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年度末私のイベントもりもり編
第402話 四月も近づく配信日和伝説
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イカルガエンタがスファトリーさんのデビューを電撃発表した。
世の中に激震が走る。
『人外系配信者!? いや、異種族の配信者の人は増えてるんだけど』『完全に人の形じゃないじゃん! どうやって動かすんだ……?』『アバターって外側で体の大きさとか決まるんでしょ? 小さいと普段と全然違うんじゃない?』
というリアル側からの意見もあれば……。
『このシルエット、絶対かわいいやつ! 応援する!』『マスコットキャラみたいな配信者ちょうどほしかったー』『イカルガの新しい子、どんな感じなんだろうね!? 絶対推す!』
フィーリングで楽しむ勢からは大変な評判なのだ。
イカルガ広報部から、手応えあり、という話をもらう私達。
「これはいけるよスファトリーさん。やっぱりマスコットで正解だった。外見だけで評判持っていけるもん」
「そうなのかや? わらわにはさっぱり分からないなあ……」
こっちの世界来てそう経ってないもんね。
今はウォンさんの口利きでホテル暮らししてるけど、あの辺りは本当に都心が近いから外に出ると人がわんさか。
スファトリーさんは目立つから、イカルガ行く時はタクシーを使うし、外出の用事がある時は夜にしてるんだとか。
早く、人間の姿に擬態できるタイプのアバターを作らねば。
「や、別にわらわは今の生活で不便はしてない」
「まあまあ、昼間に出歩けるようにしたほうが便利だし」
「ふむ、師匠がそう言うならば」
素直な人だ!
イイコイイコしたくなるものです。
これを見て、何やらはぎゅうちゃんがムムムムと唸っているのだった。
「おかしい……。師匠の直弟子はあたしだったはず……! いつの間にか師匠公認の弟子ができている」
「イノッチは先輩のところへ押しかけた自称弟子なんじゃないかな?」
「そうそう。はづきちゃんが弟子を取るわけ無いじゃない。今回のスファトリーさんが初のお弟子よ。ちょいちょい距離が近いのは気になるけど」
イノシカチョウが賑やかだなあ。
当然、このメンツが顔を合わせているここはイカルガエンタ本社ビル。
まあビルは未だに本社ビルしか無いんだけど。
ビル内にスタジオもあるし、必要な機器が一通り揃ってるからなあ。
兄としては、そのうち郊外に大型スタジオを建てたいみたいだけど。
「金はあるのだが、時間的な余裕がな。それに私的な用事でさらに時間を削られている」
「お式だね」
「そう、それだ。まさか俺が結婚することになるとは……」
四月、桜の中での挙式予定だとか。
受付さんのご家族も、海の向こうからやってくる。
最近はこれくらいの距離の移動なら安全にできるようになってきているから、時期的にもちょうどよかった!
なお、対外的に発表すると大混乱とか炎上を招く可能性があるので、内々で済ませてしまうのだ!
今から宇宙さんが、パパラッチ狩りのために式神を増産している。
私も助力を申し出たら、
「君の式神は今や効果が強すぎるんだ。人間に使うためには相当希釈しないと……」
なんだそうで。
うむむ、難しい。
どんな感じで薄めるかのイメージが湧かないもんね。
そうこうしていたら、スファトリーさんの配信日が間近に迫ってきた。
本日もスタジオでリハーサル。
「よし、バーチャライズ!」
スファトリーさんが宣言すると、Aフォンがぐるぐるーっと巡ってアバターを展開した。
それが彼女を包みこんで変身させる。
スラッとした異世界美女のスファトリーさんが、一瞬でコーヒー色のちんまりしたマスコットに変わった。
大きなトンボの羽が生えていて、自在に飛び回る。
「はっ! はあっ! おりゃ!」
スタジオに表示されたバーチャルな障害物を、次々に飛び越え、あるいは突撃やパンチで破壊する。
お見事お見事。
「わらわは地の属性なのだが、飛ぶのも悪くないな。むしろ楽しい」
ブーンと飛んできて、私の眼の前でホバリングしている。
トンボの羽、性能がいいなあ。
「飛ぶのは楽しいよねー。私もベルっち側に主導権渡すと飛べるからよく分かる! あっちはハエの羽だけど」
こういう羽系は本当に高性能で、自在に急停止したりバックしたりできるもんね。
自然が生み出した構造はすごい。
しばらく、スファトリーさんと空を飛ぶ談義をした。
じゃあ飛んでみようということになり。
「ゆーはぶこんとろーる!」
『あいはぶこんとろーる!』
私がベルっちと入れ替わる。
『ほんじゃあ飛んでみましょうか』
「よーし、負けないぞ師匠」
二人でスタジオの中をぶんぶん飛ぶのだ。
いやあ、狭いから普通に壁に当たるね!
「ウワーッ! はづきさん、壁に激突しないでください!! 壊れるー!!」
スタッフさんから、屋内で飛ぶのを禁止されてしまった。
やはり、スファトリーさんのサイズじゃないと難しいか。
そう言う意味ではマスコット系配信者は、狭いダンジョンでも飛び回れるので活躍の場が広いと言える。
うーん、期待しか無い。
私はこの辺の裏作業とか、あとはコラボとか、企業案件とかで大忙し。
2月、3月とダンジョン配信をほとんどしないで終わったのだった。
なんか、妙に強力なダンジョンの出現も抑えられてるしね。
地の大魔将は逃げたはずだけど、まったく捲土重来(リベンジ)してこない。
何かを考えているのかなあ……。
私のリスナーさんからは、ダンジョン配信を望む声も多く聞こえるようになってきた。
そろそろ、どこかのダンジョンに行こうかなあ。
そう考えながら、運命の日はやってきた。
そう、イカルガからマスコットキャラがデビューするのです!
世の中に激震が走る。
『人外系配信者!? いや、異種族の配信者の人は増えてるんだけど』『完全に人の形じゃないじゃん! どうやって動かすんだ……?』『アバターって外側で体の大きさとか決まるんでしょ? 小さいと普段と全然違うんじゃない?』
というリアル側からの意見もあれば……。
『このシルエット、絶対かわいいやつ! 応援する!』『マスコットキャラみたいな配信者ちょうどほしかったー』『イカルガの新しい子、どんな感じなんだろうね!? 絶対推す!』
フィーリングで楽しむ勢からは大変な評判なのだ。
イカルガ広報部から、手応えあり、という話をもらう私達。
「これはいけるよスファトリーさん。やっぱりマスコットで正解だった。外見だけで評判持っていけるもん」
「そうなのかや? わらわにはさっぱり分からないなあ……」
こっちの世界来てそう経ってないもんね。
今はウォンさんの口利きでホテル暮らししてるけど、あの辺りは本当に都心が近いから外に出ると人がわんさか。
スファトリーさんは目立つから、イカルガ行く時はタクシーを使うし、外出の用事がある時は夜にしてるんだとか。
早く、人間の姿に擬態できるタイプのアバターを作らねば。
「や、別にわらわは今の生活で不便はしてない」
「まあまあ、昼間に出歩けるようにしたほうが便利だし」
「ふむ、師匠がそう言うならば」
素直な人だ!
イイコイイコしたくなるものです。
これを見て、何やらはぎゅうちゃんがムムムムと唸っているのだった。
「おかしい……。師匠の直弟子はあたしだったはず……! いつの間にか師匠公認の弟子ができている」
「イノッチは先輩のところへ押しかけた自称弟子なんじゃないかな?」
「そうそう。はづきちゃんが弟子を取るわけ無いじゃない。今回のスファトリーさんが初のお弟子よ。ちょいちょい距離が近いのは気になるけど」
イノシカチョウが賑やかだなあ。
当然、このメンツが顔を合わせているここはイカルガエンタ本社ビル。
まあビルは未だに本社ビルしか無いんだけど。
ビル内にスタジオもあるし、必要な機器が一通り揃ってるからなあ。
兄としては、そのうち郊外に大型スタジオを建てたいみたいだけど。
「金はあるのだが、時間的な余裕がな。それに私的な用事でさらに時間を削られている」
「お式だね」
「そう、それだ。まさか俺が結婚することになるとは……」
四月、桜の中での挙式予定だとか。
受付さんのご家族も、海の向こうからやってくる。
最近はこれくらいの距離の移動なら安全にできるようになってきているから、時期的にもちょうどよかった!
なお、対外的に発表すると大混乱とか炎上を招く可能性があるので、内々で済ませてしまうのだ!
今から宇宙さんが、パパラッチ狩りのために式神を増産している。
私も助力を申し出たら、
「君の式神は今や効果が強すぎるんだ。人間に使うためには相当希釈しないと……」
なんだそうで。
うむむ、難しい。
どんな感じで薄めるかのイメージが湧かないもんね。
そうこうしていたら、スファトリーさんの配信日が間近に迫ってきた。
本日もスタジオでリハーサル。
「よし、バーチャライズ!」
スファトリーさんが宣言すると、Aフォンがぐるぐるーっと巡ってアバターを展開した。
それが彼女を包みこんで変身させる。
スラッとした異世界美女のスファトリーさんが、一瞬でコーヒー色のちんまりしたマスコットに変わった。
大きなトンボの羽が生えていて、自在に飛び回る。
「はっ! はあっ! おりゃ!」
スタジオに表示されたバーチャルな障害物を、次々に飛び越え、あるいは突撃やパンチで破壊する。
お見事お見事。
「わらわは地の属性なのだが、飛ぶのも悪くないな。むしろ楽しい」
ブーンと飛んできて、私の眼の前でホバリングしている。
トンボの羽、性能がいいなあ。
「飛ぶのは楽しいよねー。私もベルっち側に主導権渡すと飛べるからよく分かる! あっちはハエの羽だけど」
こういう羽系は本当に高性能で、自在に急停止したりバックしたりできるもんね。
自然が生み出した構造はすごい。
しばらく、スファトリーさんと空を飛ぶ談義をした。
じゃあ飛んでみようということになり。
「ゆーはぶこんとろーる!」
『あいはぶこんとろーる!』
私がベルっちと入れ替わる。
『ほんじゃあ飛んでみましょうか』
「よーし、負けないぞ師匠」
二人でスタジオの中をぶんぶん飛ぶのだ。
いやあ、狭いから普通に壁に当たるね!
「ウワーッ! はづきさん、壁に激突しないでください!! 壊れるー!!」
スタッフさんから、屋内で飛ぶのを禁止されてしまった。
やはり、スファトリーさんのサイズじゃないと難しいか。
そう言う意味ではマスコット系配信者は、狭いダンジョンでも飛び回れるので活躍の場が広いと言える。
うーん、期待しか無い。
私はこの辺の裏作業とか、あとはコラボとか、企業案件とかで大忙し。
2月、3月とダンジョン配信をほとんどしないで終わったのだった。
なんか、妙に強力なダンジョンの出現も抑えられてるしね。
地の大魔将は逃げたはずだけど、まったく捲土重来(リベンジ)してこない。
何かを考えているのかなあ……。
私のリスナーさんからは、ダンジョン配信を望む声も多く聞こえるようになってきた。
そろそろ、どこかのダンジョンに行こうかなあ。
そう考えながら、運命の日はやってきた。
そう、イカルガからマスコットキャラがデビューするのです!
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