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真夏な私の遭遇編
第266話 双子ビルの屋上で伝説
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社長室が最上階のはず……。
そう思ったら、なんかよく分からないフロアに到着した。
ひたすら広い。
パーティルーム?
だけど、怨霊とかデーモンは基本的にダンジョンの一番上とか一番底にボスがいるんだよね。
デーモンと煙は高いところか超低いところが好きなのだ。
「こーんにーちはー」
※『不意打ちする気が欠片も無くて草なんだ』『入口から正々堂々挨拶しながら襲撃する女きら星はづき』『キャラの濃さでカナンさんを食うなw』
あっ、そうでしたそうでした。私はサポートに徹する……。
階段を上がってきて声を掛けたら、ワーッとデーモンが襲ってきた。
多い多い。
「カナンさんカナンさん」
「ああ! 風よ吹き荒れろ! ブラストウインド!」
猛烈な風がエアコンからバシューっと吹き、さらに下の階の砕けた窓から風が補充される。
デーモンたちは『ウグワーッ!?』と吹き飛ばされてしまったみたいだ。
※もんじゃ『風の精霊魔法だけでこれほどの種類があるんだな……。精霊魔法のレパートリーは凄いぞ』『まだ解明されてないもんな』『カナンさん可愛くてかっこよくて強くて最高だわ』『ガチ恋しそう』
よしよし、普段ならここで私が駆け寄って「あちょっ」と決めるとこだけど、今回はあくまでお手伝いなのでカナンさんに決めてもらう。
「ハヅキ、ゴボウを貸して」
「あ、はい」
「私もゴボウの扱いを学んでいたのだ。うん、いいゴボウだ。まだ植物の精霊がいきいきとしている」
今朝取れたやつだからね。
今夜のおかずになります。
※『ゴボウの新鮮さまで判別できる精霊魔法!』『便利ィ!』
『ウゴゴゴゴゴ!! ジェミニビルダンジョンの我らツインデーモンは、2つのタワーで同時にとどめを刺さねば倒せぬぞ!!』
あ、ボスキャラっぽい石像デーモンが出てきた。
丁寧に弱点解説までしてくれたではないか
私はAフォンで隣と連絡を取った。
「あ、ビクトリア? どう? いけそう?」
『もうすぐ最上階よ! ファティマは凄く頑張ったわ!』
「おおー! あのね、最上階にボスデーモンがいるけど、これが二体同時に倒さないといけないんだって」
『オー! よくある仕掛けね! ファティマ、こっちでもガンガンに攻めるわよ! ゴーゴーゴーゴーゴーゴー!!』
遠くでファティマの『はーい』という声がする。
おお、元気元気。
この間に、カナンさんがシュートアローという魔法でゴボウを飛ばした。
これがボスデーモンにサクッと刺さって、『ウグワーッ! しょ、消滅する~!』とか悲鳴をあげさせている。
「もうちょっと頑張って! ビクトリアー! こっち消えちゃう消えちゃう! 早めにボスやっつけて!」
『オーケーよ! ゴートゥヘール!!』
なんか凄い叫び声が聞こえて、バラララララララっと何かばらまく音がした。
あ、向こうでもウグワーって悲鳴が聞こえる。
『ファティマ、行って行って行って! あ、モミジも来た! これで勝確だから! モミジ、ゴーゴーゴー!』
もみじちゃんの、ほいほーいという声がいて、なんかボヨーンとかバフーンとか形容しがたい音が響き渡った。
惣菜パンが唸りをあげたな。
もみじちゃんが戦場を制圧する能力は凄いからなあ。
私が近接攻撃一点突破、ビクトリアはチェンソーが代名詞みたいな感じだけど基本的に射撃多め、もみじちゃんは多彩な惣菜パンで戦場を支配する。
「モミジは言うなれば、スタイルが一番魔将に近いな……。惣菜パンを使って自分に有利な戦場を作り出す。いや、魔将でもあんなのいない」
※『散々なこと言われてて草』『もみじちゃん、だんだん謎のスペック明らかになっていくな』『何者なんだあのパン屋さん……』
とにかく、もみじちゃんの大活躍で間に合ったらしい。
なんか、塩焼きそばパンの大盛りで場にいるデーモンを全部拘束したとかなんとか。
『リーダー、今ファティマがとどめを刺すわ! そっちも同時にお願い!』
「ほいほい! カナンさん! ゴボウを風でぐりぐりって! ぐりぐりって!」
「分かった! 風の精霊よ!」
風の精霊が渦巻き、ボスデーモンに刺さったゴボウをグリグリ動かした。
『ウグワーッ!! ひ、ひどいーっ!!』
なんか決まらない断末魔を上げながら、ボスデーモンが消滅した。
Aフォンの向こうでも、ピチューンと消滅したらしい気配がする。
「やった?」
※『はづきっち、それフラグw』『あ、いやでも俺二窓してるけど、ちゃんと倒せてる!』『タイミングバッチリだなあ』
ジェミニビルを包み込んでいたダンジョンが消滅、ビルも常識的な広さまで縮んでくる。
物凄く広いロビーだと思ってたけど、そこそこの広さしかなかったのね。
ここで、空中回廊にいるぼたんちゃんから指示が飛んでくる。
『はづきちゃん! そろそろ配信の締めだから。屋上に出てカナンさんとファティマさんを目立たせて!』
「ほいほい」
私は屋上に繋がる階段の鍵を「ていっ」とゴボウで叩いて壊し、
※『あっw』『もうダンジョン終わってるんやぞw』『器物~!』
「ゴボウで壊れるということはまだちょっとダンジョンという扱いになるんだそうです」
※『なんだって!?』『あ、配信者の能力が通じてる状態はダンジョン扱いって聞いたことはある』『マジかあ』『じゃあはづきっちがいるところは全部ダンジョンってこと……?』
階段を上がっていくと、ジェミニビル屋上なのだ。
向こうもちょうど、ファティマさんを先頭にビクトリアともみじちゃんが上がってきたところだった。
「おーい!」
手を振ると、向こうも手を振り返す。
Aフォンがこれを撮影して、カナンさんとファティマさんがそれぞれのチャンネルで締めの挨拶をして終わり……。
よし!
「お疲れ様でしたー! あー、お腹へった。帰ってご飯にしようご飯ご飯」
「ハヅキ、まだマイク繋がってるわよ」
「えっ!!」
※『配信外でも全然キャラ変わって無くて草』『ナチュラルにはづきっちそういう感じなのかw』『そしてすかさず突っ込むカナンちゃん』『関係性てえてえ』
こうして、デビュー配信は大成功で終わったのだった。
カナンさんはなんか凄まじい人気で、一晩で登録者数が十万人になったよ……!!
そう思ったら、なんかよく分からないフロアに到着した。
ひたすら広い。
パーティルーム?
だけど、怨霊とかデーモンは基本的にダンジョンの一番上とか一番底にボスがいるんだよね。
デーモンと煙は高いところか超低いところが好きなのだ。
「こーんにーちはー」
※『不意打ちする気が欠片も無くて草なんだ』『入口から正々堂々挨拶しながら襲撃する女きら星はづき』『キャラの濃さでカナンさんを食うなw』
あっ、そうでしたそうでした。私はサポートに徹する……。
階段を上がってきて声を掛けたら、ワーッとデーモンが襲ってきた。
多い多い。
「カナンさんカナンさん」
「ああ! 風よ吹き荒れろ! ブラストウインド!」
猛烈な風がエアコンからバシューっと吹き、さらに下の階の砕けた窓から風が補充される。
デーモンたちは『ウグワーッ!?』と吹き飛ばされてしまったみたいだ。
※もんじゃ『風の精霊魔法だけでこれほどの種類があるんだな……。精霊魔法のレパートリーは凄いぞ』『まだ解明されてないもんな』『カナンさん可愛くてかっこよくて強くて最高だわ』『ガチ恋しそう』
よしよし、普段ならここで私が駆け寄って「あちょっ」と決めるとこだけど、今回はあくまでお手伝いなのでカナンさんに決めてもらう。
「ハヅキ、ゴボウを貸して」
「あ、はい」
「私もゴボウの扱いを学んでいたのだ。うん、いいゴボウだ。まだ植物の精霊がいきいきとしている」
今朝取れたやつだからね。
今夜のおかずになります。
※『ゴボウの新鮮さまで判別できる精霊魔法!』『便利ィ!』
『ウゴゴゴゴゴ!! ジェミニビルダンジョンの我らツインデーモンは、2つのタワーで同時にとどめを刺さねば倒せぬぞ!!』
あ、ボスキャラっぽい石像デーモンが出てきた。
丁寧に弱点解説までしてくれたではないか
私はAフォンで隣と連絡を取った。
「あ、ビクトリア? どう? いけそう?」
『もうすぐ最上階よ! ファティマは凄く頑張ったわ!』
「おおー! あのね、最上階にボスデーモンがいるけど、これが二体同時に倒さないといけないんだって」
『オー! よくある仕掛けね! ファティマ、こっちでもガンガンに攻めるわよ! ゴーゴーゴーゴーゴーゴー!!』
遠くでファティマの『はーい』という声がする。
おお、元気元気。
この間に、カナンさんがシュートアローという魔法でゴボウを飛ばした。
これがボスデーモンにサクッと刺さって、『ウグワーッ! しょ、消滅する~!』とか悲鳴をあげさせている。
「もうちょっと頑張って! ビクトリアー! こっち消えちゃう消えちゃう! 早めにボスやっつけて!」
『オーケーよ! ゴートゥヘール!!』
なんか凄い叫び声が聞こえて、バラララララララっと何かばらまく音がした。
あ、向こうでもウグワーって悲鳴が聞こえる。
『ファティマ、行って行って行って! あ、モミジも来た! これで勝確だから! モミジ、ゴーゴーゴー!』
もみじちゃんの、ほいほーいという声がいて、なんかボヨーンとかバフーンとか形容しがたい音が響き渡った。
惣菜パンが唸りをあげたな。
もみじちゃんが戦場を制圧する能力は凄いからなあ。
私が近接攻撃一点突破、ビクトリアはチェンソーが代名詞みたいな感じだけど基本的に射撃多め、もみじちゃんは多彩な惣菜パンで戦場を支配する。
「モミジは言うなれば、スタイルが一番魔将に近いな……。惣菜パンを使って自分に有利な戦場を作り出す。いや、魔将でもあんなのいない」
※『散々なこと言われてて草』『もみじちゃん、だんだん謎のスペック明らかになっていくな』『何者なんだあのパン屋さん……』
とにかく、もみじちゃんの大活躍で間に合ったらしい。
なんか、塩焼きそばパンの大盛りで場にいるデーモンを全部拘束したとかなんとか。
『リーダー、今ファティマがとどめを刺すわ! そっちも同時にお願い!』
「ほいほい! カナンさん! ゴボウを風でぐりぐりって! ぐりぐりって!」
「分かった! 風の精霊よ!」
風の精霊が渦巻き、ボスデーモンに刺さったゴボウをグリグリ動かした。
『ウグワーッ!! ひ、ひどいーっ!!』
なんか決まらない断末魔を上げながら、ボスデーモンが消滅した。
Aフォンの向こうでも、ピチューンと消滅したらしい気配がする。
「やった?」
※『はづきっち、それフラグw』『あ、いやでも俺二窓してるけど、ちゃんと倒せてる!』『タイミングバッチリだなあ』
ジェミニビルを包み込んでいたダンジョンが消滅、ビルも常識的な広さまで縮んでくる。
物凄く広いロビーだと思ってたけど、そこそこの広さしかなかったのね。
ここで、空中回廊にいるぼたんちゃんから指示が飛んでくる。
『はづきちゃん! そろそろ配信の締めだから。屋上に出てカナンさんとファティマさんを目立たせて!』
「ほいほい」
私は屋上に繋がる階段の鍵を「ていっ」とゴボウで叩いて壊し、
※『あっw』『もうダンジョン終わってるんやぞw』『器物~!』
「ゴボウで壊れるということはまだちょっとダンジョンという扱いになるんだそうです」
※『なんだって!?』『あ、配信者の能力が通じてる状態はダンジョン扱いって聞いたことはある』『マジかあ』『じゃあはづきっちがいるところは全部ダンジョンってこと……?』
階段を上がっていくと、ジェミニビル屋上なのだ。
向こうもちょうど、ファティマさんを先頭にビクトリアともみじちゃんが上がってきたところだった。
「おーい!」
手を振ると、向こうも手を振り返す。
Aフォンがこれを撮影して、カナンさんとファティマさんがそれぞれのチャンネルで締めの挨拶をして終わり……。
よし!
「お疲れ様でしたー! あー、お腹へった。帰ってご飯にしようご飯ご飯」
「ハヅキ、まだマイク繋がってるわよ」
「えっ!!」
※『配信外でも全然キャラ変わって無くて草』『ナチュラルにはづきっちそういう感じなのかw』『そしてすかさず突っ込むカナンちゃん』『関係性てえてえ』
こうして、デビュー配信は大成功で終わったのだった。
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