召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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ワンザブロー帝国編

第19話 チュートリアルとはサクッとな

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 サクッとチュートリアルをやってみることにする。
 帝国の使節団は、チュートリアル世界に入っては来れなかった。
 自動的に動くその世界の一要素として存在しているだけだ。

 これはこれで扱いやすい。

「どうして入ってこれなかったんでしょうね? まあわたし、あの人たちが入ってきても困りますけど! 帝国の人だいっきらいなんですよね」

「あいつらを好きなヤツいないだろ」

「ですよねえ」

 ルミイと深く分かり合ってしまった。
 帝国は、この件が終わったらガツンとかましてやらなければなと思っているところだ。

「じゃあ、自動的に動く帝国使節団を使ってチュートリアルと行こう。スタート!」

 チュートリアルモードの時間を動かす俺だ。
 すると、帝国使節団は魔法をぶっ放し、わあわあ叫びながら突っ込んでいくのだった。

 おお、分かりやすい。
 見ている内に、次々アイナのチャームにやられて寝返り、同士討ちを始める。
 全滅まではおよそ三分か。

 立派立派。
 この間に、他のチャームされた人々をかなりたくさん倒している。

 そして全滅は、彼らの同士討ちだけが原因ではない。
 最終盤にヘカトンケイル二体が動き出したのだ。

 そろそろ寿命になってるっぽい儚い命の彼らが、ギギギギギ、と言う動きとともに地面へ武器を叩きつけた。
 これで使節団壊滅。

「あひー! 死にかけでも怖いですよー!」

「うんうん、直撃したら即死だな。しかも地面が乾燥してるからか、巻き上がった土煙で何も見えない。何も……見え……」

 俺、ピンと来る。
 とりあえず元の世界に戻ると、使節団にダメ元で聞いてみた。

「遠距離攻撃できる武器貸して」

「ええー」

 めちゃくちゃ嫌がるじゃん。

「だってこれ、お前らが持ってても無駄だろ。アイナに勝てないんだから。俺が持てば勝てるんだから俺に貸せよ。ほら、事が終わったらすぐ返すから」

 事が終わったら返す相手が全員死ぬので、返す必要はない。
 うーん、世の中上手くできている。

「くっ……。こ、こいつに我が帝国の魔法兵装を手渡すことになるとは……」

「これなあに?」

「爆裂火球の杖だ。念のために三発だけチャージしてある。これなら早々に使い切って悪さはできまい」

「ケチだなあ」

 だが、十分である。

「マナビさん、わたしも何かします? 魔法使えますよ!」

「そうだった! ルミイも魔法いけるなら、二人で同時にやろうか。俺にはゲイルハンマーもあるし」

 ということで、チュートリアルモードに戻った。
 使節団が全滅するところまでやって、ヘカトンケイルが振り下ろす武器の近くまで進んでおく。

「あ、危ないですよう!!」

「武器が叩きつけられる瞬間にな。衝撃が起こるんだ。これで俺たちがちょっと空に飛べる。それからゲイルハンマーを起動させてだな」

 ぶっつけ本番だったが上手く行った。
 衝撃で浮き上がった俺たちを、ゲイルハンマーの風が高く打ち上げてくれる。

 そして向こうにはアイナの姿。
 あんまり長く見てるとチャームされてしまうので……。

「爆裂火球! どーん!」

 杖を振りかざすと、そこから巨大な炎の球が出現した。
 猛烈な勢いでアイナに向かい、爆発する。

 おお、思ったよりも広範囲で爆発するんだな。

 アイナの周辺にあった、彼女を飾り立てるための像やら壁面やらが崩れていった。

「風よ! 降り立つわたしたちを守って!」

 ルミイの言葉と同時に、足元に猛烈な風が巻起こった。
 これが、俺たちの着地を助けてくれるというわけだ。

 で、地面に降り立つ俺たち。
 そこはもう、瓦礫にアイナが埋もれたところが目前。

「勝ったな。……いや、こういうのはフラグなんだった」

「フラグってなんですか?」

「よくないジンクスみたいなもんだ」

「ほえー。……それ、だめじゃないですかあ」

 本当にダメだった。
 瓦礫を押しのけて、鬼のような形相になったアイナが這い出してくる。
 やばいやばい。

 この距離だとチャームを避けるのが難しい。
 だが、その時である。

 空がキラッと光って、そこから刃が雨のように降り注いだのだ。

 こっ、これはーっ!
 執念深いやつだ。
 もう来たのか!!

 何度かチュートリアルを終えた後、精神的に疲れて戻ってきた。

「あひー、もうだめですー」

「おう、ひとっ風呂浴びたいな」

 いきなりぐったりしている俺たちを見て、使節団が首を傾げた。
 一瞬でいきなり疲れたんだから、理解できまいな。

「でもマナビさん、お風呂ってあの温かいお湯のことを言ってますよね」

「うむ」

 お風呂と同時に呼び起こされる記憶は、ルミイのけしからん肢体のものである。
 あれを見て、彼女を守護らねばならぬと俺は心に決めたのだ。
 俺のモチベーションの源泉である。

「普通の街にはお湯のお風呂はありません」

「なっ……なんだってー!!」

 どうやら、お湯の風呂というものは魔法使いの道楽らしい。
 というのも、大量の水をわざわざ魔力で温めて使い捨てにするからだ。

 普通は水浴び程度なんだと。

「ということで水浴び行ってきます! マナビさんも一緒にします?」

「します」

 ノーウェイトで答えた。
 こう……ルミイにはこの辺りの恥じらいが欠けているような気がする……。
 バーバリアンの習慣的なものだろうか。

 だが、ここで恥ずかしかったりしない? と聞いてこのチャンスをフイにするわけにはいかん。
 俺は鋼の心で、一緒に水浴びをするのだった。

 うわーっ!!
 と、とんでもないお体をされてますねえ!!
 ありがたや、ありがたや……。

「マナビさんどうしたんですか、座り込んじゃって」

「うむ、立ち上がることができなくなっただけです。それはそうと、誰も覗きに来たりしないのな」

「ですねえ。多分、アイナのチャームにやられたら彼女しか見えなくなるんじゃないでしょうか」

「なるほど。みんな目が節穴になるってわけか。お陰でルミイは独り占めだぜ……」

「? わたしがどうかしました?」

「なんでもござらん」

 ということで、本番の前に大いに英気を養った俺なのだった。
 さあ、サクッとアイナ攻略をスタートしよう。
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