやねー。ルーちんの他に、戦術っつーの? そーゆーのを担当する奴がほしいなーって思ったの。またマニュアル作るとき、ルーちん一人でやるっしょ? そしたら負担かかるじゃん」

「それが私の仕事なので問題ない」

「問題おおありだっつーの! あのね、剣豪のオジーチャンの時も、さっきのアンサツキシとかゆー奴も、一歩間違えたらルーちん死んでるでしょー。ルーちんが死んだら、魔族はもう終わりなのよ。だから、なんでもルーちんがやるのは危険なの。ルーちんの代わりができる魔族か、もっと上手く色々やれる子を仲間にしないといけないのよ」

「な、なるほど……」

 ルーザックは驚嘆した。
 直感至上主義のJKと見えて、実はアリーシャ、高い洞察力があるのかもしれない。
 今後を考えたとき、アリーシャの意見はとても重要だった。

『いい事を言う先輩ではないか。そうさな、我輩もこのちびっ子の言葉に賛成だぞ。それらの役割を果たすことが出来る魔族を勧誘するとしよう。その前に、まずはこの地方から人間どもを一掃すべきだがな』

「そうだなー」

「黒瞳王サマ、次、何をやるの?」

「うむ……。サイク、君は大昔から生きてきたのだろう?」

『いかにも。齢千年は軽く超える』

「では、この土地に関する知識はないか? ここに地図があるが、これだけではない、過去の伝承や裏情報が記された地図を作りたい。そこに、私達が人間と戦っていくための手がかりがあるだろう」

『友よ。我輩に対しては、俺と使ってもいいのだぞ?』

「いや、仕事とプライベートは分ける主義なんで……」

「では、せめてその作業は私が手伝おう……いや、手伝います。この魔法のメガネも役立つはず……」

 カーギィがおずおずと会話に入ってきた。
 ゴブリンロードとして、何も出来ないことに後ろめたさを感じたらしい。

「では、地図作業はカーギィとサイクに協力してもらうこととする。近々の目標は、鷹の右足地方を攻め落とすこと。これは戦力から見て……そうだな、魔法のメガネとサイクがいるから、情報収集とマニュアルの作成、習熟訓練も含めて二週間のタイムスケジュールで行こう」

「二週間! 分かった!」

 ジュギィが元気よく返事をした。
 そして、ゴブリンたちに情報収集の指示を出す。
 皆、人里付近を徘徊、あるいは夜間に侵入など行い、様々な情報を集めるのだ。

「どんな雑多な情報でもいい。覚え切れないくらい情報があったら、すぐに帰ってきて覚えてる分だけ記録すること。いいかな」

「ギィッ!」

 ルーザックの言葉に、ゴブリンたちは一斉に返事をした。

「それから、絶対に無理をするな。人に見つかるな。見つかりそうになったら戻って来い。人を殺すのは我が身を守るため以外では禁止だ。なぜなら、人間は同胞が殺されたことを知れば、必ず原因を調べるからだ。そこで人間達が警戒を強めてしまっては元も子も無い」

「ルーザックサマ。それじゃあ、人間は見逃すって言うの? 甘くない?」

 戦闘タイプのゴブリンロードであるレルギィが、不満げに口を尖らせた。
 これに対し、ルーザックは首を横に振る。

「今はその時ではない。もしも人間を殺す必要がある時は、それは彼らを全滅させる時だ。鷹の尾羽砦の時とは状況が違う。ここからは、種の存亡を賭けた戦争なのだ」

「り……了解よ……じゃない、了解しました、黒瞳王サマ」

「では、行動開始」

 こうして、黒瞳王ルーザックの軍勢は動き出した。
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